多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

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ChapterⅦ:Candle

No114.Carry out execution ♪

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 「はぁ……!はぁ……!」

 爆破後、学校から逃亡に成功した燈花は、路地裏でひと息ついて薊に連絡を入れた。
 今の彼は無力。だが、生命再起会本部に帰れば、大量に技術の結晶といえる武器が保管されている。 

 「にしても……やべぇあいつら……。透念の予測不能の動きに、冬夜の想定外の狙撃。……甘えた行動を見せてくれなければ……俺は今頃……」

 「そうだな。甘えた行動が、俺達にとっては命取り……だからな。」

 「はっ!何故お前……が………。」

 すると、燈花は地面に横たわり、苦しみ始めた。

 「何故……分かった……黒薔薇!」

 彼は息を荒げながら必死にそう言う。対して俺は正面すら見ず口を開く。

 「お前のチームメンバーの言葉を引用させてもらうと、“シミュレーション”だ。過去三度目の戦闘から、勝敗が一生着かないと判断した俺は、“奇襲”でお前を暗殺する事にした。ただ、いきなり奇襲を仕掛けようが、どうせお前は気づく。だから、お前が作戦から撤退して、一息着いたタイミングを狙ったのだ。連絡は要と常に取っている。彼らの想像を絶する活躍のお陰で、お前は遺言を言う機会が与えられた。」

 当初の予定では、リボルバーのスコープ速射で心臓をオーバーキルするつもりだった。万が一にも耐えられる事を防ぐために。
 ただ、彼らがこいつの肉体は異常に耐久性がある事を暴いてくれた。それに加え、武器を無力化するという最高の功績も残してくれた。
 オーバーキル作戦の読みは間違っていなかったが、毒の効く範囲も要が証明してくれた。

 「はぁ?まだ俺は……死なねぇよ!……確かに武器は無い。だが、あと数分もすれば、生命再起会のエリートの誰かがここに……!」

 「来る訳が無いだろう。逆に、お前は重要戦力が死にかけても助けにいったか?捨てただろ。天守閣を。」

 「一般Hadesなんて少し位の高いだけの奴隷だ!」

 この状態でもまだそんな事を言える余裕。流石に尊敬する、逆にな。
 こいつに更に追い打ちを掛けるべく、俺はある物を取り出す。

 「はっ?!それは…!」

 「対物ライフル。お前の罪に比例する最大の罰。お前の身体が遺伝子操作によっていくら最強とは言え、生物がこれを受けて生きられるとは思えない。抵抗も出来ないし、麻痺毒も効くだろ?」

 あの情報を取り入れてから、黄牙が速攻作ったあの銃弾の完全上位互換。偶然にも、俺の手元には構成物質が揃っている。
 俺はその非人道的の塊のような銃口を燈花に突き付ける。

 「正気か?!」
 
 「この一発とお前のしてきた事で、等価交換だ。総合的には俺の方が人間やめてるな。……お前も分かっているだろう。こいつの威力を。返答によっては、そうなるが。考えてみろ?無条件で撃たないって交渉。お前に損は無いはずだ。」

 この言葉は本当だ。こいつが生命再起会の全てを提示してくれるなら、解放する。情報だけ抜いて結局撃つ事だって出来るのに。
 ただ、俺は決して人を殺したい訳じゃない。ただ、手段を選ばないだけだ。目的が全て果たされたら、俺はただの世界一重い罪を犯した大犯罪者になるしかなくなる。

 「答えよう。」

 「葵の意識は、まだ死んでいないのか。」

 「厳重保管済みだ。」

 「必要な理由は。」

 「それは Zeusしか知らねぇ。撃つなよ?」

 「その程度でこいつを使えるかっての。……上位戦力全員。」

 「AsmodeusとZeusがそれに当たる。俺、薊、蝙蝠、天災、蝶帝。予備軍のHadesから蜥蜴、蝋燭だ。」

 まさか、本当に全て話してくれるとは思わなかった。他にも知りたい事は山ほどあるが、これ以上の質問は拷問の域になるので、ここで止める。
 俺は、対物ライフルを仕舞った。

 「約束通り、撃たないでおく。その代わり、もう一つ約束だ。」

 「何だ…。」

 「表面上、俺はお前を暗殺したという事にしたい。だから、もう金輪際姿を現すな。」

 「分かっている。次騒ぎを起こしたら、そいつ、使うとでも言う気だろう?」

 「よく分かってるな。さようなら。ようやくお前との因縁が絶てると思うと、気分がいい。」

 そう言い残し、俺はその場を後にした。







 馬鹿で甘えた奴め。俺がその程度で退く訳が無いだろ?確かに喋った情報は全て本物だ。だが、こんなのハンデに過ぎない。
 遺伝子操作すれば、姿くらい簡単に変えられる。迎えがさえ来れば、俺の勝ちだ。

 「お、来た来た!」

 やっぱりあいつらは裏切らない。黒薔薇は助けなんてこない、捨てられると言ったが、俺と天守閣では天と地の差がある。
 俺には助けが来るのが当然の摂理だ。
 目の前に車が止まり、蝶帝が姿を現す。
 
 「お前かよ…。薊かと思ったわ。そう言えば、あいつまだ免許持っていなかったな!ほら、早く帰るぞ。」

 そう言って、車に乗り込むが、蝶帝は立ち止まっている。

 「あ?どうした?何かあったの……か……っう……頭…が……。」





 燈花の意識が突如消えた。すると、蝶帝は無言で隣の席に座り、銃口を突き付け、ゼロ距離で引き金を引いた。
 刹那、車体もを貫通し、燈花は骨も内蔵も残らず消し飛んだ。

 「ふふっ。許す訳無いのにね。」
 
 そう微かに笑みを浮かべ、対物ライフルを降ろした。

 「黒薔薇は……逃がしちゃったか…。また天災が来るみたいだし、大丈夫かな。」

 そう口に零し、彼女はエンジンの掛からない車を放置し、歩いて千代田区へと戻って行った。
 去り際、彼女はこう口にした。

 「燈花。処刑遂行っと♪」

 
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