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ChapterⅧ:FinalZone
No132.Forbidden act
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谷上先輩と上手く連携し、次々にドールを撃ち倒していった。
自分も彼も、照準を自分から合わせにいっていない。予備動作が見えたら決まった感覚の位置に銃口を向け、偏差撃ちをしている。
確かに完全に一定という訳ではないけど、傾向はほぼ一緒。何機同時に掛かってきても、対処できるレベルだ。
「どうした天災!お前の技術はこの程度か?確かに人間さながらの動きではあるが、単調過ぎないか?」
谷上先輩は奴の方を向き、そう煽った。すると、奴はこちらに銃口を向け、電気をチャージし始めた。
「一方向しか見られないなんて、…駄目だよ?」
「ッチ!」
私は黄牙に注目して周りの警戒が疎かになっていた天災に裏から近づき、ナイフを刺した。
しかし、奴はチャージを止めて、弱いながらも男特有の力を活かして、私を振り払ってきた。
「あっ!しまっ……!」
とはいえ、足場が結構ギリギリの所だったため、私はその階層から落とされてしまった。
「私の技術を舐めるなよ。連中はドールの動作を理解した気でいるが、私の愛玩具はまだ“不完全”だ。」
チャージの光が止まった。すると、相原先輩が奴の居た階層から落下してきた。揉み合いに負けてしまったようだ。
自分はすぐに助走をつけ、落下してくる相原先輩をキャッチしながら、隣の建物に飛び移った。
「怪我はないですか?」
「うん。大丈夫。」
相原先輩を降ろし、すぐにハンティングライフルを取り出して天災を直接狙撃したが、盾のようなものを持ったドールが飛び降りてきながら、弾を防いだ。
そのドールは自分達のいる足場に着地してシールドバッシュを仕掛けてきたが、自分達はそれを回避し、真横のがら空きの所に相原先輩がナイフで殺った。
「……これ刺した感覚が人間だよ。でも、クローンとは違う感じ。」
「……!……まさか…そんなはず………。」
相原先輩の言葉に、思わず動揺した。クローンはまだ人間味のある動きをしていたが、先程から何十と壊したドールは、人間味の欠片もなく、まさに人工物だった。
だから気付かなかったけど、確かに血が鮮明に流れている。自分は早々に先程壊したドールの方を見た。
「……は…オイルと血が混在している…?」
全てかそうではなかったが、確かに人間の死体のように転がるドールもあった。
そこからは身体が一切言う事を聞かず、気付けば地を蹴って天災の鎮座する高さまで跳び上がって、空中狙撃していた。
「防げ、エリートモデル。」
奴がそう言うと、先程のような盾を持ったドールが地面を突き破って出てきた。
そして、その哀しそうな眼に視線が吸い込まれ、空撃ちしてしまった。
刹那、天災の後ろに隠れていた拳銃を持ったドールが姿を現し、自分の足を撃った。
「うっ!」
「冬夜!……ッ!行け月歌!」
「分かってるっての!」
負傷して着地に失敗して体勢を崩した自分に対してトドメを刺そうとしてくるドールを、相原先輩が後ろからナイフで壊した。
そして下から谷上先輩も盾を持ったドールを狙撃した後、こちらに昇ってきた。
「冬夜大丈夫か!」
「平気です。……それより、死体を…。」
「………。」
壊したドールの方を見つめ、谷上先輩は無言で天災の方に接近し、胸ぐらを掴んで言い放った。
「あのドールとやら、全部完全人工物に見せかけて、半分くらいは改造人間だろ?」
彼のその問いかけに対し、天災は否定も弁解もはいとも言わない。ただ、笑っていた。
「そうかそうか……それが答え合わせだ。どうせクローン製作にも携わっているんだろ、天災。……もうコードネームで言う必要もないか。濫土!」
彼のその言葉で笑うのを止め、天災は真顔で口を開いた。
「技術の発達に犠牲は付き物だと教育したはずなのに、お前は“お父様その考えは間違っている”といつも言っていたよな?だから一生出来損ないなんだよ、お前は。」
「上等だ。……あそこで染まるくらいなら!」
そう二人が揉み合っている隙を狙おうと照準を奴に定めたが、またしてもドールが姿を現した。
自分は目を瞑って撃った。一応壊せはしたが、本来なら自殺に近い危険な行為。何せ、撃ち逃したらこっちが死ぬ距離だった。
目を瞑っている間、『It's painful…It 'shurts…』と無限に木霊していた。
「………望まない人生の終わり方を……自分が助長してしまった……?」
無機質な機械に見えて、瞳の奥にある人間味。そして、殺意や憎悪が感じられない。その中にあるのは“哀しみ”だけだった。
暗殺者の一族に生まれ、人を殺す事に迷いはない人格にへと成長させられた。
ただ、心の何処かで何かが引っ掛かっていた。
今まではきっと、殺した相手が死で償うべき大罪人や、殺害を促してきた人、互いに命を差し出して戦う人だったから割り切っていたのかもしれない。
だけど、今は違う。無理矢理動かされ、死を望まない、覚悟がない弱き心の持ち主を殺した。正確には、殺させられた。
「………はは、これじゃただの殺人鬼じゃん…。世間的に見たら最初からか…。」
ショックで仕方が無い。“救えるはずの命を救えなかった”のではなく“、救えるはずの命を自ら奪った”からだ。
そして、こうなるように仕向けたあの男を……“絶対に許してはいけない”。
「おい、天災。」
暗く重いトーンでそう声を発すと、天災はこちらを向き、谷上先輩は抑える力を少し強めた。
「………自分にとって、暗殺者にとって禁忌とも呼べる行為に誘導した、未来ある人間を実験や殺害の道具として改造した君の行い。…………例えどんな方法で殺したって、おあいこなんだよ…。」
「何を言っている死に損な……ッ!」
刹那、自分は一瞬で天災との距離を詰め、銃口を額に突き付けた。
「………君は本当に残虐なマッドサイエンティストだったよ。だから……自分にできる最も残虐な方法で痛感させてあげる。」
自分も彼も、照準を自分から合わせにいっていない。予備動作が見えたら決まった感覚の位置に銃口を向け、偏差撃ちをしている。
確かに完全に一定という訳ではないけど、傾向はほぼ一緒。何機同時に掛かってきても、対処できるレベルだ。
「どうした天災!お前の技術はこの程度か?確かに人間さながらの動きではあるが、単調過ぎないか?」
谷上先輩は奴の方を向き、そう煽った。すると、奴はこちらに銃口を向け、電気をチャージし始めた。
「一方向しか見られないなんて、…駄目だよ?」
「ッチ!」
私は黄牙に注目して周りの警戒が疎かになっていた天災に裏から近づき、ナイフを刺した。
しかし、奴はチャージを止めて、弱いながらも男特有の力を活かして、私を振り払ってきた。
「あっ!しまっ……!」
とはいえ、足場が結構ギリギリの所だったため、私はその階層から落とされてしまった。
「私の技術を舐めるなよ。連中はドールの動作を理解した気でいるが、私の愛玩具はまだ“不完全”だ。」
チャージの光が止まった。すると、相原先輩が奴の居た階層から落下してきた。揉み合いに負けてしまったようだ。
自分はすぐに助走をつけ、落下してくる相原先輩をキャッチしながら、隣の建物に飛び移った。
「怪我はないですか?」
「うん。大丈夫。」
相原先輩を降ろし、すぐにハンティングライフルを取り出して天災を直接狙撃したが、盾のようなものを持ったドールが飛び降りてきながら、弾を防いだ。
そのドールは自分達のいる足場に着地してシールドバッシュを仕掛けてきたが、自分達はそれを回避し、真横のがら空きの所に相原先輩がナイフで殺った。
「……これ刺した感覚が人間だよ。でも、クローンとは違う感じ。」
「……!……まさか…そんなはず………。」
相原先輩の言葉に、思わず動揺した。クローンはまだ人間味のある動きをしていたが、先程から何十と壊したドールは、人間味の欠片もなく、まさに人工物だった。
だから気付かなかったけど、確かに血が鮮明に流れている。自分は早々に先程壊したドールの方を見た。
「……は…オイルと血が混在している…?」
全てかそうではなかったが、確かに人間の死体のように転がるドールもあった。
そこからは身体が一切言う事を聞かず、気付けば地を蹴って天災の鎮座する高さまで跳び上がって、空中狙撃していた。
「防げ、エリートモデル。」
奴がそう言うと、先程のような盾を持ったドールが地面を突き破って出てきた。
そして、その哀しそうな眼に視線が吸い込まれ、空撃ちしてしまった。
刹那、天災の後ろに隠れていた拳銃を持ったドールが姿を現し、自分の足を撃った。
「うっ!」
「冬夜!……ッ!行け月歌!」
「分かってるっての!」
負傷して着地に失敗して体勢を崩した自分に対してトドメを刺そうとしてくるドールを、相原先輩が後ろからナイフで壊した。
そして下から谷上先輩も盾を持ったドールを狙撃した後、こちらに昇ってきた。
「冬夜大丈夫か!」
「平気です。……それより、死体を…。」
「………。」
壊したドールの方を見つめ、谷上先輩は無言で天災の方に接近し、胸ぐらを掴んで言い放った。
「あのドールとやら、全部完全人工物に見せかけて、半分くらいは改造人間だろ?」
彼のその問いかけに対し、天災は否定も弁解もはいとも言わない。ただ、笑っていた。
「そうかそうか……それが答え合わせだ。どうせクローン製作にも携わっているんだろ、天災。……もうコードネームで言う必要もないか。濫土!」
彼のその言葉で笑うのを止め、天災は真顔で口を開いた。
「技術の発達に犠牲は付き物だと教育したはずなのに、お前は“お父様その考えは間違っている”といつも言っていたよな?だから一生出来損ないなんだよ、お前は。」
「上等だ。……あそこで染まるくらいなら!」
そう二人が揉み合っている隙を狙おうと照準を奴に定めたが、またしてもドールが姿を現した。
自分は目を瞑って撃った。一応壊せはしたが、本来なら自殺に近い危険な行為。何せ、撃ち逃したらこっちが死ぬ距離だった。
目を瞑っている間、『It's painful…It 'shurts…』と無限に木霊していた。
「………望まない人生の終わり方を……自分が助長してしまった……?」
無機質な機械に見えて、瞳の奥にある人間味。そして、殺意や憎悪が感じられない。その中にあるのは“哀しみ”だけだった。
暗殺者の一族に生まれ、人を殺す事に迷いはない人格にへと成長させられた。
ただ、心の何処かで何かが引っ掛かっていた。
今まではきっと、殺した相手が死で償うべき大罪人や、殺害を促してきた人、互いに命を差し出して戦う人だったから割り切っていたのかもしれない。
だけど、今は違う。無理矢理動かされ、死を望まない、覚悟がない弱き心の持ち主を殺した。正確には、殺させられた。
「………はは、これじゃただの殺人鬼じゃん…。世間的に見たら最初からか…。」
ショックで仕方が無い。“救えるはずの命を救えなかった”のではなく“、救えるはずの命を自ら奪った”からだ。
そして、こうなるように仕向けたあの男を……“絶対に許してはいけない”。
「おい、天災。」
暗く重いトーンでそう声を発すと、天災はこちらを向き、谷上先輩は抑える力を少し強めた。
「………自分にとって、暗殺者にとって禁忌とも呼べる行為に誘導した、未来ある人間を実験や殺害の道具として改造した君の行い。…………例えどんな方法で殺したって、おあいこなんだよ…。」
「何を言っている死に損な……ッ!」
刹那、自分は一瞬で天災との距離を詰め、銃口を額に突き付けた。
「………君は本当に残虐なマッドサイエンティストだったよ。だから……自分にできる最も残虐な方法で痛感させてあげる。」
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