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ChapterⅧ:FinalZone
No148.Important promise
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生命再起会との戦いから、一週間が経過した。平穏な日常が保たれているようだが、俺達サイレンスや政府はバタついている状況だ。
これは陰の戦い。一般人の知らない裏の世界で、穏便に処理しなければならない問題なのだ。
「おっ来た。歪!」
出窓の所から旋梨にそう呼ばれ、俺は楽器店の中に入って行った。
「凛の事…おめでとう。」
「ありがとう。そっちはどうだ?」
「まだバタついていて会える時間が確保出来てないんだよなぁ。……片付いたらいっぱい構ってやりたいなって。」
現在、旋梨は多くの問題に襲われている。その一つが……
「……サイレンスの今後についてはどうなっている?」
「そこなんだよ。…確かに脅威は排除できた。だが、サイレンスの理念は不滅だ。それでも、暗殺機構としてのスタンスを貫くのはきついように思える。……まぁ、それも含めて莉緒菜や愁と協議の最中だ。」
決戦後日の夕暮れ時、俺はOrder:絆と彩良の死亡を知った。彼らが死ぬなんて夢にも思っていなかった。それでも、いつかはこうなるのが我々の運命だった。
他の仲間達もかなり瀕死だった。何より、我々の為に尽くしてくれた一般人協力者の大量の死体に心を抉られた。
それと同時に、こんなにも多くの人が兄上達を信じてくれていた事に感動した。
「それで…お前住居の方はどうするつもり?ずっと羽崎さんの所に居候する訳じゃないんだろ?」
「それもまたおいおい……って感じだ。まぁ、これまでの報酬金で一軒家一つくらいは建つ。」
今回の任務に関しては、生命再起会の持つ資産をサイレンス、プレデスタンスに山分けするという契約となった。
政府はそれに了承している。彼らもまた、清心の独裁に逆らえなかった身であり、報酬金をいくらかお出ししてくれると仰っている。
近い内に選挙もあるし、日本の社会情勢に関しては問題なく立て直せるだろう。
「そうか。また困ったら連絡寄越せよ?お前と俺は親友だからな。」
「是非そうさせてもらう。」
軽く挨拶を交わし帰宅しようとすると、羽崎が目の前に現れた。
「お久しぶりです。羽崎さん。」
「君達の栄光はしっかりと拝見した。進路の事は気にするな。今度は私が役に立つ番だ。…ありがとう…神話を。」
「……いえ…俺も羽崎さんには世話になりましたから……。」
「大人として当然の事をしたまでだよ。柊の事もあったしな……。」
「……では、俺はこの辺りで失礼します。明日の葬儀に向けて今日は休んでおきたいので……。」
「分かった。ごゆっくり。」
そして、今度は帰路に着き、歩き出した。
この一週間、本当にあっという間だった。夕憧が死んだっていう実感が、未だに湧かなかった。
「夕憧……仇は取ったよ。」
彼女の墓の前でそう口に零して涙を落とす。先日、彼女の葬儀が行われた。
彼女の友人やMythologyの先輩方は来て下さったが、我が凍白一族の両親は、一切顔を見せなかった。
ずっとそうだった。上の兄弟が死んだ時も、両親は何の反応も示さなかった。次男が死んだ時は両親と長男以外は葬儀に参加したが、次第に皆参加しなくなっていった。
冷淡な一族だ。自分と夕憧だけが変わっているみたい。自分達に愛想良くしてくれた次男が最初に死んでしまったのが、とにかく心に響いた。
長男は父の信者であり、彼の指導が次第に始まり、心が汚染されていったのだろう。
本当に悔しい。暗殺者は使い捨て。そんな一族の思想のせいで、まともな家族愛を感じずに成長してしまった。
そして、唯一まともで生き残りだった双子の姉も消えた。
すると、涙が再び込み上げてくる。
「なんで……自分ばかりがこんなにも辛い思いを………。自分が死ぬだけなら……こんな感情抱かずに済むのに……!」
そう嘆くと、突然後から何らかの感触を覚えた。
「ッ!……明璃。」
そこには、明璃の姿があった。彼女は自分の背中に額を合わせていた。
次第に、彼女の涙が伝達してくる感覚を覚えた。
「……泣かないで。」
「だって……夕憧ちゃんが…!」
そう言って涙を更に零す明璃をそっと抱きしめてこう言った。
「さっきの言葉は忘れて。自分が死んだら、君が悲しむって分かっているから。ただ………苦しいんだよ……自分が辛くなるのも…。約束通り……ちゃんと帰ってきたから…。」
すると、涙を拭いて彼女は見上げてきて上目遣いで照れながら言った。
「私を……迎えてくれますか……?」
「……勿論だよ。君を絶対幸せにすると誓う。そして自分自身も必ず幸せになってみせるから……。……気が済むまで泣いていいよ。彼氏に甘えて…?」
そう返事を返すと、彼女は自分をより強く抱きしめて、泣いた。自分もそれに乗じてもっと強く抱き留めた。
夕憧との約束“愛した人、愛された人が幸せになること”。絶対に破ってはいけない。一族と揉め事になったとしても、それよりも大事な事だと思ってる。
これは陰の戦い。一般人の知らない裏の世界で、穏便に処理しなければならない問題なのだ。
「おっ来た。歪!」
出窓の所から旋梨にそう呼ばれ、俺は楽器店の中に入って行った。
「凛の事…おめでとう。」
「ありがとう。そっちはどうだ?」
「まだバタついていて会える時間が確保出来てないんだよなぁ。……片付いたらいっぱい構ってやりたいなって。」
現在、旋梨は多くの問題に襲われている。その一つが……
「……サイレンスの今後についてはどうなっている?」
「そこなんだよ。…確かに脅威は排除できた。だが、サイレンスの理念は不滅だ。それでも、暗殺機構としてのスタンスを貫くのはきついように思える。……まぁ、それも含めて莉緒菜や愁と協議の最中だ。」
決戦後日の夕暮れ時、俺はOrder:絆と彩良の死亡を知った。彼らが死ぬなんて夢にも思っていなかった。それでも、いつかはこうなるのが我々の運命だった。
他の仲間達もかなり瀕死だった。何より、我々の為に尽くしてくれた一般人協力者の大量の死体に心を抉られた。
それと同時に、こんなにも多くの人が兄上達を信じてくれていた事に感動した。
「それで…お前住居の方はどうするつもり?ずっと羽崎さんの所に居候する訳じゃないんだろ?」
「それもまたおいおい……って感じだ。まぁ、これまでの報酬金で一軒家一つくらいは建つ。」
今回の任務に関しては、生命再起会の持つ資産をサイレンス、プレデスタンスに山分けするという契約となった。
政府はそれに了承している。彼らもまた、清心の独裁に逆らえなかった身であり、報酬金をいくらかお出ししてくれると仰っている。
近い内に選挙もあるし、日本の社会情勢に関しては問題なく立て直せるだろう。
「そうか。また困ったら連絡寄越せよ?お前と俺は親友だからな。」
「是非そうさせてもらう。」
軽く挨拶を交わし帰宅しようとすると、羽崎が目の前に現れた。
「お久しぶりです。羽崎さん。」
「君達の栄光はしっかりと拝見した。進路の事は気にするな。今度は私が役に立つ番だ。…ありがとう…神話を。」
「……いえ…俺も羽崎さんには世話になりましたから……。」
「大人として当然の事をしたまでだよ。柊の事もあったしな……。」
「……では、俺はこの辺りで失礼します。明日の葬儀に向けて今日は休んでおきたいので……。」
「分かった。ごゆっくり。」
そして、今度は帰路に着き、歩き出した。
この一週間、本当にあっという間だった。夕憧が死んだっていう実感が、未だに湧かなかった。
「夕憧……仇は取ったよ。」
彼女の墓の前でそう口に零して涙を落とす。先日、彼女の葬儀が行われた。
彼女の友人やMythologyの先輩方は来て下さったが、我が凍白一族の両親は、一切顔を見せなかった。
ずっとそうだった。上の兄弟が死んだ時も、両親は何の反応も示さなかった。次男が死んだ時は両親と長男以外は葬儀に参加したが、次第に皆参加しなくなっていった。
冷淡な一族だ。自分と夕憧だけが変わっているみたい。自分達に愛想良くしてくれた次男が最初に死んでしまったのが、とにかく心に響いた。
長男は父の信者であり、彼の指導が次第に始まり、心が汚染されていったのだろう。
本当に悔しい。暗殺者は使い捨て。そんな一族の思想のせいで、まともな家族愛を感じずに成長してしまった。
そして、唯一まともで生き残りだった双子の姉も消えた。
すると、涙が再び込み上げてくる。
「なんで……自分ばかりがこんなにも辛い思いを………。自分が死ぬだけなら……こんな感情抱かずに済むのに……!」
そう嘆くと、突然後から何らかの感触を覚えた。
「ッ!……明璃。」
そこには、明璃の姿があった。彼女は自分の背中に額を合わせていた。
次第に、彼女の涙が伝達してくる感覚を覚えた。
「……泣かないで。」
「だって……夕憧ちゃんが…!」
そう言って涙を更に零す明璃をそっと抱きしめてこう言った。
「さっきの言葉は忘れて。自分が死んだら、君が悲しむって分かっているから。ただ………苦しいんだよ……自分が辛くなるのも…。約束通り……ちゃんと帰ってきたから…。」
すると、涙を拭いて彼女は見上げてきて上目遣いで照れながら言った。
「私を……迎えてくれますか……?」
「……勿論だよ。君を絶対幸せにすると誓う。そして自分自身も必ず幸せになってみせるから……。……気が済むまで泣いていいよ。彼氏に甘えて…?」
そう返事を返すと、彼女は自分をより強く抱きしめて、泣いた。自分もそれに乗じてもっと強く抱き留めた。
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