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1.物語が始まります
しおりを挟む「「7歳のお誕生日おめでとう、鈴」ちゃん」
「お母さん、お姉ちゃん、ありがとう」
そう言って鈴はそっとロウソクの火を吹き消した。
そして、7歳の誕生日祝ったその日に、俺は異世界転移と言うのものを経験した。
ーーー
「17歳の誕生日おめでとう、ベルちゃん」
「おめでとう、ベル」
「おめでとう、ベル兄」
「おたんじょうびおめでとう~ベルおにい~」
「はぁ、ありがとう。それはそれとしてもう17歳なんだから誕生日を祝わなくていいって言ってるじゃないか。特にカラミタ母さん」
テーブルに頬杖をつきながら怠そうに俺は答える。
俺が異世界転移を経験してから10年の月日をこの世界イデアで過ごしてきた。
今はカラミタ母さんの屋敷のリビングで、俺の17歳の誕生日が祝われている。
そして、俺の誕生日を祝ってくれているのは、4人。
上座から、俺、カラミタ母さん、アラン兄さん、それから妹のクリーナ、ラリアの順に座っている。
いつもは机の一番上座はカラミタ母さんが座っているけど、今日は俺が主役の誕生日だからとカラミタ母さんが俺を無理矢理座らせられた。
「それにしても、ルシアもグラドもレヴィアも、今日はベルちゃんの誕生日だから帰ってきてねって言っておいたのに、これはお仕置きが必要ね」
「カラミタ母さん」
声を掛けながら、カラミタ母さんの肩をつつく。
「何? ベルちゃん」
「俺が別にいいって言ったんだよ。17歳にもなって家族総出で祝われるとか、疲れるだけだからね」
一旦、話を切りアラン兄さんを見る。
「それよりも俺はアラン兄さんがこの誕生日会に来ている事の方が不思議だよ。アラン兄さんにも伝えたと思ったんだけど?」
そう、俺は他の3人の兄姉と同じ様に、アラン兄さんにも俺の誕生日には別に帰って来なくても良いと伝えていた筈だ。
仕事の邪魔したら悪いしね。
その事を聞くと、アラン兄さんは微笑みながら言う。
「これでも長男だからね。それにベル、誕生日を祝われて本当にツラくなるのは、1000を超えてからだと僕は思うよ」
うっ、実年齢が6436歳の兄さんが言うと、凄く実感がこもっているように聞こえる。
今にして思えば、数年前まではアラン兄さんの誕生日を俺達が喜んで祝っていた時の兄さんの顔はいつも苦笑いだったような気がするよ。
「なんかごめん、アラン兄さん」
「あはは、大丈夫大丈夫、ベルも983年後には経験する事だからね」
「あはは」笑えないよ
「ん~ベルちゃんが怠惰なのを忘れていたわ。しょうがないから、今日は5人だけで誕生日会をしましょうか」
カラミタ母さんがそう言うと同時にどこかからお腹が鳴る音が聞こえた。
音がした方を見ると、クリーナが顔を赤くしたまま顔を下に向けていた。
さっきから会話に入ってこないと思っていたら、お腹が減っていたのか。
「おなかすいた~」
静まり返ったこの空気をどうしようかと思っていると、ラリアもお腹が空いていると訴えてきた。
よし、ナイスだラリア
「リアもこう言っている事だし、食べようか」
「そうね」「そうだね」
みんなでクリーナのお腹が鳴った事を有耶無耶にし、誕生日会の為に作った料理を食べ始め。
こうして例年通り騒がしい俺の誕生日会が始まった。
ーーー
そして、やっと終わった。
誕生日会は結構疲れたがいつも通り恙無く終わり、後片付けをしてから俺は屋敷を出た。
今更だが、簡単に俺の状況を説明しておこう。
最初は俺が10年前に異世界転移してしまった事だ。
当時6歳、いや誕生日はやったから7歳か。
当時7歳の俺は、いきなり自室から見知らぬ草原に来てしまった訳だが、この様な状況は実の姉 天月 琴音の影響で知っており直ぐに異世界転移だと察する事が出来た。
のだが、現実は物語の様に甘くなく。異世界にステータスなんて便利な物は無かった。
そして俺にその場で使えるようなご都合主義の特殊能力も無く、あるのは地平線まで続く草原と無力な子供が1人。
7歳の子供がだだっ広い草原に1人、子供の俺でも分かった。これは死ぬなと。
そんな絶望感に襲われている時に出逢ったのが、カラミタ母さんだったと言う訳だ。
まあ、そこからまた言葉が通じないと言う事を知って絶望と言うか、幼かった俺はそこで生きる事を諦めてしまった。
それから、絶望に打ち拉がれ動かなくなった俺をカラミタ母さんは屋敷に連れ帰り、言葉も通じない俺を育ててくれる事となる。
そして、10年の月日が経ち17歳の誕生日を祝われたのが今の状況という訳だ。
ついでにこの世界の言語を憶える前にカラミタ母さんにベルと言う名前を付けられてしまい今ではベルが俺の名前という事になっている。
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