怠惰の魔王

sasina

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2.ボランティアしてます

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 これから向かうのは俺の自宅兼仕事場だ。

 今居る屋敷はカラミタ母さんの屋敷で言わば実家みたいなものかな。

 俺はこの世界イデアで学校に通っていない、だからと言って家でニートしている訳でもない。

 家族になったとは言え、今の俺は側から見れば唯の居候と言えなくもないからな。いや数年前までは実際に居候だと強く思っていた。
 そんな俺が一方的に世話になり続けるのを苦痛に思い、俺もカラミタ母さんがやっている仕事を手伝う事にした訳だ。

 まあ、内容は仕事と言うよりは無償のボランティアと言った方が正しいのかもしれない。

「さて、俺もボランティアをしに行くか」

転移テレポート



ーーー



「よっと」

 転移魔法を使って、俺の担当している領域に到着した。

 わざわざ外に出てから転移魔法を使ったのは、カラミタ母さんの屋敷内では強力な魔力結界が施されていて生半可な魔力量では魔法を使う事が出来ないからだ。

 まあ、それでもやろうと思えば屋敷の中からでも転移は出来るけど、魔力消費が増大して怠くなるのでわざわざ一旦外に出てからここに【転移テレポート】した訳だ。

 そう言えば、今更だがこの世界イデアにはステータスこそ無いが俗に言う剣と魔法の世界で、地球とは違い数こそが力では無く、圧倒的な個こそが戦いの命運を分ける様な世界だ。

 まあ、それでも地球と似た様なものもある。
 イデアでは魔法兵器と呼ばれ、英雄の力に匹敵する破壊力を持っている兵器がある。
 地球の様な数はあまり無いが威力だけなら真似出来ない核以上の物もあるらしい。俺は見た事ないけど。

 それでも、7歳児がテレビニュースなどで見聞きした記憶をネットで検索するかの様に魔力で脳にアクセスして引き出した情報を元に考えているだけなので、実はそこまで正確な事は言えないんだけどね。

 話はこのくらいにして仕事を始めようか。

 と言っても、俺の仕事は消防士の様に何かが起こるまでは待機しているしかする事無いんだけど。
 訓練もする必要も俺にはないしね

 そんな訳で、今日も休憩所と言う名の俺の自宅(怠惰の館)の書斎で本を読んで暇な時間を過ごす。



ーーー



 暫くの間、書斎で寛ぎながら本を読んでいると扉がノックされた。

「どうぞ」

「失礼します、ベル様」

 そう言って扉から入ってきたのは、執事姿を着た白く長い髪を後ろで一房にまとめている女性だった。

 こういうのを男装の麗人って言うんだっけ?
 あ、一応言っておくと、この格好は俺の趣味じゃなくて本人の意思だからね。

「シア、仕事か?」

「いえ、一応来ているか確認しに来ただけです、ベル様は遅れて来る事が結構ありますからね」

 彼女はトリシアと言う名前で、五年前に魔力溜まりから生まれた魔族だ。

 その時、森に一人で居たトリシアを見つけた俺は10年前の異世界転移したばかりの頃の自分と重なって見えたので拾って帰り養っていたら、5年で逆に俺が養われそうなぐらいに立派に成長して今は俺の部下って事になっている。

「今日は俺の誕生日で早起きをさせられたからね、カラミタ母さんに」

 なんで祝われている筈の俺が、怠いのに無理矢理起こされなければいかないんだろうか?
 まあ、カラミタ母さんだししょうがないか。

「そう言えばそうでしたね、お誕生日おめでとうございます」

「はいはい、ありがとう、シア」

 トリシアは相変わらず無表情だな。
 折角の美人なのに勿体無い、そんな事では彼氏の1人も作れないぞ。まあ、まだ5歳児なんだけどね。
 彼氏はまだ早いか。主人である俺もまだなのにな。

「それでは、失礼します」

 トリシアはそう言って書斎から出ていった。

ーーー

 さて、トリシアも出ていった事だし、魔族について説明しておこうか

 魔族には、3種類ある。

 1つ目は魔物が長い年月をかけ、知識と理性を手に入れた魔族。

 2つ目は魔力溜まりと呼ばれている文字通り魔力が多く溜まっている場所から自然発生する魔族。
 まあ、この自然発生で魔族が生まれる確率はかなり低く、魔力溜まりから生まれるその殆どが魔物だ。

 トリシアもこの自然発生の魔族だね。

 そして、3つ目は人から魔族になる例だ。
 人種でも、ごく稀に生まれながら莫大な魔力を持って生まれてくる者がいる。基本的にそう言った子は10歳になるまでにその莫大な魔力に耐えきれなくなり死ぬ。
 まあ、偶に魔力に適応して死なない奴も居るらしいけど普通はほぼ助からない。

 そして魔力に適応すると言う奇跡以外に、その死の運命を回避する方法の一つがの眷属となりその莫大な魔力を変質させ安定させる事だ。

 実は俺もその口で、現在は魔族の上位存在である魔人になっている。

 10年前の異世界転移でカラミタ母さんに出逢ったのは偶然ではなかったらしい。
 自分では分からなかったが、あの時俺は莫大な魔力を放っており、ついでにその所為で死にそうだった処をカラミタ母さんの眷属になる事で助けられたらしい。

 まあ、魔人になったとしても見た目が変わる訳では無い。魔力の性質が変わるのと、少し身体が丈夫になるだけだ。
 それと性格も少し変わるかもしれない。

 俺は人間を人族をやめたかもしれないけど、後悔はしていない。どの道、異世界人の俺がイデアの人族と同じとはとても思えなかったしね。

 俺は魔人になった時の事を思い出しながらも、読書を続けて仕事が来るまでゆっくりと寛いでいる事した。
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