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8.鉄の塊が落ちてきます
しおりを挟む家族会議も終わったので、それぞれの領域に戻る為に屋敷を兄さん達と一緒に出ると。
空から風を切る音と共に鳥の様な形をした金属の塊が落下していた。
あれは飛行機!なんでそんな物がこのイデアに。
いや、それよりもこのままの軌道で落ちれば屋敷に激突してしまう。
「鉄の塊をぶつける攻撃かしら?」
【風の砲弾】
と、飛行機の事を考えていたら、隣に居たルシア姉さんがそう疑問を呟いて突然得意の風魔法を放つ。
ルシア姉さんの前方に魔法陣が現れ、そこから竜の鱗すら簡単に砕いてしまう風の塊が飛び出していった。
ヤバイ、ルシア姉さんはあれが乗り物だと知らない。
【転移】!
【転移】でルシア姉さんの魔法と飛行機の間に移動してから。
【自動防御】
で、姉さんの攻撃を防ぐ。
「がはっ!」
後ろから迫っていた飛行機を背中から受けて一緒に落下していく。
今の状態は、かなりカッコ悪いが計算通りだ。仕上げに機体に触れ。
【反重力】
魔法陣が現れて飛行機を通過してと魔法が掛かると、少しずつ落下速度を軽減していき、当初の落下予想の屋敷を大きく超えて森に最小限の衝撃で着地させた。
「ふぅ~何とか上手くいったか」
さて、中の安否確認をしないと。
飛行機の入り口まで行き、扉を捲る様に強引に引き剥がす。
飛行機の中に入ると、騒がしかった。
「助かった」「良かった」「生きている」などの喜びの声から、「ここはどこだ?」「家に帰れるの?」といった不安の声も聞こえてくる。
まあ、一番はいきなり現れた俺に対する、「誰だ?」「子供」「どうやって入ってきた」「外から来たの?」と言う困惑の声かな。
さて、予想通りの事になってしまったか。
聞こえてくる言葉の殆どが日本語である事で分かってしまった。
イデアと繋がってしまった世界は地球だ。
10年振りに聞いた日本語なのにちゃんと覚えていて、しかも懐かしさがあまり無かった。
魔人になってしまった俺にとって10年と言う月日は短いのかもしれない。数千年の時を生きる魔人の精神構造では短過ぎる地球との再会って事なのかもな。
まあいい、こちらに近づいているルシア姉さんが来る前に、この騒がしい乗客をどうにかしないとルシア姉さんが殺してしまうかもしれない。
ルシア姉さんは傲慢の魔王なので家族意外に指図されたりするのが嫌いだ。そして地球には力的な差があまり無い世界なので声のデカい奴がルシア姉さんに勝手な文句を言ってしまったら、それが勘違いだったとしてもルシア姉さんが止まるかどうか。
それに大罪の特性として姉さんの方が攻撃が速い。さっきの飛行機への攻撃を止められたのも距離があったから転移で割り込めただけで、目の前でルシア姉さんの攻撃を止めるのは正直難しい。
それに力のある者はカラミタ母さんが殺す事を禁じているから大丈夫だが、今ここに居る人達は唯の一般人だからな。
【安楽領域】
俺の怠惰の魔法が飛行機を球状に広がり包み込む。
効果は魔法の領域内の空間を精神の安らぎを感じさせる空間にすると共に快適な空間を作り出す事が出来る魔法だ。
この魔法は、薬と同じで用法用量を守って使わないと魔力抵抗の低い者を廃人にする事も出来る。
まあ、この魔法の本当の使い方はこんな事では無いけど、今はそれが丁度良い。
威力は最小限にして乗客の眠りを促し、全員を眠らせ終わると同時にルシア姉さんが機内に入ってきた。
「人が入っていたのね。ベルは最初から知っていたの?」
「うん、俺が居た世界の乗り物なんだよ。この鉄の鳥は」
「と言う事は、繋がった世界はベルが生まれた世界って事なのね」
ルシア姉さんは、俺の生まれた世界が今回の繋がった世界だと知っても特に驚いた様子は無く。面白そうとでも言いたげに軽く口元を緩めるだけだった。
「ルシア姉さん、他のみんなは?」
「全員、自分の領域に戻ったわよ。私は魔法をぶつけてしまったから一応残ったの。あと何で怠惰なベルが転移してまで魔法の前に出たのかも気になってね」
「はぁ、本当にね。怠惰の魔王である俺が他人を助ける為に行動か。今更だけど、いつもなら落下軌道をズラすだけだったのに」
地球人だからか? でも同じ地球生まれって事しか接点はないんだけど。
何でだろう? もしかしたら地球の事で真っ先に思い付く家族の所為かな。
姉さんの持っていた本かDVDで、人が人を助けるのに理由は要らないって言っていた物があった。
俺は唯、今もこの空の向こうに居るだろう家族に顔向けの出来ない事がしたくなかったのかもしれない。
目の前で死にそうな人がいて助けられる力があるのなら、普通の人なら助けると言う地球での当たり前を守りたかったのかもしれないな。
ちゃんと魔人になったつもりでも、いざ目の前に人間だった頃の居場所が見えたら、もしかしたらと言う思いが浮かんでしまうのか。
後悔は無いが、正常でも無い。唯少しネガティブになっているだけだ。
時が経てば、魔人としての精神が勝手に立ち直ってくれる。
「ベルのさっきの行動は、咄嗟に手が出てしまったって事なのね」
「そんな感じかな?それとルシア姉さんお願いがあるんだけど」
「何?」
「向こうの世界には手を出さない様、家族全員に伝えてくれないかな?」
例え怠惰の魔王だとしても、家族だけは守らないとね。
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