怠惰の魔王

sasina

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17.コスプレ少女に出会います

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 空から降ってきたこのコスプレ少女がランク9の魔力の持ち主みたいだな。

 まあ、地球側から見たらコスプレに見えるけど、イデアの方では珍しくも無い最上位冒険者装備だ。

 えっーと、この装備はなんて言うんだったかな? 琴音姉さんが持っている本でも結構出てくる事があった筈なんだけど。

 そうそう、確かドレスアーマーって言っていたな。全体的に白い色合いのドレスアーマーを着ていて腰には長剣が挿してあった。

「やっと帰って来れた!」

 そう言って嬉しそうに飛び跳ねながら、その少女は公園から色々な物を懐かしむ様に見渡していた。

「子供がいる! ってここ公園だから当たり前だよね」

 暫くすると、やっと俺が目に止まった様だった。

 まさか気付かれていなかったとは、逆に驚いたよ。

 見た目年齢は14、5歳って所に見える。まあイデアでは見た目なんて当てにならないけどね。

 少女は俺に近づいてくると、普通に話しかけてきた。

「こんにちは~」

「こんにちは」

「おお、日本語だ!やっぱり日本なんだね!」

 確かに日本語だな。何故イデアから来た奴が日本語を話せるんだ? まるで俺みたいに。

 少女は途中まで喜んでいたが、何か見覚えでもあるのか俺の顔をガン見したかと思えば腰の長剣を抜いた。

 抜いた長剣は構えてこそいないが、いつでも斬りかかれる様に魔力で身体強化をしている。

 これは俺の正体に勘付いているのか?

 こんな少女と、出会った記憶が無いんですけど?

「あの~」

「ん?」

「魔王だよね?」

「厨二病?」

 なんでバレているかは分からないが、とりあえず首を傾げて誤魔化そう。

「厨二病なんて久し振りに聞いたな~、イデアでも日本人は居たけど厨二病何て言葉は日本で無いと聞けないもんね」

「人違い」

「違うの? う~ん、言われてみれば確かに顔は似ているけど年が違い過ぎるか。それに感じる魔力もランク3が良いとこみたいだし人違いだったのかな~?」

 やはり何処かであった事があるのか? それに剣を抜くって事は敵対関係って事だよな。

 全然思い出せんな。

 それから、俺の魔力がランク3程度に感じるのはわざわざ魔力放出を抑える[魔偽装のアンクレット]を足首に付けているからだ。何とか誤魔化せているみたいだね。

「それに日本語も使えるみたいだしね」

 少女はそう言うと納得したのか長剣を鞘に仕舞って、俺への警戒を解いたみたいだった。

「ごめんね。そうだボク、今日が何年の何日かわかる?」

「うん、2XXX年4月8日」

「2XXX年か、やっぱり2年も経っているんだ。イデアに召喚されてから」

 イデアに召喚されてからだと?

 じゃあやっぱり、この少女じゃなく少女達は日本から異世界召喚された者達って事か。

 この流れからいくと、イデアの何処の国かは分からないが、日本人を勇者として召喚して魔王にでも挑ませたのか?

 俺に会った事があるって事はそう言う事だよね。他の兄弟やカラミタ母さんからは、人間が攻め込んできたなんて話は聞いた事がないんだけどさ。

 でも、この少女は俺に会った事がある、又は見た事があるのは確実だ。

 まあ、それはイデアに戻った時にでもトリシアに聞けば良いか。

 それよりも問題はイデア側が召喚と言う名の拉致誘拐をしてたって事の方だな。

 これは繋がってしまった地球イデア間で揉める事になるだろうな。

 本当、何処の国かは分からないがやってくれるよ。

 もう殆ど決めていたけど、こんな事実が発覚したのであれば俺は地球に残る事にしないとな。俺が放っておいてもウチのアマルティア家の家族は大丈夫だろうから、俺は地球で天月家の家族を守る事にした。
 たった100年程度の短い間だしね。

 さて、イデアから地球に来た奴らの確認も出来た事だし俺も帰るとするかな。

「待って」

 公園を出て家に帰ろうと歩き出したら、呼び止められる。

 が、わざわざこの少女に付き合う理由もないので、聞こえなかったフリをしてそのまま進む。

「待ってってば!」

 聞こえなかったフリをしたのに、察しの悪い彼女は俺に追い付いて肩を掴み、もう一度呼び止めた。

 さっきの距離で呼び止める声が聞こえない筈が無いだろ。普通の人が君にみたいな厨二コスプレイヤーに関わりたくないから、シカトしているって気付いてよ。

 まあ、厨二病でもコスプレでも無い事は、俺もよく知っているんだけど、一応俺を知っている感じの彼女の前では普通の人として振る舞わないとね。

 7歳児ってどんな感じだったか分からないし、記憶を元に演技するのも難しそうなので、7歳児っぽくはないけどさ。

 流石に肩を掴まれたら気付かないフリも出来ないので振り返って彼女の顔を見る。

「何?」

「家は何処ですか?」

「知らない」

 俺が君の家を知っている訳が無いでしょ。

「あ、違います。あなたの家は何処ですか?って意味です」

 そう言う事ね、まだ完全には疑いが晴れてないって事ね。

「月城市、由里XXX-X」

「そこが貴方の自宅ですか」

 一応、頷いておく。彼女に教えた住所はここの近くにある交番の住所だ。

 家まで押しかけられても困るから、これで良いだろう。交番に行けば銃刀法違反で捕まるかもしれないが頑張れ。

 さて、呼び止められた理由も解決したし、さっさと家に帰るとしますかね。



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