怠惰の魔王

sasina

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33.魔王は考えます

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 コアを一つ削った状態で素通りさせるのか?

 エルダークラスのドラゴンともなれば、コアが複数個あるから、一つぐらい無くなったとしても大丈夫だけど。

 ドラゴンの必殺のブレスはコアを複数共鳴させる事で威力を増幅させているが、一つでもコアが欠けると共鳴ブレスは使えない。

 コアが欠けるとブレスが制御出来なり通常のブレスしか使えなくなるみたいだ。
 それでも無理に共鳴ブレスを使おうとすれば他のコアにも負担が掛かって砕けてしまい自滅する事になる。

 まあ、エルダークラスのドラゴンは回復能力も凄いからなコア一つぐらい数日もあれば再生するんだから、そんな事で自滅する奴は殆ど見た事が無いけどね。

 いや、今はそんな事よりも
「エルダークラスのドラゴンを人類領地に行かせるの?」

「はい、カラミタ様が『油断禁物!外の事も大事だけど内の事にも気を配らないとね!』と」

「いや、棒読みするんだったら、わざわざ真似しなくてもいいよ」

 何故が頑張ってカラミタ母さんの真似をトリシアに俺は苦笑いする。
 
 と言うか、無表情だから結構怖いんですけど、トリシアに悪いから口には出さないけどね。

 カラミタ母さんが言っている外は繋がった地球で内は人類領地があるイデア全体の事だろうな。
 繋がった地球の事も気になっているかもしれないが、それで未開領域から魔物が来なくなる訳じゃないから油断していたら滅んじゃうよ?と言う警告か何かかな?多分。

「すみません。それでどうしますか?」

「どうするって、まあ、やっても良いけど帝国が滅んでも知らないよ」

 そう言いながら俺は椅子に座って机に頬杖をつきながらあまり乗り気では無いといった雰囲気で一応念押ししておく。

「もし、帝国が滅んだとしても手を出さなくていいそうです。『まあ、勇者が居るんだから大丈夫でしょ!』ともカラミタ様は仰っていました」

 いや、今ランク9の勇者が地球に里帰りして帝国に居ないんですけど。

 あれでもランクEX、ランク9が1人不在なだけでも致命傷だろうに。
 
 陽地の話では帝国に召喚されたランク9の勇者は陽地1人らしい。

 帝国の騎士にもランク9は2、3人居るとは思うが、エルダーグランドドラゴン相手にするならランク9が10人は欲しい、コアが一つ削ってあっても最低7人は居ないと厳しいな。
 
 まあ、ランク7や8も居るんだから絶対とは言わないが今エルダーグランドドラゴンが帝都に侵攻すれば9割方滅ぶだろう。

 冒険者って言う不確定要素もあるから一応1割残しておいた。

 そう言えば、帝国に逃げてきた勇者も居たって陽地が言っていたな、その勇者のランクによってはまた変わってくるかもしれないけど。

 まあ、トリシアの話ではランク9の冒険者は結構少ないって聞いた事があるから、やっぱり滅ぶか。

 

 ん?俺って何でこんなにも色々と考えているんだろう?

 いつもなら国が滅ぶかもしれないと思っていてもそれは他人事だ、カラミタ母さんの頼みだし言われた通り行動していただろう。

 今回も勿論カラミタ母さんの頼みは断らないが、こんなにも悩む?いや考えたりはしない筈なのに?

 怠惰の魔王である俺は魔力の性質上、仕事は最低限、面倒な仕事はさっさと片付けるのが怠惰な俺の性質なんだけどな~。

 やっぱ、陽地が原因か。

 いや、正確には陽地が琴音姉さんの友達になったからだな。

 曲がりなりにも2年間暮らした国だ。
 陽地にはそれなりに親しい人や世話になった人が居るだろう。
 その救えていたかもしれない人達(救えません)が、里帰りしていた間にいつの間にか全員死んでいたら陽地は悲しみ、そして悔しがるだろう。

 何故、私はその時その場に居なかったんだ!みたいな感じでさ。

 それでもしかしたら、この前柚乃母さんが何かあったら話だけは聞いてあげる事も出来るみたいな事を言っていたからな。
 陽地は柚乃母さんに懺悔でも聞いてもらおうとするかもしれない。

 琴音姉さんも柚乃母さんも普通の日本人だ。
 陽地の懺悔を聞けば、陽地を慰めそして亡くなった人々思い少なからず心を痛める事だろう。

 その直ぐ傍で事の原因である俺はその時どんな顔をしているんだろう?どんな事を思うんだろう?
 
 もし、琴音姉さんが陽地を想いエルダーグランドドラゴンに、そしてその向こう側に居る魔王(俺)に敵意を向けてきたら……



 俺は耐えられるだろうか?
 

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