怠惰の魔王

sasina

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32.屋敷に戻ってきます

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 【転移】で移動した直後、意識が遠くなった。



ーーー



 体全体に圧迫感を感じて目が覚めた。

 おはようございます。

 そう言えば、イデアに戻ってきたんだから体の大きさが17歳の青年状態に戻るのは当然か。

 今は天月家にあった当時7歳だった頃の服を着ていたから今イデアに戻ってきた影響で服がパッツンパッツンになってキツくて結構苦しい。

 あと世界間を移動した際に強制的に気絶状態になる事もすっかり忘れていたよ。
 お陰で夜に俺が帰ってくる事を予想していたらしいトリシアが眠気覚ましに用意してくれていただろう机のコーヒーは、気絶して倒れた時にでもぶつかったのか床にポットごとぶちまけられている。

 幸い熱々のコーヒーは自動発動した【自動防御】のお陰で綺麗に俺を避けて零れているので被害は床のカーペットだけに収まっていた。

復元リストア】 

 そしてカーペットの被害も【復元】の魔法を掛ける事によって現象を巻き戻しカーペットとコーヒーを分離させた。
 これでカーペットにシミが残ったりはしないだろう。
 
 分離させたコーヒーは時間を巻き戻した訳だから綺麗で飲む事も出来るが、気分的に一回カーペットに落ちた物を飲む気は起きなかったので窓から外に捨てた。
 
 直ぐ傍は木々があるしコーヒーも勝手に木が肥料にする事だろう。


 それよりも今はこの息苦しい小さい服を如何にかしたい。
 
 とは言ってもここまでサイズの違う服となると脱ぐ事もままならないな。
 
 面倒くさいからさっさとに破ってしまおうか。別に高い服って訳じゃないし1セットぐらいなくなっても無くなっても問題ないだろう。

 そう考えた俺はさっさと着ている服を破り捨てて【収納】からイデアでの服を取り出し着替えた。

「さて、エルダーグランドドラゴンだっけ?今晩中に倒しに行かないといけないんだよな、めんどいけど」

「お願いします」

 後ろから聞こえてきた声に後ろを振り向くとそこにはトリシアが居た。

 扉が開くような音がしていなかったって事は、俺が目を覚ます前から書斎の中に居たのか。今はまだこの前使った[グルーンの瞳]の影響で屋敷周辺は大気魔力が殆ど無くて魔力感知が上手く働かないから気付かなかったよ。

 まあ、気配で気付いても良いとも思うんだが、俺の場合【自動防御】の不意打ち不可能な性能の所為で基本的に危険感が薄いんだよね。

 だから普通なら気づける筈なのに興味が無いからかそれとも脅威が無いからか、人の気配は無意識に見逃してしまう事が結構あったりするんだよ。

 地球への里帰りではそれなりに意識して警戒していたんだが、結局琴音姉さんに背後を取られてしまったしさ。

 あ、でも唯一兄弟喧嘩の時だけは殺し合い一歩手前だからか意識が研ぎ澄まされて虫一匹見逃さない程凄く集中している気がするな。

 そう言えば、魔人になってから命の危機って家族以外の相手には殆ど感じていない。
 偶に未開領域から入ってくる絶対に殺しとかないといけないランクEXの上位クラスぐらいだな。

 まあ、例えランクEX(人類には無理かも?)でも本当に偶にそのままの状態で人類領域まで侵入させる事あるけどね。

 と、話がズレたな今はトリシアの話だった。

「ん、シア居たんだ?」

「はい、最初から」

 最初から?

「それは【転移】してきた時からって事?」

「そうです」

 そうなんですか。
 いや、当たり前か机には熱々のコーヒーが入れられたポットがあったんだ、既に飲み物を用意している状態でわざわざ席を外す程の仕事を夜までトリシアが残している訳ないか。

 まだ生まれてから5年しか経っていないのに、トリシアは俺よりも立派な大人の女性なんだよな。
 俺は男だけど怠惰なので、口が裂けても立派な大人とは言えない。

 まあ、言い訳させてもらうなら俺はカラミタ母さんの眷族になった事で魔力が変質して、基本的にいつも怠かったり眠かったり面倒だったりといった感情が勝手に湧いてくるんだよね。もう慣れたけど。

 それにしてもトリシアは【転移】していた時から書斎に居たなら世界間の移動で気を失った俺を助け起こしてくれても良いだろうに。
 
 いや、トリシアが助け起こさない訳ないか。
 
 カーペットに掛けた【復元】の魔力消費量から考えて俺がコーヒーを零してから魔法掛けるまでの間はごく短時間だった筈だ。

 俺が気絶していたのは精々数秒といった処か。

「分かった。それでシア、エルダーグランドドラゴンって今はどの辺りに居る?今夜中には片付けて向こうに戻らないといけないんだけど」

「9-50です」

 怠惰の領域は人類領域の西にあり縦1~50横1~20の区画を俺は管理している。

「9-50って事は直ぐ隣は強欲のクリーナの領域か。向こうに弾き飛ばしたらクリーナが処理してくれたりしないかな?」

「絶対に喧嘩になりますが?」

 トリシアは未来を予知したかの様に絶対の確信を持ってそう言う。

 まあ、俺も全くの同意見だけど。

「そうなんだよね。でも相手はあれでもランクEXだから、俺が戦ったらそれなりに真面目にやらないといけないし周辺の被害が結構出るんだよね」

 その点、強欲なクリーナなら素材の為に時間を掛けてゆっくりとでも綺麗に倒すだろう。

 しかし俺は明日も学校があるから今夜中に如何にかしないといけないからクリーナの領域の方まで絶対に被害が行く、そしてどの道喧嘩に発展しそうだな。

 うん、どの道喧嘩になるならエルダーグランドドラゴンの処理もクリーナに任せてちゃおうか?
 素材が手に入った方がクリーナの怒りも減るかもだしね。

 そうと決まったら早速【転移】してエルダーグランドドラゴンをクリーナの屋敷の近くにでも弾き飛ばしてやろう。

「ベル様」

「ん?」

 俺がクリーナに全て押し付けようと考えていると、トリシアが俺の考えを遮るかの様に声を掛けてきた。

「実はカラミタ様から依頼が」

「依頼?」

「はい、エルダーグランドドラゴンですが、人類への試練として使うのでコアを一つ削った後は素通りさせて良いそうです」

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