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未定
91.付けている事にも気付かれず、その逆も同じ
しおりを挟む「不満はありますが、私も同じ状況になっていたと思うので帰りはしません。でも良い物は欲しいです」
ここで帰るなら、放っておこうかとも思ったが、帰らない上に良い物まで要求されるとは思っていなかった。
まあ、どちらを選んだとしても良い物は渡そうと思っていたけどな。中身は違っただろうが。
「なんか思っていたのと違うな」
そう言った俺を見て、凛は不思議そうにしている。
「何がですか?」
「何でもない」
俺は適当に誤魔化す。
さっさと良い物を渡してしまって、話を先に進めたい。
「はい。これが良い物だ」
マジックポーチから銀色の指輪を取り出して凛に渡した。
「この指輪が良い物ですか?」
凛は光に翳しながら観察するが、どの辺が良い物なのか分からないようだ。
「分からないか?」
「う~ん? 唯のプラチナの指輪にしか見えないです」
「プラチナの指輪なら、それだけで良い物じゃないのか?」
プラチナの指輪なら結構するんだろ、最低数万円くらい。
「いえ、偉そうな先輩の事ですから、きっと何かがある筈です」
「それはその通りだが、そんなに偉そうに見えるか?」
「はい、物凄く上から目線です」
マジか、あんまり自覚なかった。そんなに偉そうでした? なんかすいません。
「まあ、今はそんな事いいか」
「あまり良くありませんが」
君は黙ってなさい。
「今はそんな事いいか」
凛の言葉は聞こえないフリをして話を進める
「それよりも今渡した銀色のリングだが、指に嵌めるとEPが+5000になるチートアイテムだ」
「+5000!凄いアイテムですね」
凛は見開くいて驚く。
うんうん。今の段階ではEP+5000はチートアイテムに見えるよな。
lvが62になった俺にとっては、EP+5000は雀の涙くらいの価値になってしまったがな。
だから、この【ミスリルの指輪】はlvが62になってから装備していなかった。
それを今回マジックポーチの中で埃を被っていたのを、丁度良かったから凛に渡す事にした。
さっき帰っていたらEPポーション渡していたけどな。
「そうだろ」
正確には凄いアイテムだったの過去形なんだけどな。
「これがあれば、王獣化(猫)の問題もある程度解決出来ますね」
「ああ、その指輪があれば、切り札の第五開放は使えないが、第四までなら問題無く使えるようになる筈だ」
「はい、基本的に第三開放までしか使わない予定ですので大丈夫です。ありがとうございます」
そうだったな。第四開放からはスキル名通りに獣化していくんだった。
凛はその猫耳状態の姿を人前では晒したく無さそうにしていたな。
「でも、良いんですか? こんな凄いアイテムを私にくれるんですか?」
とは言っているが、凛は無意識にか【ミスリルの指輪】を握りしめていて、例え俺がここで良くないと言っても返す気は無さそうだ。
まあ、俺も唯アイテムを見せびらかすだけで、貸してやらないなんて事はしない。
何故なら俺がそれをやられたら、相手をボコボコにしたくなる程、腹が立つだろうからだ。
「あげるとは言ってない。貸すだけだ。凛のEPが一万を超えたら返してもらう」
「そうですか。先輩はこの指輪を使わないんですか?」
「俺は既に自分のスキルよりEPが上回ったから必要ない。それにその指輪を返してもらうのは、また他に人に貸す事もあるかもしれないからだ」
「確かにそう考えると便利そうですね」
まあ、実際に今、そういう風に使おうとしているからな。
「あっ、それとその指輪だけど、凛には少し大きいと思うから、中指か人差し指に嵌めた方が良いかもな」
「そうなんですか? 嵌めてみますね」
そう言って、凛は試しに人差し指に嵌めようとすると、上手く嵌った様だった。
「人差し指で良かったか?」
「はい。ですがこの指輪、人差し指に嵌めた時に少し小さくなりました」
「自動で大きさが変わったという事か?」
「はい。指を近づけると少し小さくなってピッタリと指に嵌まるようになりました」
何だとっ 俺は指の大きさが左手薬指しか合いそうになかったから、態々そこに付けていたというのに。
もしかしたら、誰かに勘違いでもされて揶揄われるかもな?とか密かに思っていたのに。
自動調節機能なんて付いていたのか。
めっちゃ恥ずかしいわっ。そして誰にも指輪の事を指摘されなかった事が余計に恥ずかしい。
どの指でも良かったのかよ。今更知っても遅いけどな。
「まあ、良いや。今度からドロップアイテムには自動調節が付いているかもしれないと事が分かっただけで」
「それでこれからどうしますか?」
凛が地図を広げて、俺に聞いてきた。
「そうだな。じゃあここの辺りを凛に担当してもらおうかな」
凛が持っている地図の一部を丸で囲んで指す。
「私はこんなに狭い範囲で良いんですか?」
想定範囲の3分の1だから、それなりに広いんだけどな。
まあ、実際にやってもらえば全然狭くない事が分かるだろう。
「ああ、凛は疲れているだろう。それに俺の方がスピードがあるからな」
「分かりました。なら早速始めましょうか」
「ああ、19時にダンジョン前に集合にしよう」
「はい」
俺と凛は二手に分かれてダンジョン外にいるウルフ狩りを始めた。
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