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あいつの話。
5、アイコンタクト
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朝から騒がしい教室。
ひとりザワつく胸を静かに落ち着かせていると、後ろから誰かに右肩を叩かれた。
振り向くと同時にほっぺに指先が刺さり、
「ははぁ~引っかかった~」
と、寝癖の残った髪でニヤニヤしているちかが立っていた。
「おはよ」とちかに挨拶をしたと同時に朝礼のチャイムが鳴った。
「じゃあな~」と奏斗とちかが僕の席から解散し、担任の先生が入ってきたことで辺りはやっと静かになった。
ただただ、平凡な授業。
社会、国語、理科、数学と時間が過ぎた。
ただ1つ違うのは、今日何度か城川くんと目が合った気がする。
話こそはしてないが、アイコンタクト?みたいなのがあったと思う。
僕から見てるくせに目が合うとすぐ逸らしてしまうけど、城川くんもこっちを見てるってことだよね。
こういうのってなんて言うんだろ。
ほら今だって、城川くんの方を見ると、
バチン、目が合った。
それですぐ目を逸らす。
いや、もう1回見てみようかな、次は逸らさないようにしよう。
バチン
……………。
あ、笑った。
え、手、振ってる?
どうしよ、返そうかな。
胸の辺りで小さく手を振り返した。
「おーい、小道ーまた話聞いてないんか~?」
ビクッと体が少し浮いた。
黒板の前で竹園先生がチョークを持ってこっちを見ている。
「あ、すみません……」
と返事をすると、何も無かったかのように竹園先生は授業を続けた。
ちらりと城川くんの方を見ると、口を隠して笑っていた。
なんで僕だけ、と思いつつこの授業ではもう城川くんのことを見るのはやめた。
放課後になって、ぞろぞろとクラスメイトが教室から出ていく。
いつからか窓の外では雨がポツポツと降り始めていた。
「げー、天気予報外れたな」
気づけば隣にちかが立っていた。
「ちか傘持ってんの?」
「持ってないって~、でも俺自転車だから走って帰るわ~。奏斗は大丈夫なん?」
ちかが1番後ろの席で帰る用意をしている奏斗に話しかけた。
「俺のお母さん、電話したら迎えに来てくれんの!」
ニカっと笑って鞄からスマホを取り出した。
「奏斗の親って優しいよな~だから奏斗はわがままに育ったんだ!!」
「なんだよそれ!!親戚のおじちゃんみたいなこと言うなよ!!」
と2人の会話に釣られ笑ってしまった。
「あさひは?傘あんの??」
「あさひのことだからどうせ毎日持ってきてんじゃない?」
「当たり」
2人にピースをしてそのまま一緒に教室を出た。
下駄箱の辺りまで来ると、生徒がいつもより多かった。
多分、みんなこの突然の雨にどうしたもんかと立ち尽くしているのだろう。
「じゃ!俺先に行くわ!雨酷くなんないうちに!」
ちかがリュックを頭に乗せて言った。
「気をつけてなぁ~」
「転けんなよ!!」
と送り出すと、そのまま駐輪場の方まで走っていった。
「じゃ、あさひもまたな!」
と奏斗は次に僕を送り出そうとしてくれた。
僕はガサゴソと鞄を漁るが、折り畳み傘らしきものは手に触れない。
「あれ?」
リュックを大きく開け、教科書や筆箱の下まで確認した。
「どしたん?あさひ?もしかしてない?」
「いや、そんなはずは、あっ」
思い出した。
「ロッカーに入れたんだった。ずっと持ってると重いから。」
「あーなるほどね!」
「奏斗、先帰ってていいよ!僕、教室に取りに戻るから!」
「おっけー!じゃあ先帰るわ!」
「うん!また明日~!」
と、今度は僕が奏斗を送り出した。
いつもより多い人混みの中、Uターンして教室に向かった。
1番近いトイレ横の階段を1段飛ばしで2階まで上がる。
2-2、僕の教室が見えた。
ドアは閉まっていたが、電気はついてそう。
前のドアを開けようとした時、
「好きです」
はっきりそう聞こえてきた。
パッと上を向くとドアのガラス越しから中が見えた。
知らない女子と誰かの後ろ姿。
ドキッとして、すぐに向こうからも見えないよう、横の壁側に隠れた。
タイミング悪~と、内心どうしたらいいか分からなかった。
「ありがとう、でもごめん」
教室の中からもう1人の声が聞こえた。
男の声で聞き覚えがある。
よく耳を澄まして聞いてた声だ。
「朝陽くん」
僕の脳内で同じ声が聞こえた。
あ、城川くんの声だ。
思い出した、朝、城川くん手紙やら告白やらで騒がれてたな。
ほんと、タイミング悪い……。
顔が暑くなってきて、なんかこっちまで緊張してきた。
え、でもさっき城川くん「ごめん」って言ってたよね。
ごめんってごめんってことだよね。
なんだ、そっか。
少し安心した。
ガララララ
と隣のドアが開かれた。
ビクッとなって隣を向くとがっつり城川くんと目が合った。
こんな近くで目が合ったのは昨日ぶりだ。
「え?」
「あ……」
沈黙が1分くらい続いたんじゃないかと思うくらい長く感じた。
すると、城川くんが後ろから誰かに押され、前に体が倒れた。
「え?だれ~??」
女子だ、さっき告白してた。
黒髪というより少し明るめの髪色でクルッと毛先が巻かれている。
ぱっちりとした二重で僕と完全に目が合っている。
「ちょ、押すなよ、遠藤」
少し慣れたようにその女子に向かって話す城川くん。
え、確かに聞き耳立ててた僕が悪いんだけど。
どうやってこの状況を説明しよう。
ど、どうしよう……。
ひとりザワつく胸を静かに落ち着かせていると、後ろから誰かに右肩を叩かれた。
振り向くと同時にほっぺに指先が刺さり、
「ははぁ~引っかかった~」
と、寝癖の残った髪でニヤニヤしているちかが立っていた。
「おはよ」とちかに挨拶をしたと同時に朝礼のチャイムが鳴った。
「じゃあな~」と奏斗とちかが僕の席から解散し、担任の先生が入ってきたことで辺りはやっと静かになった。
ただただ、平凡な授業。
社会、国語、理科、数学と時間が過ぎた。
ただ1つ違うのは、今日何度か城川くんと目が合った気がする。
話こそはしてないが、アイコンタクト?みたいなのがあったと思う。
僕から見てるくせに目が合うとすぐ逸らしてしまうけど、城川くんもこっちを見てるってことだよね。
こういうのってなんて言うんだろ。
ほら今だって、城川くんの方を見ると、
バチン、目が合った。
それですぐ目を逸らす。
いや、もう1回見てみようかな、次は逸らさないようにしよう。
バチン
……………。
あ、笑った。
え、手、振ってる?
どうしよ、返そうかな。
胸の辺りで小さく手を振り返した。
「おーい、小道ーまた話聞いてないんか~?」
ビクッと体が少し浮いた。
黒板の前で竹園先生がチョークを持ってこっちを見ている。
「あ、すみません……」
と返事をすると、何も無かったかのように竹園先生は授業を続けた。
ちらりと城川くんの方を見ると、口を隠して笑っていた。
なんで僕だけ、と思いつつこの授業ではもう城川くんのことを見るのはやめた。
放課後になって、ぞろぞろとクラスメイトが教室から出ていく。
いつからか窓の外では雨がポツポツと降り始めていた。
「げー、天気予報外れたな」
気づけば隣にちかが立っていた。
「ちか傘持ってんの?」
「持ってないって~、でも俺自転車だから走って帰るわ~。奏斗は大丈夫なん?」
ちかが1番後ろの席で帰る用意をしている奏斗に話しかけた。
「俺のお母さん、電話したら迎えに来てくれんの!」
ニカっと笑って鞄からスマホを取り出した。
「奏斗の親って優しいよな~だから奏斗はわがままに育ったんだ!!」
「なんだよそれ!!親戚のおじちゃんみたいなこと言うなよ!!」
と2人の会話に釣られ笑ってしまった。
「あさひは?傘あんの??」
「あさひのことだからどうせ毎日持ってきてんじゃない?」
「当たり」
2人にピースをしてそのまま一緒に教室を出た。
下駄箱の辺りまで来ると、生徒がいつもより多かった。
多分、みんなこの突然の雨にどうしたもんかと立ち尽くしているのだろう。
「じゃ!俺先に行くわ!雨酷くなんないうちに!」
ちかがリュックを頭に乗せて言った。
「気をつけてなぁ~」
「転けんなよ!!」
と送り出すと、そのまま駐輪場の方まで走っていった。
「じゃ、あさひもまたな!」
と奏斗は次に僕を送り出そうとしてくれた。
僕はガサゴソと鞄を漁るが、折り畳み傘らしきものは手に触れない。
「あれ?」
リュックを大きく開け、教科書や筆箱の下まで確認した。
「どしたん?あさひ?もしかしてない?」
「いや、そんなはずは、あっ」
思い出した。
「ロッカーに入れたんだった。ずっと持ってると重いから。」
「あーなるほどね!」
「奏斗、先帰ってていいよ!僕、教室に取りに戻るから!」
「おっけー!じゃあ先帰るわ!」
「うん!また明日~!」
と、今度は僕が奏斗を送り出した。
いつもより多い人混みの中、Uターンして教室に向かった。
1番近いトイレ横の階段を1段飛ばしで2階まで上がる。
2-2、僕の教室が見えた。
ドアは閉まっていたが、電気はついてそう。
前のドアを開けようとした時、
「好きです」
はっきりそう聞こえてきた。
パッと上を向くとドアのガラス越しから中が見えた。
知らない女子と誰かの後ろ姿。
ドキッとして、すぐに向こうからも見えないよう、横の壁側に隠れた。
タイミング悪~と、内心どうしたらいいか分からなかった。
「ありがとう、でもごめん」
教室の中からもう1人の声が聞こえた。
男の声で聞き覚えがある。
よく耳を澄まして聞いてた声だ。
「朝陽くん」
僕の脳内で同じ声が聞こえた。
あ、城川くんの声だ。
思い出した、朝、城川くん手紙やら告白やらで騒がれてたな。
ほんと、タイミング悪い……。
顔が暑くなってきて、なんかこっちまで緊張してきた。
え、でもさっき城川くん「ごめん」って言ってたよね。
ごめんってごめんってことだよね。
なんだ、そっか。
少し安心した。
ガララララ
と隣のドアが開かれた。
ビクッとなって隣を向くとがっつり城川くんと目が合った。
こんな近くで目が合ったのは昨日ぶりだ。
「え?」
「あ……」
沈黙が1分くらい続いたんじゃないかと思うくらい長く感じた。
すると、城川くんが後ろから誰かに押され、前に体が倒れた。
「え?だれ~??」
女子だ、さっき告白してた。
黒髪というより少し明るめの髪色でクルッと毛先が巻かれている。
ぱっちりとした二重で僕と完全に目が合っている。
「ちょ、押すなよ、遠藤」
少し慣れたようにその女子に向かって話す城川くん。
え、確かに聞き耳立ててた僕が悪いんだけど。
どうやってこの状況を説明しよう。
ど、どうしよう……。
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