僕を勇者パーティから追放しないと、悪役令嬢は死んでしまう ~ヴィアドライ物語~

Ada Maynek

文字の大きさ
21 / 40
第2章『プレナド国を目指して』

第2章・タクヤ(2)

しおりを挟む
「勇者ラオウール様はおられますか……!」

早朝、僕とレアリィが自宅で食卓を囲んでいるところに、王国の兵士が駆けこんできた。

「はい、いますけど?」

「なによなによ、朝っぱらから大きな声で……」

僕たちは玄関で兵を出迎えた。
レアリィはパンを片手に、口をもぐもぐとさせていた。

「大変長らく、お待たせしておりました……! 勇者様にお渡しするはずだった軍船が、たった今、レイアレスに戻って参りました……!」

ここまで走ってきたのだろう。
ハアハアと息を切らせながら、兵士が僕に告げた。

「そうか! ようやく、船が手に入るんだね!」

「旅立ちの前には、どうか王の元を訪ねて欲しいとのことです……! では……!」

そう告げると兵士は敬礼し、玄関から出て行った。

「早速、旅に出よう! 準備を始めようか、レアリィ!」

「そう焦らないの! まずは食事を済ませちゃいましょ」

僕たちは食卓に戻って、食事を再開した。

「で……次はどこに向かうの?」 

「うーん、そうだなあ……」

僕は正直、今後の方針について悩んでいた。
本来であれば、シナリオ通りにサンサリア国に渡って、待ち構えているイベントを順番通りにこなして行けば良かっただろう。

だが今の僕は、トルネッタ姫たちの動向が気になっていた。
彼女たちが向かった先はイネブルであるということを、噂で聞いていた。
渡航先の彼女たちは、再びシナリオにはない勝手な行動をとっているに違いない。

バタフライ・エフェクトという言葉を、前世で聞いたことがある。
ある場所で一匹の蝶が羽ばたいた結果、様々な物事に対して連鎖的な反応を起こして、巡り巡ってやがては別の場所で竜巻を起こす……。
確か、そんな理論だったと記憶している。

今のトルネッタ姫たちは、まさに一匹の蝶に相当する存在だ。
彼女たちの行動が、この世界に大きな影響をおよぼし、想像も付かないような自体におちいることを、僕は懸念していた。

「……次は、カバルダスタ大陸のイネブル、かな?」

目的は勿論もちろん、トルネッタ姫たちを追いかけ、彼女たちの勝手な行動を止めることだ。

「イネブルね~。確かあそこって、豚肉料理で有名だったはず! あー、楽しみ~」

レアリィはニンマリとした顔を浮かべる。

「さすがはレアリィ。料理には詳しいんだね」

「そりゃ、作る方も、食べる方も、両方大好きなレアリィちゃんですもの!」

レアリィは何故か自信たっぷりにブイサインを作ってみせる。

朝食を終えた僕たちは、教会にいるグレリオとセロフィアの元を訪れた。

「そうか! いよいよ君たちの旅が再開するのか! 頑張れ、防御!」

元気そうに僕を出迎えたグレリオは、相変わらずの大きな声で僕を励ましてくれた。

「私も、ラオウール様の旅に同行いたします。グレリオ様の側を離れてしまうことになってしまいますが、どうかお許しください……」

セロフィアはグレリオに向かって頭を下げる。
彼女の本音を言えば、このままグレリオの看護を続けたいところだろう。
だが、パーティの貴重な回復役ヒーラーに対して、ここに残っても良いとは言えなかった。

「俺のことは気にするな、セロフィア! なーに、俺もすぐに追いついてみせるさ!」

グレリオは右手でゆっくりとガッツポーズを作ってみせた。
以前と比べたら、随分と自分で体を動かせるようになっていた。

彼は本気で、近い将来に僕たちに合流できると考えているのだろう。
僕が同じ立場だったら、絶望して世を悲観していたに違いない。
器が違うな……僕は正直に、そう思った。

「だ、か、ら、声が大き過ぎるって言ってるでしょーが……」

今日もレアリィはこの場で、耳を指で塞いでみせるのだった。

それから、僕とレアリィ、そしてセロフィアの三人は、それぞれに旅支度を終えると、レイアレス城の謁見の間に足を運んだ。

「おお、よくぞ参ってくれた、勇者殿! この度はそなたらに迷惑をかけてしまって、真に申し訳ない……!」

王に頭を下げられて、僕は恐縮する。

「あ、頭をお上げ下さい、王様! ところで、旅立ちの前に訪ねて欲しいと兵士の方から聞いていたのですが、一体どのような用件でしょうか?」

王は頭を上げてから、僕に向かって語り始めた。

「うむ、既に風の噂で聞いていよう……。第一王女トルネッタと第三王女マイロナの二人が、貴公に渡すべき船に乗って、カバルダスタ大陸のイネブルへと向かったという話を」

やはり、噂の内容は事実だったようだ。

「娘たちの目的は、プレナド国にある凶獣の牙を持ち帰ることなのだ。だが既にこの国には、勇者殿がエンシェント・ウルフを討伐することで持ち帰った魔獣の爪がある。凶獣の牙のために、娘たちが危険な旅をする必要は、最早どこにもないのだ……」

王は力なく肩を落とす。
なるほど、トルネッタ姫たちは強力な法力プラーナを求めて、凶獣の牙を入手するために自ら動いていたのか。

僕は前世で得た知識として、トルネッタ姫には上級悪魔べスタロドが取りいているという事実を知っている。
彼女のプレナド国の訪問は、べスタロドにそそのかされてのものであったと想像する。
プレナド国でトルネッタ姫に凶獣の牙に触れさせた上で、強力な法力プラーナを自分のものとし、真の姿を取り戻そうというのが、べスタロドの目論みだろう。

だが、僕には少し違和感があった。
何故、旅のお供にマイロナ姫を選んだのか、という点だ。

マイロナ姫が優秀な物理攻撃役アタッカーであり、旅のお供として十分に頼もしい存在であることを、僕は知っている。
しかし現時点では、他の者はまだ、そのことは知らないはずだ。
マイロナ姫のことを自分より劣るものとして特にしいたげていたトルネッタ姫が、わざわざ旅のお供にマイロナ姫を選んだということが、どうしても見過ごせないでいた。

僕は、トルネッタ姫の意図が掴み切れず、どこかモヤモヤとした気分を残していた。

「勇者殿。勝手ながら貴公には、娘たちに接触して、帰国するように促して欲しいのだ。貴公らにはこれから船でイネブルへと渡り、娘たちの後を追いかけて欲しい……!」

彼女たちの後を追いかけるということについては、元々、僕も検討していたことだ。
王からの依頼内容は、僕の冒険の目的と合致していた。

「かしこまりました、王様。トルネッタ姫とマイロナ姫を連れ帰る件、確かにうけたまわりました」

「おお、やってくれるか……! この件については、正規の命令書を発行している。これを受け取って欲しい。人相書も用意してある」

これで僕は、トルネッタ姫とマイロナ姫を連れ戻すことを王から正式に依頼されたのだ。
この文書類は今後、色んな場面で使われていくことだろう。

「イネブルまでの航海に必要な人員は、こちらで用意させて貰った。あとはよろしく頼む、勇者殿……!」

王は再び、深く頭を下げるのだった。

「承知いたしました。それでは、行って参ります!」

僕は謁見の間を後にし、港にある僕たちの船に向かって歩いて行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!? //////////////////////////////////////////////////// 悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。 しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。 琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇! ※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……? ※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。 ※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。 隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。

【完結】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!

カナタカエデ
ファンタジー
八十歳で生涯を終えた、元王宮侍女カリナ。 その最期の瞬間――枕元に、かつて仕えた王女アメリアが現れた。 「お願い…私の人生をやり直して。国を、私を、救って――」 次に目を開くと、カリナは十八歳の“王女アメリア”として転生していた。 彼女は知っている。 このままでは王国は滅び、愛する主君が破滅する未来を。 未来を変えるため、アメリアは 冷徹と噂される英雄ヴァルクとの政略結婚を選ぶ。 これは、かつて守れなかった主人のための転生。 そのはずなのに――彼への想いは、気づけば変わり始めていた。 王女と英雄が紡ぐ、破滅回避ラブファンタジー開幕。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜 挿絵はA I画像を使用 10/20 第一章完結 12/20 第二章完結 2/16 第三章完結 他サイト掲載 (小説家になろう、Caita)

悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい

斯波@ジゼルの錬金飴③発売中
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。 ※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。 ※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。

悪役令嬢に転生したけど、破滅エンドは王子たちに押し付けました

タマ マコト
ファンタジー
27歳の社畜OL・藤咲真帆は、仕事でも恋でも“都合のいい人”として生きてきた。 ある夜、交通事故に遭った瞬間、心の底から叫んだーー「もう我慢なんてしたくない!」 目を覚ますと、乙女ゲームの“悪役令嬢レティシア”に転生していた。 破滅が約束された物語の中で、彼女は決意する。 今度こそ、泣くのは私じゃない。 破滅は“彼ら”に押し付けて、私の人生を取り戻してみせる。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

前世が人気声優だった私は、完璧に悪女を演じてみせますわ!

桜咲ちはる
ファンタジー
「セイヴァン様!私のどこが劣ってると言うのです!セイヴァン様にふさわしいのは私しかいないわ!」  涙を堪えて訴えかける。「黙れ」と低く冷たい声がする。私は言葉を失い、彼女が床に座り込むのをじっと見つめる。そんな行動を取るなんて、プライドが高い彼女からは到底考えられない。本当に、彼女はセイヴァンを愛していた。 「レイン・アルバドール。貴様との婚約は、この場をもって破棄とする!」  拍手喝采が起こる。レイン・アルバドールは誰からも嫌われる悪女だった。だが、この数ヶ月彼女を誰よりも見てきた私は、レインの気持ちもわかるような気がした。 「カット」  声がかかり、息を吐く。周りにいる共演者の顔を見てホッとした。 「レイン・アルバドール役、茅野麻衣さん。クランクアップです!」  拍手と共に花束を渡される。レインのイメージカラーである赤色の花束を、そっと抱きしめる。次のシーズンがあったとしても、悪女レインはもう呼ばれないだろう。私は深々とお辞儀をした。 「レインに出会えて幸せでした」 【氷の公爵のお姫様】100万部を突破し、アニメ化された大人気の異世界転生ファンタジー。悪役令嬢レイン・アルバドール役の声優が家に帰ると異世界転生してしまった。処刑を回避したい、けどヒロインと公爵をくっつけなければ世界は滅んでしまう。 そんな世界で茅野麻衣はどう生きるのか? 小説家になろう様にも同じ作品を投稿しています。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

推ししか勝たん!〜悪役令嬢?なにそれ、美味しいの?〜

みおな
恋愛
目が覚めたら、そこは前世で読んだラノベの世界で、自分が悪役令嬢だったとか、それこそラノベの中だけだと思っていた。 だけど、どう見ても私の容姿は乙女ゲーム『愛の歌を聴かせて』のラノベ版に出てくる悪役令嬢・・・もとい王太子の婚約者のアナスタシア・アデラインだ。 ええーっ。テンション下がるぅ。 私の推しって王太子じゃないんだよね。 同じ悪役令嬢なら、推しの婚約者になりたいんだけど。 これは、推しを愛でるためなら、家族も王族も攻略対象もヒロインも全部巻き込んで、好き勝手に生きる自称悪役令嬢のお話。

処理中です...