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第3章
§30‐5 月影に揺れる夜香木*
しおりを挟む「あぁッ……グレンっ、も、むり……」
「よく頑張ったな」
俺は人差し指につけていた道具を外し、ライゼルの頭を撫でる。
目尻に溜まってしまった涙を舐め取り、荒く呼吸するライゼルが落ち着くのを待つ。
「うぅ……また、たっちゃった」
「一緒にするか?」
「こないだの……?」
「あぁ」
「……うん、一緒にしたい」
待て、待てだ。
目の前にご馳走を置かれた獣のような気分だが、ライゼルの信用を裏切ることは絶対にしたくない。そんな思いが、今にも千切れそうな理性を繋ぎ止めている。
俺は自身とライゼルの屹立をくっつけて、まとめて握る。
初めて尻を弄られた中、ライゼルのものが硬さを持ったことは僥倖といえるだろう。
優しい刺激から与え、ライゼルが辛くないか様子を見る。
「……グレンっ」
「どうした」
「……焦らさないでっ?」
「クソッ、こっちの気も知らないで……ッ!」
ぐっ、と腰を引く。
なんで、という顔をするライゼルを見下ろす。物欲しそうな顔の破壊力が強い。
俺は引いた腰をずんっ、と前に動かした。ライゼルの腰が跳ねる。
その腰を前後させる動きを繰り返し、どんどん早めていく。
ライゼルの屹立からは絶え間なく透明な液体が溢れてくる。
「んんんっこれ、前と違うぅ……ッあ! あん、ッ」
「ハァ、ッ……考えるな」
「いっぱい擦れて、グレンのが当たる……恥ずかしい……ッ」
「これから先……まだ俺の知らない、お前が見られるわけだ……クッ! 楽しみ、だな、っ」
頬はすっかりのぼせていて、褐色肌でも分かるほど。
声が大きくなり、限界が近いことを悟る。かく言う自分も、同じだ。
「んあぁ、ッ、ぐれ、グレンッ! ~~~イ、っく……ンンンッ!!」
「……ライゼル……ッ!!」
ライゼルが達した後、俺も続いた。
少し時間差があったため、敏感な屹立をいじめてしまう形になり、ライゼルが小さく悲鳴をあげた。
「あ、やぁ、ッダメ!」
「すまん……」
「すごい……いっぱい……」
ぼうっとした顔で、腹に撒き散らされた俺の精を指で掬う。あまりにも煽情的すぎる。
俺は慌ててタオルを取り、体液を拭き取る。もちろんライゼルの指についた分もだ。
「ちょっと舐めてみたかったのに……」
「ダメだ、身体に悪い」
「そうなの?」
「あぁそうだ。よく覚えておくんだな」
「ふぅん……」
ライゼルをベッドに寝かせたまま、テーブルに水を取りに行く。
そうしている間にまだ硬直を保っている自身の屹立がどうにか大人しくなることを願って。
ゆったりとベッドに戻ると、ライゼルが眠たそうに瞬きをしている。
「水飲むか」
「飲みたいけど……起きれな、い……」
「仕方ないな」
俺はがっとグラスの水を煽り、ライゼルに口付ける。少量ずつ水を流し込み、最後に軽くキスをして離れる。
「ありがと……眠いね……」
「いいぞ、寝てしまって」
「グレンと一緒に寝る……」
「分かっている。一人にはしない、安心しろ」
そう言って頭を撫でていると、規則的な息が聞こえてくる。どうやらすぐ眠りに落ちたらしい。
俺の屹立もライゼルが心地良さそうに眠っていることに安心したのか、落ち着いてくれたようだ。
シャワーは明日の朝にもう一度浴びせることにして、俺は洗面所でタオルを濡らす。
ライゼルの元に戻ると、起こさないように優しく身体を拭いてやる。
心の中に広がるのは、ライゼルを怖がらせずに済んだという安堵。
逆の立場になってみれば、自身より身体の大きな獣人に組み敷かれるなど、恐怖でしかないだろうと思う。
だが、なんとか理性を保たせる事ができた。もし理性を忘れていればライゼルを怖がらせていただろう。
濡れたタオルを洗面所に戻し、部屋の灯りを全て落とす。
ライゼルにガウンを着せるのを忘れていたが、自分が隣に寝ていれば大丈夫だろう。この毛のおかげで、毛布の役割は果たせるはずだ。
静かにライゼルの隣に潜り込む。身体に布団をかけてやりながら、その綺麗な顔を見つめる。
窓から差し込む月明かりに照らされた金色の睫毛。俺のキスに必死に応えてくれた小さな唇。絹のような金髪は風呂上がりの艶を保っている。
ただの寝息さえ愛おしく感じる。
自分がこんな風に誰かを夢中で愛する日が来るなんて、想像もしていなかった。
知らなかった。それだけ愛する人に同じ気持ちを返してもらえることが、これほど嬉しいことだとは。
充足感に溺れた心臓は、ゆっくりと眠るための緩やかな鼓動に変わっていった。
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