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第3章
§30‐4 月影に揺れる夜香木*
しおりを挟むグレンside
部屋に残された仄かな灯りがライゼルの身体を照らす。まるで絵画から飛び出してきたかのような美しさに息を呑む。
戦いで負った傷が生々しい。古いものから新しいものまで、全てを目に焼き付ける。
もっと早く出会えていたら、傷を少なくしてやれただろうか。
そんな思考が一瞬挟まるが、驕るのも大概にしなければならない。たらればを言っても仕様の無いことだ。
彼が無事で過ごせたこと、そして出会えたことをありがたいと思う。
はだけたガウンは腕のあたりで溜まりを作っており衣服としての役目を果たしていない。
脚の力が抜けて俺の身体の下で大きく股を開いてくれるライゼルを見て、一瞬思考が止まったのがついさっきのこと。
もしかするとライゼルはこの仄かな灯りで自身の身体があまり見えていないと思っているかもしれない。
しかし獣人は人族よりも夜目が利く者が多い。……いつか知られたら怒られる気がするな。
今日のところはまだ黙っておくことにして、一歩線を越えると彼に伝える。
「……嫌だったら、全力で抵抗してくれよ」
俺の言葉に、困ったような、照れたような顔で頷く。可愛い。
先ほど少し可愛がった胸の突起を再び舐めていく。小さな嬌声が聞こえてきて気分が良い。
同時に手はライゼルの屹立を弄る。すでに透明な先走りがライゼルの腹に垂れている。直接触る前から感じてくれているのに安心する。
屹立の先端から首の辺りを重点的に攻めると可愛い声が大きくなってくる。
「あっグレン、そんな、したらぁ……」
「ん、大丈夫だ」
顔を近づけるだけで自ずから舌を出してくれるようになった。手は休めることなく、ライゼルの舌を味わう。
何故か分からないが、ライゼルとのキスは甘く感じる。それに加え、微かに花の香りを感じることも。
彼が自然に愛されているからなのか体質なのかは、正直どうでも良いのだが。とにかく俺はライゼルとのキスが好きなのだ。
「んんぅ、ちゅ、っふ、ン」
俺の舌よりずっと小さい舌を一生懸命動かすいじらしい姿に、胸が焼ける。
首に回された両腕。俺は手の動きを早める。
「んぁッ……あぁっ、だめっ」
快感から逃れようとするライゼル。まだ理性が残っているようだ。早く手放して蕩けてしまえば良い。
大丈夫だ、という気持ちを込めてぢゅっ、と強めに舌を吸い上げる。
「アッ! あっ、でる、ぅッ――んん゛ッ!!」
溶けたバターの如く熱い精が吐き出され、首の後ろに爪を立てられる。気をやって敏感な身体はしばらく震えていた。
俺はベッドサイドに置いていたタオルをサッと手に取り、ライゼルの腹に飛び散った液体を拭き取った。
本音では全て余さず舐め取ってしまいたいのだが、引かれたくない。それにまだライゼルはこう言ったことに不慣れだ。
徐々に体液と粘膜の触れ合いに慣れて、いつかは何も気にせず快感だけを追えるようになれたら良い。
「大丈夫か」
「うん、タオル、ありがとう……また俺だけ先に……」
「気にするな。この後少し頑張ってもらうつもりだからな」
「……ん?」
熱に浮かされた顔で俺を見上げる。その表情に恐怖の色は見られない。
俺は先ほどライゼルが渡してきた箱を開く。中身があまりにも充実していて、正直驚いた。
急に寝室を一緒にすることになり準備不足だったので、今夜は事を進めるつもりはなかった。
しかし運の良いことに、ライゼルの二番目の兄から持たされたという箱が登場したというわけだ。
箱の中から指にとりつけて使う道具を出し、右人差し指に装着する。
ライゼルは不思議なものを見るような顔をしている。本当にこういった類の経験が無いらしい。もちろん疑ってなどいなかったが、事実である以上、はじめの段階で絶対に怖がらせたくない。
「どうなってるのそれ。爪の形がよく分からなくなってる」
「内側に綿が入っていて、どんな爪でも関係なく使えるんだ」
雰囲気を無視してわざわざ懇切丁寧に解説するのも全て、ライゼルを怖がらせず、不安にさせないため。
俺は箱から小瓶を取り出す。これはライゼルも想像に難くないだろう、潤滑剤だ。
意味ありげに種類豊富に用意されているが、今日使うのは至って普通のもの。
「今日は最後まではしない。いや、しばらくはしない。しっかりここをほぐしてからだ」
「うぅ……はぁい」
少し不満そうにするライゼル。やめろ、俺の理性を試すな。
精神統一して小瓶を手で握り少し温める。蓋を開け、ライゼルの尻に垂らす。
「んっ」
先に気をやらせたのは、少しでも身体の緊張をほぐすためだ。
固く閉じた蕾をやわやわとさすり、本当に少しずつ指を差し込む。
ライゼルはまだ感覚を拾いきれていないのだろう、自分の尻で何が起きているのか分かっていない顔をしている。
俺は霰もない姿を見てなんとか理性を保つのに必死だ。
「痛くないか」
「うん、大丈夫」
「少しずつ入れる。痛かったら我慢せず言うんだぞ」
「分かった……。っあ、……ん、ほんとだ、入ってる……」
俺の顔をまっすぐに見て、嬉しそうに破顔する。
眉間あたりの血管がドクン、と脈打ち、焼き切れてしまいそうな感覚。
所在なさげにしていた両手を自分の太腿に添える。自ら身体を差し出すような仕草に、身体の中心が熱く燃えたぎる。
「フーッ……もう少し中に入れて動かすぞ」
「うん……んっ……あ……」
ぐっ、と壁を突き抜けるように指を差し込む。熱くて柔らかい中が指の動きに合わせて収縮するのが分かる。
俺は指を動かす方向を変え、腹側を撫でるようにする。
「アっ! んんッそこ、何……なんかダメっ」
「痛いか」
「いたく、ない、けど……怖い……」
「少しだけ我慢できるか?」
「うぅ……うん……」
「いい子だ」
ライゼルの頬に手を添えると、すりすりと顔を擦り付けてくる。愛らしい甘え方に胸が締め付けられる。
愛らしい表情と裏腹に下半身は潤滑剤と屹立から漏れた先ほどの精の残りがふぐりの辺りで混ざり、水音を立て始めている。
俺はもう一度ライゼルの敏感な部分を撫でる。
「んあぁぁ……う……んぅ、はぁ……」
甘い嬌声が脳内に響く。
可憐で強さを兼ね備えた未来の伴侶が、初めて弄られる部分を俺に明け渡し、主導権を握らせてくれている。
その事実が俺の理性の鎖を引きちぎらんとする。
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