金曜が終わる、良い終末を

朗読師

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前編:金曜が終わる、良い終末を

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 夏の日差しが照りつく中、チャイムと共に帰る同級生を見ながら、僕は学校を出た。
 今日は珍しく4時間授業で終わり、帰るのも昼頃でなおかつ明日は土曜日、内心飛び上がるように喜んでいた。

「明日は何しようかな…」

 土日、何して過ごそうかと考えていたが、2日という休みは思っていたよりも早く過ぎる。
 すぐにまた1週間、その中の5日間学校に行かなくてはいけないというのが正直嫌いだった。

「週末がずっと続けばいいのに…」

 そう呟きながら、良く遊ぶ時待ち合わせ場所にしている神社の前を通った瞬間、突然強風が吹き、僕はバランスを崩してしりもちをついてしまった。
 だが、突風はすぐに過ぎ去り、気にせず立ち上がって家に帰った。
 そして、何事もなく週末を過ごしていた……はずだった。

 *

 日曜の夜、僕はいつものように時計を7時にセットして、寝ていた。

 次の日、寝過ごしてしまい、飛び上がるように起き上がると、時計の時間は9時を過ぎていた。
 だが、ランドセルを背負って走って学校に行くと誰1人として生徒はいなかった。

「誰もいない…今日祝日だったのかな…」

 帰宅し、母さんに今日は何曜日か聞いてみた。

「お母さん、今日何曜日?」

「土曜日だけど?それがどうかしたの?」

「えっ?」

 僕はすぐにテレビを付けて見てみた。やはり土曜日になっている。
 何が起きたのかは分からない、だがもう一度週末になったということは、休みという事だ。
 再度週末を楽しみ、また日曜の夜になった。
 正直、不思議な2日間ではあったが週末が増える、と言うよりもまた最初に戻るのはやっぱり嬉しい。
 もしずっと同じ日が続くなら、どんなに良い事か。そう思いながら目を瞑り、就寝した。

 そして僕の思い通り、土日はずっと続いた。日曜になれば次の日は土曜、また日曜が終われば次も土曜。
 僕の一言の呟きが、こんな幸せな世界を作り上げるなんて、素晴らしい。
 でも、やっぱり毎日同じ会話、同じニュースを見てても面白くない、むしろその2日間の間何が起こったのか、というのを全て覚えてしまった。
 元の世界に戻りたい、次第にそう思ってきてしまっている。

「圭人起きなさい!2日間もずっと家に引きこもるんじゃありません!」

 この言葉を何度聞いたことか、多分もう5回は聞いている。同じ発音のせいか、次第にその言葉も煩わしく思えてきた。
 気付けば僕は、この思い通りになった世界が段々と嫌いになっていった。

「圭人起きなさい!」

「分かってるよ!僕今考え事してたの!」

 どうすればいいのかと思いながら、起こしに来た母さんの元に行き、一つ質問してみた。

「…お母さん、変な話してもいい?」

「良いけど…変な話って?」

「ずっと同じ2日間が続いてるっていう話なんだけど」

「あぁ、同じ日がループする話ね?昔おばあちゃんから聞いたなぁ」
「もしかして、圭人がループし始めたの?」

「そうなんだよ…」

 少し落ち込みながらそう言うと、母さんは笑い始めた。

「そんな話嘘に決まってるでしょ?おばあちゃんの話もどうせ作り話だって!圭人がそんな目に遭ってたら次に言う言葉予想出来るはずでしょ!」
「そんなバカな事があるはずがないわよ、ほら早く朝ごはん食べて遊びに行ってきなさい」

 そう言った母さんに、僕は少し悲しくなっていた。でも同時に、今聞いた言葉を覚え、次のループの時に言ってやろうと決めた。
 朝ごはんを食べ終えて外に出て、真っ先に友人の佐原暁斗の家に行った。佐原の家には、3回目のループの時に行っていて、この時間帯にはいると知っていた。

「暁斗起きてる?」

 佐原の親に許可を貰い、部屋に入ると、まだベッドで寝ていた。
 脇腹をくすぐって起こすと、佐原は驚きとくすぐったさで感情の渋滞を起こしながら上体を起こした。だがすぐに横になった。よほど寝たいらしい。

「な、なんだよ…まだ8時じゃん、そんな…」

「そんな起こしに来る暇があったら誰かと外で遊べよ」

 そう言うと、眠気の混じった顔でこちらを見た。

「…なんで俺が言おうとした事を圭人が言ってんだ?」

「僕、ループしてるみたいなんだよ」

「ループぅ?」

 佐原は首を傾げながら欠伸をすると、ベッドから起き上がり、うつらうつらと眠そうに首を動かした。
 僕は何とかして眠気を覚まさせようと、もう一度頬をつねろうとした瞬間、佐原はつねらせないように片方の手で払った。

「眠気は覚めてるって、2度もつねろうと
すんな」

 ベッドにあぐらをかいて座ると、佐原は「続けろ」と言わんばかりの表情で見ていた。

「ループしてるって話なんだけど…」

「ループ…なぁ」
「まずなんでそんなゲームやらアニメやらでありそうな事が圭人に起きてるんだ?」

「知らないよ!」

「それで…ループ何回目とかあるのか?」

 1度指で何回ループしたのかと数えてみると、7回ループした事になった。

「何回目…だいたい7回かな」

「結構してるんだな」
「…それで?俺は何をすればいいんだ?」

「どうやってこのループを止めたらいいかってのを考えて欲しいんだ」

「考えるって…そもそも俺ループとか知らないし…」

「こういうの得意でしょ、よくそういうの見てるじゃん」

    僕は知っている、暁斗がよくループ物を見ている事を。というより横の本棚に置いてあるんだけど。

「まぁ、考えるだけ考えてみるか…それと、もし間に合わなくなったら、次の俺にこう言ってくれよ、無理でしたってな」

    僕は頷き、残り1日の間どうやって戻ればいいのか、佐原と考え始めた。
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