2 / 8
鏡の中の魂
しおりを挟む
長閑な田園地帯を抜けて籠は小さな村へ着いた。辺りは日が落ちて真っ暗になっていたが、尼僧は迷うこともなく月明りを頼りに小さな山の上にあるお寺の中へ入っていった。
寺では尼僧の帰りが遅くなり心配していたのだろう、尼僧達が出迎えてくれた。
「お帰りなさい。蓮様、町の様子はどうでしたか。」
「ただいま、皆さん。詳しい事は後で説明しますけれど、この後5体のご遺体が運ばれてくるので葬儀の準備をお願いします。」
尼僧達は驚いた顔になる。
「まあ、5体も。分かりました。すぐに準備します。」
尼僧達は葬儀の準備をする為に急いで走っていった。蓮は鏡を持ったまま自室に向かう。
「さてと、準備が整うまでの間、あなたのお話を聞かせてくださいね。」
自室に戻ると蓮は、鏡を机の上に置いて真剣な眼差しで見つめながら問う。
「私の名前は蓮と言います。ここは京から少し離れた村の尼寺ですよ。どうしてこのような事になったのか教えてください。」
鏡が震える。
「レンサマ、ワタクシ、シンダノ?」
鏡から弱弱しい小さな声が聞こえてきた。
「ええ、あなたは亡くなりました。あなたもあなたのご家族も、この尼寺で供養して埋葬します。」
「アリガトウ、ゴザイマス。」
お札がはられた鏡から、泣き声のような呻き声のような音が聞こえてくる。鏡はカタカタと音を立てて震えていた。暫くすると鏡も落ち着いたのか、震えが止まり静かになる。
鏡は小さな声で語り始める。
「チチウエ ツミニトワレ スベテ ナクシタ
ワタクシ コンヤクハキ ミンナデ ドグヲノンデ ジガイシタ
ワタクシ ノンダノニ ナゼカ イキテイテ」
その時の様子を思い出しているのか、鏡が凄い勢いで震えだした。鏡から黒い靄のようなものが出てきている。
「アノオトコガ ワライナガラ ヤッテキタ チチウエヲ ワナニカケテ ツミヲキセタ コンヤクハキ」
レンは宥めるように鏡を優しく撫でて、お札をもう一枚張る。途端に静かになった鏡が語り続ける。
「ユルセナイ ソレデ ノロオウトシタ アトハ オボエテナイ」
話を聞いて辛そうに顔を歪めている蓮。
「そうでしたか。まさか、わざわざ見に来るだなんてなんて人間なんでしょう。あなたの気持ちは分かりますが、呪いは駄目ですよ。呪いをかけた本人が苦しむ事になるだけですから。」
「ハイ」
「ご遺体が到着したようですね。今夜はここまでにしましょう。明日、鏡の呪いと今のあなたの状況について説明しますね。」
「ハイ」
「今日はこの箱の中で休んでいて下さい。」
蓮は鏡を赤い布でくるむと、木の箱に入れて部屋を出て行った。
外では尼僧達がご遺体を清めて葬儀を執り行う。村人達は話を聞いて弔問に訪れてくれていた。風に乗って蓮の部屋にもお経の声と線香の香、お悔やみを言う人々の言葉が届く。
鏡の入っている箱からは、悲しそうな泣き声が響いていた。
寺では尼僧の帰りが遅くなり心配していたのだろう、尼僧達が出迎えてくれた。
「お帰りなさい。蓮様、町の様子はどうでしたか。」
「ただいま、皆さん。詳しい事は後で説明しますけれど、この後5体のご遺体が運ばれてくるので葬儀の準備をお願いします。」
尼僧達は驚いた顔になる。
「まあ、5体も。分かりました。すぐに準備します。」
尼僧達は葬儀の準備をする為に急いで走っていった。蓮は鏡を持ったまま自室に向かう。
「さてと、準備が整うまでの間、あなたのお話を聞かせてくださいね。」
自室に戻ると蓮は、鏡を机の上に置いて真剣な眼差しで見つめながら問う。
「私の名前は蓮と言います。ここは京から少し離れた村の尼寺ですよ。どうしてこのような事になったのか教えてください。」
鏡が震える。
「レンサマ、ワタクシ、シンダノ?」
鏡から弱弱しい小さな声が聞こえてきた。
「ええ、あなたは亡くなりました。あなたもあなたのご家族も、この尼寺で供養して埋葬します。」
「アリガトウ、ゴザイマス。」
お札がはられた鏡から、泣き声のような呻き声のような音が聞こえてくる。鏡はカタカタと音を立てて震えていた。暫くすると鏡も落ち着いたのか、震えが止まり静かになる。
鏡は小さな声で語り始める。
「チチウエ ツミニトワレ スベテ ナクシタ
ワタクシ コンヤクハキ ミンナデ ドグヲノンデ ジガイシタ
ワタクシ ノンダノニ ナゼカ イキテイテ」
その時の様子を思い出しているのか、鏡が凄い勢いで震えだした。鏡から黒い靄のようなものが出てきている。
「アノオトコガ ワライナガラ ヤッテキタ チチウエヲ ワナニカケテ ツミヲキセタ コンヤクハキ」
レンは宥めるように鏡を優しく撫でて、お札をもう一枚張る。途端に静かになった鏡が語り続ける。
「ユルセナイ ソレデ ノロオウトシタ アトハ オボエテナイ」
話を聞いて辛そうに顔を歪めている蓮。
「そうでしたか。まさか、わざわざ見に来るだなんてなんて人間なんでしょう。あなたの気持ちは分かりますが、呪いは駄目ですよ。呪いをかけた本人が苦しむ事になるだけですから。」
「ハイ」
「ご遺体が到着したようですね。今夜はここまでにしましょう。明日、鏡の呪いと今のあなたの状況について説明しますね。」
「ハイ」
「今日はこの箱の中で休んでいて下さい。」
蓮は鏡を赤い布でくるむと、木の箱に入れて部屋を出て行った。
外では尼僧達がご遺体を清めて葬儀を執り行う。村人達は話を聞いて弔問に訪れてくれていた。風に乗って蓮の部屋にもお経の声と線香の香、お悔やみを言う人々の言葉が届く。
鏡の入っている箱からは、悲しそうな泣き声が響いていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
☘ 累計ポイント/ 180万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる