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出会ってすぐ意気投合、勢いと乗りで探偵屋始める ①

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 東京のレストランの一室、、今日は某探偵ゲームの女性限定オフ会が開かれていた。
探偵ゲームのオフ会だけあって、参加者は探偵が大好きな女性だけ、初対面でも話題は尽きずに盛り上がっている。
 そんな中少し周囲とは違う話題で盛り上がっている3人のテーブルがあった。
彼女達はワインやカクテルを飲んで、気分良く酔っぱらっていながら話していた。
 最初は探偵ゲームや探偵小説の話で盛り上がっていた彼女達は、実際に探偵をやってみたいと話しだす。以外にも意見が一致した3人、意気投合して話し込んでいた。
 オフ会は解散になったが、気が合った3人はこのまま解散なんてつまらないという事で2次会へと向かう。居酒屋は煩いし、深夜もやっている喫茶店に向かった。

 静かな店内に入ると、改めてお互いの自己紹介が始まった。

 小柄で髪を編み込みにした、目つきは鋭いが全体的には優しそうな雰囲気の女性。彼女が最初に自己紹介を始める。
「佐々木 香です。都内で看護師をしていてます。個人病院勤務でシフト制の週4日出勤なんです。だからお休みは不定期になってます。
 好きな物は探偵ゲームや小説、ストレス解消と趣味を兼ねて、ボクシングダイエットをしています。よろしくお願いします。」

「じゃあ、次は私ね。鈴木 花 派遣事務員です。都内の叔父のマンションに住んでいるんだけど、手取りが安いので管理人業務をやる代わりに家賃他、ただにして貰っています。
 佐々木さんはボクシングでしたけど、私はダイエットと実益を兼ねて従兄のお姉さんに空手を習っています。よろしくお願いします。」
 ぱっちりとした目と童顔の顔に軽くパーマをかけたロングの髪、可愛らしい人だった。メイクも服も清楚系コンサバで統一されている。

 最後に、黒髪ショートカットでニットとジーンズというカジュアルな服を着た、優しそうな女性が話し出した。
「菊池 雪です。都内の実家で暮らしています。今は短期で仕事をしています、料理が好きで料理のブログをやっています。よろしくお願いします。」

 ゲームや小説の話は散々していた3人。落ち着いた雰囲気の喫茶店という事もあり、話は興味のあった実際に探偵をやる話になってくる。
 花が今の日本の探偵に対してのイメージを話している。
「でも、探偵なんて怪しいイメージしかないです。実際にホームズとかポワロみたいな人がいたらいいのに。そしたら探偵がもっと人気になると思うんです。」
「テレビや映画で探偵も人気になっていると思うけれど、現実となるとどうなんだろうね。
花さんは、海外の探偵が好きなんだ。私はちょっとお間抜けで偶然解決しちゃうような人が好きなんだ。探偵というより軽いエンタメのような空気がある話かな。」
「なるほど、私は花さんや雪さんみたいに特にこれって決まってなくて、なんか心にぐっとくるものが好きなんだー。でも現実で探偵が推理で事件を解決とかってなさそうだよね。あくまでイメージだけど、私も探偵って聞くと怪しいって思っちゃう。」

 皆、探偵怪しい発言をした後に、自分が良いと思う理想の探偵について話し出す。
「そういうの怪しいのじゃなくて。もっと気軽に相談できるような、身近な雰囲気の探偵事務所をやってみたいですね。あったら面白そうじゃないですか。町に溶け込んでいる探偵事務所。」
 嬉しそうに笑いながら話す花に頷きながら返事をする香。
「花さんが言ってるのって、猫を探すとか幽霊屋敷の探索とかそういう感じのものかな。そういうの楽しそうで良いよね。私、やってみたいな。」
「そう、それの事です、香さん。楽しそうですよね、町の中で色々事件を解決するっていう感じで。危険もないし喜ばれるし。普通にメインにするには厳しいだろうけど、副業とかだったらありかなって思います。」
「確かに面白そう。町の便利屋さん、というより相談所みたいな感じになりそうだね。でも住民のたまり場っぽくなりそうな気もする。」
「それはちょっと、依頼人が入れなくなりそうですね。」
「うん、人に聞かれたくないかもしれないもんね。探偵を頼む様な相談って大っぴらにするって事なくない。」
「ないですね。アパートやビルの部屋なら、周囲から隠れた雰囲気は出るけれど怪しいですよね。」
「そうね、変な怪しい依頼が来そう。ビルでも1階なら平気じゃない、明るくて開放的なら入りやすそう。」
 だんだん、話が現実味を帯びてきたことに気付く3人だが、盛り上がっている為止まらない。
「都内かあ、部屋を借りて開いても依頼が来ないと赤字になるよね。」
 だが家賃等のお金の話になると、皆の話しの勢いが止まった。

 雪と香がため息をついた時、花が解決策を投下する。
「都内から少し遠いけれど、叔父の使ってない店舗のような倉庫のようなものならあるんです。
 定期的に風通しをしに行かなきゃいけなくて面倒なんですよ。人に貸すにも借り手を調べたり、近隣住民と上手くやっていける人物かどうか人柄を見たりとか、気苦労ばっかり多くて面倒で貸してないんです。
 掃除をしたり管理ができるなら、叔父達も貸してくれるかもしれないですね。」

 うわー、と歓声を上げて一気に盛り上がる雪と香。
「まあ、叔父様が良いといって下さったら、探偵業始めちゃう? 庶民的探偵、依頼は猫探し等応相談。なんか、良いわね。楽しそう、猫と追っかけこしてついでに動画も撮って、流してお金儲けとか出来たらさらに最高じゃない。あ、人様の猫だから駄目か。」
 妄想を始める雪に対して、現実的な香。
「やるとしたら月何回開けられるのかを調整して、もし依頼が来たら何件受けるかあらかじめ決めておかないとね。最初は、断れないから多くても仕方ないけれど、成功率の高い依頼と近隣住民からの依頼を最優先。後、大事なのは探偵屋の方向性よ。浮気調査はドロドロしてそうだから嫌。やばそうな依頼もね。」
「ドロドロって、私もそれ系の嫌だって思ってた。」
 香と雪の話に同意して頷く花。なんだか初対面で意見がスパスパ一致するのが楽しくて3人で爆笑する。笑い終わると、真面目な顔で話を続ける雪。
「そうね、危険に巻き込まれたら大変だもの。やる時は近隣住民の方か皆の知り合いの依頼が良いと思う。それなら身元確認調査も楽そうじゃない。実名と住所は必要よね。」

 そうですね、今日はもう遅いから、明日にでも叔父に聞いてみます。
「女性だけの探偵事務所だと舐められるから、せめて部屋はシックな仕事場が強調された感じが良いと思うんです。」
「そうだね、でも出来るなら、奥に皆から見えない場所があるといいな。休憩スペースを作って人が来ない時はそこで3人で美味しい物を食べて探偵話をするのも楽しそう。」
「良いですね、それ。美味しいご飯やデザートを持ち寄っても良いし。素敵。依頼来なくてもそれだけでも良いです。」
「そうね、同じ趣味の者同士の集まりっていう感じでいいかもしれない。それならメインの仕事に負担を与える事も少なそう。依頼が来ても月に1回受けるとかの方が良いかも。」
「香さん、それいいですね。月に1度は集まって依頼は来なくても楽しく過ごす。商店街にも美味しいお店が沢山あるんですよ。」
 
「わあ、楽しみだわ。それじゃあ、花さんの叔父様が了承して下さったら、探偵業を始めるという事でいいのかな。」
 賛成と声を上げた雪と花。花がおじさんに会う約束を取り付けて、皆でお願いに行くことにした。

 全員、もう探偵業を始めるつもりになっている。ゲームでやったり小説を読んで、一度はやってみたかった探偵。皆わくわくしている。その日は、連絡先を交換して花の叔父と会う前に相談する日にちを決めると足取り軽く帰っていった。

 家に着いた雪は顔を綻ばせて嬉しそうだった。
「2人と話も合って、凄く楽しかったな。仕事の事言おうか迷ったけれど、次に会うかどうか分からない人達なんだしって思って、正直に話してよかった。
 人によって短期の仕事と言うと、とたんに態度が変わる人がいるもんね。まあ、色々な価値観があるから、そういう人とは会わなければすむ話なんだけどね。いちいちそんな事気にするような事でもないし。
 あの2人と、良い付き合いができるといいな。」
 香も家に着くと育てている花に水をかけながら話している。
「今日の集まり言って正解だったわ。久しぶりに笑いまくっちゃったし過ごしていて気持ちのいい人達だったな。雪さんはあまり仕事の話をしたくなさそうだから、そこには触れないように気を付けなくちゃ。
 花さんのおじ様が貸してくださると良いんだけれど。駄目でも月一回どこかでお茶会やりたいわね。」
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