妖精を隷属した国の末路

小梅カリカリ

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妖精国

【妖精国】不穏な動き

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 【シャイ】の首都には、ドロン国、人間国、竜国、虎国、狼国等各国の代表者が集まり会議を開いていた。月に一度各国の代表者達が集まる定例会議だ。

 人間国の代表レイラ・バンダが憤慨しながら話し出した。
「皆さん、先程入った情報によると最近オアシスを広げていた民が、妖精を怒らせて水没の刑になるところだったそうです。自分達のいるオアシスに雨を降らせて緑を広げてオアシスを大きくし領土の拡大を目論んだとか。
 子供の頃から学べる絵本に始まり演劇に歌、あらゆるところで披露してあの話を学ばせているはずなのに、いつになったら馬鹿が消えるのでしょうか。」
 ドロン国の体表マッキン・オウコが立ち上がる。
「残念ですが馬鹿は消えません。妖精自身が処理しているのなら彼らに関しては問題ないですね。その話も聞き取り調査をして絵本などに新たに書き加えましょう。
 丁度千年を過ぎた頃です、我々の中にも妖精達の事を軽く見る者が出始める頃でしょう。大きな事件が起きない様に皆で気を付けていかないといけないですね。今回の件が良い薬になるといいのですが。」

 マッキンの言葉に頷いた各国の代表者達。会議が終わり皆が帰りだすとレイラはマッキンに話しかけた。
「人間国は遠方の小さな島国を含めて、妖精達への対応に問題がないか調査兵を派遣する事にしました。ドロン国の近くにも人間国に所属する小さな王制の島国がありますよね。」
「ええ、海の魔物のせいで3カ月に一度しかドロン国に渡る事が出来ない小さな国です。海水で島の土地も痩せ細って作物も全然取れないと聞いたことがあります。薬を売って生計を立てているとか。
 人間国から調査兵を派遣するのは遠いので大変ですね。魔物が眠る日にちを確認してお知らせしますよ。」
 マッキンにお礼を言うとレイラは去っていった。

 妖精国では今日も穏やかな日常の風景が広がっている。自然豊かな妖精国、大きな森の中に沢山の家や畑がある。美しい花があちこちに咲いていて木には珍しい果物が実っている。
 泉の側で幼い妖精達が水魔法で動物を出して遊んでいた。誰の動物が一番本物に似ているか競い合う遊びが最近子供達の間で流行っている。水の次は土そして形を保つのが一番難しい火魔法で競争をする。

 妖精国で暮らすのは人間と同じ外見を持つ妖精と外見が人間で背中に小鳥の羽がある小鳥サイズの妖精バードの2種族だ。
 バードは妖精より魔力が少なく、細かい物を作製したり姿を消して遊んだりすることが好きな種族だ。傷や病気を治す治療魔法を使えるが、攻撃魔法の威力は弱い。【シャイ】の者達に狙われない様に妖精国の中で守られ外部には秘匿されていた。

 楽しそうな笑い声やはしゃぐ声が響く中、通りを歩いている中年の男性がいた。妖精王の弟クウオ・カルカッロは眉間にしわを寄せて不機嫌そうに歩いている。

 クウオは国王夫妻のいる王宮へとやってきた。
「おはようございます。兄上と姉上。今日はお2人にお話があってきました。」
 クウオが来たのを見て若干困ったような顔をしている妖精王クイン・カルカッロと王妃レイミー・カルカッロ。
「おはよう、クウオ。話というのは何かな。」
「いつまで、あの無能な人間と獣人に力を貸してやるのかと思いまして。我らの使う素晴らしい魔法のお礼があんな下品な歌と踊りに価値のない石と布だなんて馬鹿にしている。
 先日も欲深く妖精を使って自分達の土地を広げようとした愚か者が出たじゃありませんか。しかも我らの事を馬鹿にして笑い罵っていたと聞きました。」
「ああ、その話なら聞いているよ。きちんと水責めの刑にして心を入れ替えさせた、もう解決した事案だよな。別に、【シャイ】にいつも力を貸すわけじゃない、通りかかった妖精が気が向いた時に力を貸すだけだぞ。
 嵐の中にいる船に風の結界を張ったり、枯れ葉てた土地に大地の恵みを与えたり雨を降らせたり、その時だけ助けはするがその後は彼らの努力で復興している。」
「我らの力が欲しくて襲おうと企む奴らが出たらどうしますか。
 例えば大きな災害が起きます。彼らは我々に頼むでしょう。大きな災害を止めるのには多くの力が必要です。
 妖精が力を使っている時に隙を突かれて殴られて人質にでも取られたら、その妖精を助ける為に言いなりになりますか、それともその妖精の事は見捨てますか。」
「そんな事にならない様に、見張りをたてるし油断はしないよ。」
「王よ、私はなった場合の事を聞いています。」

 難しい顔をして黙る国王。それを見て鼻で笑うクウオ。
「都合が悪くなると黙り込む。まるで小さな子供ですね、それは王という立場では許されない事ですよ。」
 その状況を見て王妃が口を出した。
「その場合は、妖精を助ける為に人間達を人質に取ります。」
 王妃の返答に微笑むクウオ。
「それはそれは。良い案ですね。
 ですが、そもそも【シャイ】を助ける事が出来て我々にも危険が少ない良い方法があるじゃないですか。王妃の人質に取るっていう素晴らしい案に似ていますがね。」

 にっこりと微笑んだクウオ。
「管理すればいいんです。我々の力で恵みを与えた場所をいくつか作りその中で生活させる。
 危機管理については、馬鹿な事を考えないように監視すればいい、我々を利用しようとか危害を加えようだなんて口にした奴はすぐ処刑する。とても良い案だと思います。」
 顔を顰めている国王。王妃は悲しそうにクウオを見つめる。
「そうは思えないよ、クウオ。彼らは昔と変わり成長したんだ。
 確かに、彼らの中には強欲でどうしようもない者達もいる。前回の侵略戦争を起こしたような者達だな。あの時はまさにクウオの言うように【シャイ】は愚か者の国だった。
 【シャイ】の中でも一緒にいて楽しい者、尊敬できる者等もいるんだよ、ドロン国の体表マッキンとは友人になったし。クウオも彼らの事をもっと知るようになれば、きっと考え方も変わると思うんだ。
 それに幼い妖精が人間に利用されない様に、500歳になるまでは1人で外に出る事は禁止している。それまでの間に色々な人間を見せて教育している、妖精が油断して捕まえられるなんて事にならない様にね。
 彼らとの交流で大切なのはお礼の品々ではない。彼らと接する事で我々自身が成長し学ぶ機会を作る事が大切なんだ。
 技術や文化、新しい考え方に知識。妖精達だけだとどうしても考え方が偏ってしまうし、ずっと同じ状況じゃ国が発展していけないからね。」
 国王の言葉を聞いて首を傾げているクウオ。
「それなら、監視国家にしてしまっても出来るじゃないですか。」
 国王はため息をついた。
「時間ならまだまだある。いつの日かクウオにも分かって貰えたら嬉しく思う。」

 クウオは2人に退出の挨拶をして帰っていった。
「【シャイ】の者達から学べるだなんて、何を言っているんだか。兄上は昔から奴らに甘かった。
 分かってもらえないのなら仕方がない。残念だが兄上には王位を退いて頂こう。そして【シャイ】を属国する。
 そうだ、兄上の友人に兄夫婦達を隷属させる機会を与えたらどうするのか見てみよう。ふふふ、面白そうだな。早速準備をしなければ。」
 クウオは慌ただしく何処かへ向かっていった。
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