異世界行ったら人外と友達になった

小梅カリカリ

文字の大きさ
28 / 46

【ラト】の誘拐事件経過 突入作戦

しおりを挟む
 瑠璃達が去った後、エイミーとブルは上司に報告する。協議の結果、捕まえた誘拐犯になりすまし潜入捜査を行う事になった。

 エイミー達は信用できるメンバーを選抜して、偵察部隊、連絡部隊、実働部隊、人質救出部隊を選ばなければならない。
 皆で潜入させる人間に関して話し合う。被害者役はスラムの人間なら違和感なく潜り込める。スラムの顔役ナナシにスラムの人間で2名、信用出来る協力者がいないかどうか相談するエイミー達。
 暫く考えていたナナシは、両親が犯罪組織の探索をしていて殺された狐人の姉妹ニピとニナを推薦する。2人とも、犯罪組織を憎んでいるから裏切る心配はないだろうと。
 ナナシは潜入役の2人を目立たない様に連れてくると言うと部屋を出て行った。

 ナナシが戻る前に、今回の作戦に参加するメンバーを決めていく。
 誘拐犯役はブルの治安部隊から3名、偵察部隊はエイミーの竜騎士団からエルフと竜のペアを3組、連絡係をボーンファミリーから3名出し、実働部隊と救出部隊は合同部隊にした。拠点の場所や敵の人数等、偵察部隊からの報告が来てから人数を調整する事になった。
 誘拐犯から聞きだした取引場所等の情報共有、作戦の内容を決めて行く。各部隊のリーダー以外は別の場所で待機させいつでも動けるように待機していた。
「後は、ナナシさんが被害者役を連れてきてからかな。念の為実働と救出部隊も何名か待機させておくよ。」
 スプーの言葉に頷くエイミーとブル。

 待っていると、被害者役の少女達を連れたナナシが戻ってきた。狐人の姉妹ニピとニナだ。
互いに自己紹介をして、作戦の内容を話せるところだけ2人に説明するブル。2人から改めて出来るかどうか確認を取ると2人とも強い眼差しと力強い声で出来ますと答えた。
「よし、じゃあ2人ともよろしくお願いします。この子達につける魔道具は何にする、防御はいるよな。」

 ブルの言葉を聞いてナナシとスプーが呆れた様な顔で魔道具はつけられないという。エイミーは無言だった。
「相手も探査の魔道具を持っている可能性が高い。見つかる危険性が高く見つかれば拷問で情報収集され殺される事が分かっているのに魔道具なんてつけられないだろう。2人の危険が増し作戦失敗の確率が上がるだけだ。
 作戦が失敗したらどうやって被害者達を見つけて救出するんだ。」
「だが、こんな小さな子供達を守る物もつけずに危険の中に行かせるなんて。それにもし偵察部隊が見失ったら、彼女達を発見するのが難しくなって彼女達も売られてしまうかもしれない。」

 意見が対立し険悪な雰囲気になった時、エイミーはニピとニナに聞いてみる。
「意見が分かれているけれど、あなた達はどう思うの。私は作戦成功の為には付けられないという意見よ。危険は覚悟でここにきているんでしょうし、覚悟がないなら今のうちに止めた方が良いわ。
 危険にさらさない様に最善はつくすけれど、危険がないとは言えないの。」
 エイミーの話を聞いて頷く2人はブルを睨みつける。
「居場所を知らせる魔道具をつけても、敵が妨害できる魔道具を持っていたら意味がない。スラムの人間が持てるはずのない魔道具を持っていて見つかったら、その場で私達を殺して拠点に行かずに逃げてしまうわ。そもそも、身体検査をしないなんてありえないのに、何故魔道具を付けられると思うの。
 潜入なんて危険なのは分かったうえで参加しているし、参加させているんでしょ。あなたの仕事は作戦を成功させる為に最善を尽くす事よ。
 私達を囮にする事に対する自分の罪悪感を減らしたいだけのように見えるわ。私達を見殺しにしなければならなくなった時、魔道具を付けた出来る限りの事をしたって自分を守りたいんじゃない。非情な決断をする時に自分のせいじゃない仕方がなかったんだって、逃げたいだけみたい。
 私達の命を囮にするくせに。上に立つなら全てを背負う覚悟をしなよ。他の3人みたいに。
 ついでに言うと、魔道具は付けないって私達に言わせようとするのは卑怯よ。だって魔道具はつけないこれ以外ないでしょ。」

 ニピとニナの話が終わり、ブルは黙って俯いた。
「そうだな、すまなかった。」
 ブルを見ていたスプー。2人に向かって話し出す。
「そうだよな、じゃあ魔道具はなしで。竜がいるけど風魔法で音を拾えない事も考えて、盗賊達の移動が終わるまで3か所にわかれて追跡しよう。
 ニピとニナは一番危険な任務だ。危うくなったら逃げてしまって構わないからな。自分達の安全を第一に考えてくれ。敵から逃げる時は仲間がいる所に目印があるからそこに向かって逃げるんだ。
 分かったな。くれぐれも気を付けろよ。後作戦に協力してくれてありがとう。」
 スプーの言葉の後、エイミー達全員作戦協力への感謝を伝えた。

 詳しい打ち合わせをする為に、ニピとニナは犯人役と一緒に出て行った。ナナシも出来ることはもう無いから、不信を抱かれない様にいつも通りスラムにいるといい出て行く。
 ナナシにお礼を言ったスプーとエイミーは落ち込んで俯いていたブルの背中を思い切り叩き、気合を入れ作戦を進めていく。
「こういうのは時間との戦いなんだから、いつまでもウジウジしてないでシャキッとしろよ。さっさと立って部下達に命令しに行け。」
「ニピとニナには悪い事をしたと思う。でもウジウジしてるんじゃなくて、スプーの一撃が強烈だったんだよ。肉は骨より柔らかいんだよ。」
 ぶつぶつ言いながらも立ち上がり出て行くブル。首をかしげて自分の手を見るスプー。
「結構力は入れたけど、そこまで痛くないだろ。あいつ最近鈍ってるんじゃないか。」
 微妙な顔のエイミーと一緒にスプーも部下へ指示を出しにいった。

 ニピとニナを袋に入れ、街の外にある取引場所へと向かう犯人役のネル、ケイ、アオ。勿論偽名で、潜入や諜報を得意とする治安維持部隊の裏隊員達だ。同じ隊員達にも身分を隠されて完全に別組織として成り立っている。
 街を出て歩きながら犯人役として演技している3人。
「これって、いくら貰えるんだろ。終わったら一杯やるだろ。」
「ああ、今回の金で3人で家でも買えるといいな。あと何回かやったら結構たまるんじゃないか。今回誰にも見られなかったしな。またやれるぜ。」
「あれじゃないか、誰かいるぞ。」

 木の下に荷車を持った男が1人立っている。
「遅かったな。これ以上遅れたら帰ろうかと思ったよ。」
「見つからない様に出てきてるんだから、遅いのは当たり前だろ。ばれて捕まるのはこっちなんだから文句を言うなよ。こっちは捕まったら終わりなんだから。」
「ああ、せめてるわけじゃないんだよ。悪かったな。荷物を確認させてくれ。」
「狐人の女二人か。なかなかいいな。報酬だ。」
「おお、結構いい値段だな。これなら、また何かあったら声かけてくれよ。」
「そうだな、【ラト】でばれた時の事を考えて、【ロウキ】でも商売を始めたいんだが、誰か良い奴を知らないか、人間が良いんだよ。
 勿論そいつが成功したら紹介料は出すさ。紹介した人間の成功報酬とは別に紹介料を払うよ。」
 嬉しそうにニヤニヤ笑う3人。とても悪い笑顔だ。
「何人か良さそうな奴がいる。人間でも似た者同士仲がいいからな。奴らに聞いてみるか。」
「いや、俺も一緒の時に話したいからまだ話さないでくれ。決まったら連絡する。」
「わかった、俺たち居場所は決まってないがスラム街にいるから見つけてくれよ。」
「ああ、分かった。スラム街や住民にも情報を売ってくれる友人がいるからな。」
 そう言うと、男はニピとニナを乗せて去っていった。

 犯人役もそのまま街に戻り、食堂で豪快にお酒を楽しみむ。その辺の人間にもお酒を奢りつつ、男の言った情報源の事をさり気なくばれないように探りを入れていた。

 ニピとニナを連れた男は、尾行に気付いている様子はなく進んでいく。
暫く行くと立ち止まり、周囲に何もない所で地面を3回蹴った。すると、地面が開き中から男が出てくる。ニピとニナを袋から出し、2人は話し出した。
「連れて来る時、異常はなかったか。」
「ああ、魔道具や魔法を探知する魔道具も異常を示さなかった。今回のやつらは結構いい腕だよ。【ロウキ】に人間の友人がいるらしい。」
「そうか、【ラト】の情報屋にそいつらの事を調べさせて、問題がなければ【ロウキ】の友人も紹介させよう。明後日には皆纏めて出荷出来る。」
「じゃ明後日、護衛達と一緒に迎えに行く。今回ボスも行くってさ。」
「了解。じゃ明後日、何時もの時間にいつもの場所で。」
 そう言うと男はニピとニナを地面の開いた所にいれ自分も入っていく。

 もう一人の男は荷車を引いてどこかへ移動している。偵察班1組はその場に残り、偵察班2組と連絡係は男の追跡を始めた。男は1軒の農家にたどり着く。荷車を置くと家に入っていった。
 偵察班はそのまま残り交代で見張りを始め、連絡係がスプー達に知らせにいった。

 報告を聞いたスプー。
「そうか、ご苦労。引き続き監視を頼むと伝えてくれ、踏み込む前には連絡する。
後、ニピとニナの偵察班だが、明日誰か追加で送ると伝えておいてくれ。交代させないといけないしな。」
 連絡係が去っていくと、3人ともため息をついた。
「【ラト】の中に情報屋がいるとはな。スラムはともかく住民もか。」
「地面の下に潜伏場所を作るとは、秘密裏に地下の様子を確認させないと。まさにモグラ叩きですよ。
 農家も盲点でした。村という程大きくもないし、確か気の良い老夫婦がのんびり暮らしていたはずです。あの夫婦が犯罪集団のボスなのか、脅されているのか最悪殺されたか、確認しないと。」
「救出と拠点への襲撃は、明後日の取引の所を抑えるのと同時にやりたいな。それまでは偵察と突撃の準備に備えよう。エイミーは偵察の交代の方任せたぞ。」
「はい、じゃ街の地下捜索はブルさんですね。見回りのついでに街で探せますからね。
 襲撃は取引場所と農家と地下の潜伏場所で一斉に突入ですね。出来るだけ目立たない様に捕まえて、【ラト】内の情報屋も知りたいです。」
「そうだな、隠密に優れている治安部隊の裏組織に一任できるか、ブル聞いてみてくれ。俺達は後方支援のほうが良さそうだ。目立つだろ、エルフ竜騎士団と骸骨集団。
 後は、救出した被害者を一時保護できる隠れ家と食事や服を用意できる。」

 ブルはどこかに連絡すると、頷いて二人に言う。
「大丈夫です。救出と襲撃のメインは彼らに任せられます。
 我々は突入で逃げた奴の処理をします。竜騎士団は襲撃までの偵察と連絡をお願いします。被害者は救出して聴取後はボーンファミリーに任せます。」
「よし、後は準備して、明後日に備えよう。それまではいつも通りに見えるように各自注意して行動してくれ。」
 そう言うと解散して部下達への説明に向かっていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...