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45話 お試し期間4
しおりを挟む「芽依、そっち行ったぞ!」
「分かった!」
俺たちの姿は九層にあった。正直、俺の反転、芽依の心眼、身体能力の前に、敵などいなかったからだ。さくさくと攻略は進み、気づけば、九層まで探索は進んでいた。
途中まで、お互いに獲物を譲り合う形で戦闘をしていたが、それだとパーティーの練習にはならない事に気づき、2人で戦う事にした。
そこでも、能力を使うとあっという間に敵を倒してしまうため、俺は反転、殺さずの剣の使用を禁止し、芽依は、大剣の使用を禁止し、素手で相手を狩るという制限を受けて戦っている。
芽依のスキルを禁止にしていないのは、心眼と身体強化は、どちらとも常時発動型の為、使わないと言う選択肢がとれないからだ。
そのため、せめてもの抵抗として、大剣を使わせないようにした。、、、大剣を使わずとも、芽依は十分以上に強かったが。
制限をつけても、戦闘で苦戦する事はなかったが、六層以降になると、敵の数は多くなっていき、ウルフが7体出てきた今、俺が撃ち漏らした敵が芽依に行ってしまった。
パァン!
(、、、)
芽依にとって、後ろから来た敵も、特に問題はないらしい。
「お疲れ」
「翔もお疲れ」
「魔物の数が多くなっても問題はないな」
「うん、楽勝」
「だな。さっさと九層も攻略するか」
「賛成」
ウルフの魔石を拾い終えた俺達は、先へと進む。ここまでの道のりで、ゴブリンアーチャーからはアーチャーの弓、ウルフからはウルフの牙が2本手に入った。
その後も、ゴブリン、ホブゴブリン、アーチャーゴブリン、メイジゴブリン、ウルフを倒しつつ、10層へと続く階段を探す。と、あるものが見つかった。
「ねぇ翔!」
「なんだ?」
「ほら見て!宝箱!」
芽依が指差す方向には宝箱があった。
「おっ本当だ!」
俺と芽依は、他の人に取られないよう、素早く宝箱に近づいた。
「どっちが開ける?」
「芽依が見つけたんだし、芽依が開けていいぞ」
「ほんと?ありがとう。じゃあ遠慮なく開けるね」
芽依は目の前の宝箱を開ける。そして、中にあるものを覗くと、そこには、1つの指輪があった。
「おっ、指輪か!!当たりだな!」
「本当だ!しかも俊敏さの指輪だって!」
「ん?なんで分かるんだ?」
俺は芽依に聞く、すると芽依は笑いながら答えてくれた。
「私のスキル、心眼だよ?人のステータスが分かるなら、物のステータスも分かるよ?」
そこまで言われて、それもそうかと納得した。
「あーそうか、まだ人や物のステータスを見るのは、鑑定のスキルという考えが抜けねぇーな。それにしても俊敏さの指輪か、芽依が着けろよ」
「いいの?これって凄く高いよ?」
芽依が申し訳なさそうに俺のことを見てくる。
「気にすんなよ。今はまだ150万のものを買おうとはしないが、出たなら身につけたほうがいい。それこそ安全は金で買えねーしな。使えるもんは使うべきだ」
「そっか、ありがとう翔」
恥ずかしそうにお礼を言ってきた芽依に、何かを感じそうになったが、相手は高校生だと考えることで、事なきを得た。
「気にすんな。確か、俊敏さの指輪って、AGI+15だったから、芽依がつけると+45になるな。えっ、それって何てチートだ?」
「翔ひどい。翔だって反転っていうチート持っているのに、私だけみたいな言い方する」
芽依は少し怒るような表情をする。
「ごめんごめん、悪気はなかったからさ」
「しょーがないな。今回は許してあげる」
(よかった。女の子の怒るポイントは難しいな)
「ありがとう、それにしても、俊敏の指輪をつけただけで、大幅に戦力の増加だな」
「うん、それは嬉しい」
「よし、戦力も強化されたし、さくっと十層のフロアボスを狩ろうぜ」
「うん、フロアボス楽しみ!」
その後、3戦ほど魔物を倒した所で、10層へと繋がる階段を見つけた。
「芽依、心の準備はいいか?」
「問題ない。いつでもいける」
「よし、なら行くか」
俺と芽依は、10層へと繋がる階段を降りていく。
「よし、10層へと到着」
俺は辺りを見渡す。基本的な構造は、うちにあるダンジョンと何ら変わりはない。うちのダンジョンと町田ダンジョンの10層で違う点を挙げるとするなら、人の有無だ。
うちのダンジョンを潜るのは、俺だけしかいないため、フロアボスへはフリーパスで通れた。しかし、町田ダンジョンは多くの人がダンジョンに潜っているため、ざっと見ただけでも、20組ほどのパーティーがフロアボスへの挑戦を待っているのが分かった。
「そうだった、人の多さを忘れてた」
「?これが当たり前じゃないの?それに翔なら分かっていると思ってた」
俺の呟いた声を芽依が拾い、突っ込まれた。
「つい忘れてたわ。まぁ待つか」
俺達は、ダンジョンボスの間は入るための扉の前に行き、扉に芽依と共に手を触れる。すると、扉が弱くだが光る。これで登録完了だ。
うちのダンジョンでは使うことのなかった機能のため、気にしていなかったが、このようにパーティーが待っているダンジョンでは、フロアボスの間の順番待ちをするために、〝登録〟をしないといけない。
先ほどのように登録をすれば、自分の番になると自分のいる床や壁が光り、自分の番だと教えてくれる。とても便利な機能だ。
そして、他の人が入ろうとすると、不可視の壁によって入る事はできない。これは、他の人に並ぶのを任せ、その人の代わりにフロアボスに挑んだり、一緒にフロアボスに挑むこともできない。一緒に登録したものだけが入ることができる様になっている。
また登録したパーティーが、一定時間フロアボスに挑まなかった場合は、次のパーティーに挑戦権は移る。これで、他のパーティーの足止めをする事もできないということだ。
「登録もしたし、空いている所で休むか」
「うん」
登録をした俺達は、空いている場所を探し、座って休む事にした。俺達が空いている場所を探そうと、扉から離れた瞬間、声をかけられた。
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