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プロローグ 03
アリスティードとの話し合いが終わり、私室に戻ると、ネージュはエリックやミシェルから質問責めにあった。
「あの男……何も知らない癖にネージュ様になんて事を……」
聞かれるがままにアリスティードとの会話の内容を伝えると、ミシェルは怒りをあらわにした。
「いくら顔がマルセル様にそっくりでも許せません! 年長者に対する敬意もないし!」
現在二十歳のアリスティードとネージュは四歳離れている。
だが、ネージュには彼の方が立場が上という意識があるから、尊大な物言いは特に気にならなかった。
「いいのよ、ミシェル。何も知らない人から見たら、私が侯爵家を好き勝手にしているように見えるのを忘れていたわ」
ネージュはミシェルに向かって首を振った。
「ネージュ様はダニエルの犠牲者なのに……! 私、抗議してきます!」
ダニエルの名にネージュは顔を曇らせた。
彼と過ごした時間はネージュにとって何よりも忌まわしい記憶になっている。それを掘り起こされたせいだ。
ミシェルははっとネージュの様子に気付くと、即座に謝罪してきた。
「申し訳ありません、私……」
「大丈夫よ。あの方はもうこの世にはいないもの」
ネージュは首を振る。
「噂はしょせん噂で、ネージュ様はそのような方ではないとお伝えしたのですが……。聞く耳を持って下さらなくて……申し訳ありません。私の力不足です」
肩を落としてそう告げたのは、アリスティードを迎えに行った顧問弁護士のナゼールだ。
三十代前半の彼は、弁護士としてはまだ若手だが、父親の代からの付き合いなので、ネージュの過去を知っている。
「どうもアリスティード様は、陰ながら資金援助して下さったマルセル様への恩義から、侯爵家を自分が救い出さねば、と思い込んでいらっしゃるようでして……」
「見当違いもいい所ですね」
ナゼールの説明に、ミシェルは呆れかえった表情をした。
「晩年の旦那様を支えられたのはネージュ様なのに……」
「献身と言えるほどの事はしていないわ」
ネージュはふるふると首を振った。確かにマルセルの看病と領主業を手伝ったけれど、それよりも彼から貰ったものの方がずっと尊くて大きい。
孤児だったネージュを養女として引き取ったダニエルは、思い出すのもおぞましい、歪んだ性癖の持ち主だった。
そこで虐待を受けていたネージュを救い出してくれたのがマルセルである。
彼は当主として弟を糾弾すると、屋敷の一室に監禁し、外部との一切の接触を禁じた。
それが堪えたのか、ほどなくしてダニエルは自殺した。
ネージュには何も教えてくれなかったが、マルセルが何かした可能性もあるのではないかと考えている。
ダニエルは、明るみになったら侯爵家を揺るがしかねない、酷い犯罪行為を行っていた。
また、マルセルは慈悲深く、ネージュを侯爵家の籍から抜かず、そのまま姪として扱ってくれた。
死の間際にマルセルは、天涯孤独のネージュを再び孤児院に戻すのは忍びなかったのと、一緒に暮らせなかった孫のアリスティードを重ねていたと教えてくれた。
レーネ侯爵領内の孤児院はマルセルが目を光らせていたからそう悪い環境ではなかったけれど、孤児は基本的に立場が弱い。特に見た目の良い子供は、悪い大人に食い物にされる確率が高かった。
だからマルセルが憐れんでくれたのは、ネージュにとって非常に幸運だったのである。
「……困りましたね。この侯爵家は、正直に申し上げますとネージュ様が急にいなくなられては立ち行きません」
それまで沈黙していたエリックのつぶやきに、ネージュはマルセルとの思い出から引き戻された。
「過大評価よ。皆が協力してアリスティード様を盛り立てればどうとでもなるでしょう」
「そう簡単ではありません! 結婚式は一か月後ですよ!」
アリスティードが屋敷にやって来たのは、式の最終的な準備のためだ。今日から彼はここに住まいを移し、侯爵家の後継者としての生活を始める事になっている。
アリスティードは中等教育を修了した後、陸軍に入隊しており軍役に就いていた。
この時期になったのは、軍を退役するのに手間取ったからだと聞いている。また、そのため、ネージュとの顔合わせも今日になってしまったのだ。
「条件面は詰められたのですか? まさか婚儀が終わった途端、身一つでネージュ様を追い出すつもりなのでは……」
「さすがにそれはないでしょう。恋人をすぐに引き入れるのはともかく、新妻を何も持たせず放り出すなんて外聞が悪すぎます。離婚は出来ないんですよ!」
エリックとミシェルの発言に、ネージュは具体的な条件を一切聞いていなかった事を思い出した。
このフラヴィア王国では、宗教的に離婚するのはかなり難しい。
「そう言えば、どのような状態でここを出て行けばいいのか、お聞きするのを忘れていたわ。私、動揺していたのかしら……」
ネージュがつぶやくと、エリックの表情が変わった。
「すぐにアリスティード様の所に行って参ります。少しでもまともな条件を引き出して参りますのでお待ちください!」
「私も同行しましょう」
エリックとナゼールは、口々に告げると慌ただしく出て行った。
「私は、イレーヌ夫人の所に行って参ります」
ミシェルは、屋敷内の女性使用人を取りまとめる家政婦長の名前を告げた。
この屋敷では、エリックが男性使用人を、イレーヌ夫人が女性使用人を統括している。
一人取り残されたネージュは、お気に入りのロッキングチェアに移動すると、背もたれに深くもたれかかった。
嫌が応にも頭の中に浮かぶのは、アリスティードの姿である。
(爵位と財産の為とはいえ、私との婚約は恋人がいたのでは、お嫌だったでしょうね)
しかも相手は評判が極めて悪いネージュだ。
上流階級の人々には人に言えない性癖を、秘密クラブで満たす人が案外多い。
ダニエルが、幼い少女に対して普通ではない趣味を持っていた事は、大っぴらにはなっていないが、似たような趣味を持つ紳士達には密かに知られている。
そこで何かされていたらしい女児が、その後マルセルに引き取られて大切に育てられた姿が彼らにどう見えるのか――。
ネージュの悪評は、あながち根拠の無い噂という訳でもなかった。
(アリスティード様が婚約を受けられたのは、この家を守るため……)
ナゼールの発言を反芻する。
それ自体は喜ばしい。ネージュがアリスティードとの婚約を承知したのは、彼に爵位と資産を譲り渡し、一緒に家を守っていくためだ。
アリスティードが嫌がっている以上、一緒にという夢は潰えた。
しかし、彼が恋人とこの家を盛り立てていくのならネージュに否やはない。
また、ネージュが見た予知夢は、きっとその様子だったに違いない。
戒律上離婚はできないから、恋人が愛人扱いになるのは心苦しい。
しかし、二人の間に子供が生まれたら、ネージュの子供として処理して、こちらは飾り物に徹すればいい。
(最低限の財産分与だけして頂いて、別邸か別荘に移されるのが妥当なところかしら?)
貴族の結婚はほぼ政略だ。契約だけの仮面夫婦も、最低限の義務だけ果たした後別居する夫婦も珍しくない。ネージュもそうなるだけだ。
本当は、アリスティードと相思相愛の夫婦になるのが理想だったけれど、孤児の自分がマルセルに慈しまれただけでも分不相応だったのだ。これ以上を望んだらきっと天罰が下る。
(それに、私の体をご覧になった時に嫌がられる可能性もあったわ……)
そうだ。どうして忘れていたのだろう。孤児というだけでなく自分は傷物だ。
ネージュはそっと自分の腹部に手を当てた。
アリスティードはネージュを悪女だと思い込んでいるが、誤解を解く必要もないだろう。自分が悪者として存在したほうが、きっと恋人との仲はうまくいく。
(静かに暮らせるようになったら、マルセル様の事だけを考えて生きていけるわ)
もし、何も持たされず身一つで放り出されても構わない。
(その時は、この家に迷惑がかからないように、偽名で修道院に駆け込めばいいわ)
彼が亡くなった時は後追いも考えたのだ。祈りと想い出に耽る生活ができるのなら、それはそれで悪くない気がした。
「あの男……何も知らない癖にネージュ様になんて事を……」
聞かれるがままにアリスティードとの会話の内容を伝えると、ミシェルは怒りをあらわにした。
「いくら顔がマルセル様にそっくりでも許せません! 年長者に対する敬意もないし!」
現在二十歳のアリスティードとネージュは四歳離れている。
だが、ネージュには彼の方が立場が上という意識があるから、尊大な物言いは特に気にならなかった。
「いいのよ、ミシェル。何も知らない人から見たら、私が侯爵家を好き勝手にしているように見えるのを忘れていたわ」
ネージュはミシェルに向かって首を振った。
「ネージュ様はダニエルの犠牲者なのに……! 私、抗議してきます!」
ダニエルの名にネージュは顔を曇らせた。
彼と過ごした時間はネージュにとって何よりも忌まわしい記憶になっている。それを掘り起こされたせいだ。
ミシェルははっとネージュの様子に気付くと、即座に謝罪してきた。
「申し訳ありません、私……」
「大丈夫よ。あの方はもうこの世にはいないもの」
ネージュは首を振る。
「噂はしょせん噂で、ネージュ様はそのような方ではないとお伝えしたのですが……。聞く耳を持って下さらなくて……申し訳ありません。私の力不足です」
肩を落としてそう告げたのは、アリスティードを迎えに行った顧問弁護士のナゼールだ。
三十代前半の彼は、弁護士としてはまだ若手だが、父親の代からの付き合いなので、ネージュの過去を知っている。
「どうもアリスティード様は、陰ながら資金援助して下さったマルセル様への恩義から、侯爵家を自分が救い出さねば、と思い込んでいらっしゃるようでして……」
「見当違いもいい所ですね」
ナゼールの説明に、ミシェルは呆れかえった表情をした。
「晩年の旦那様を支えられたのはネージュ様なのに……」
「献身と言えるほどの事はしていないわ」
ネージュはふるふると首を振った。確かにマルセルの看病と領主業を手伝ったけれど、それよりも彼から貰ったものの方がずっと尊くて大きい。
孤児だったネージュを養女として引き取ったダニエルは、思い出すのもおぞましい、歪んだ性癖の持ち主だった。
そこで虐待を受けていたネージュを救い出してくれたのがマルセルである。
彼は当主として弟を糾弾すると、屋敷の一室に監禁し、外部との一切の接触を禁じた。
それが堪えたのか、ほどなくしてダニエルは自殺した。
ネージュには何も教えてくれなかったが、マルセルが何かした可能性もあるのではないかと考えている。
ダニエルは、明るみになったら侯爵家を揺るがしかねない、酷い犯罪行為を行っていた。
また、マルセルは慈悲深く、ネージュを侯爵家の籍から抜かず、そのまま姪として扱ってくれた。
死の間際にマルセルは、天涯孤独のネージュを再び孤児院に戻すのは忍びなかったのと、一緒に暮らせなかった孫のアリスティードを重ねていたと教えてくれた。
レーネ侯爵領内の孤児院はマルセルが目を光らせていたからそう悪い環境ではなかったけれど、孤児は基本的に立場が弱い。特に見た目の良い子供は、悪い大人に食い物にされる確率が高かった。
だからマルセルが憐れんでくれたのは、ネージュにとって非常に幸運だったのである。
「……困りましたね。この侯爵家は、正直に申し上げますとネージュ様が急にいなくなられては立ち行きません」
それまで沈黙していたエリックのつぶやきに、ネージュはマルセルとの思い出から引き戻された。
「過大評価よ。皆が協力してアリスティード様を盛り立てればどうとでもなるでしょう」
「そう簡単ではありません! 結婚式は一か月後ですよ!」
アリスティードが屋敷にやって来たのは、式の最終的な準備のためだ。今日から彼はここに住まいを移し、侯爵家の後継者としての生活を始める事になっている。
アリスティードは中等教育を修了した後、陸軍に入隊しており軍役に就いていた。
この時期になったのは、軍を退役するのに手間取ったからだと聞いている。また、そのため、ネージュとの顔合わせも今日になってしまったのだ。
「条件面は詰められたのですか? まさか婚儀が終わった途端、身一つでネージュ様を追い出すつもりなのでは……」
「さすがにそれはないでしょう。恋人をすぐに引き入れるのはともかく、新妻を何も持たせず放り出すなんて外聞が悪すぎます。離婚は出来ないんですよ!」
エリックとミシェルの発言に、ネージュは具体的な条件を一切聞いていなかった事を思い出した。
このフラヴィア王国では、宗教的に離婚するのはかなり難しい。
「そう言えば、どのような状態でここを出て行けばいいのか、お聞きするのを忘れていたわ。私、動揺していたのかしら……」
ネージュがつぶやくと、エリックの表情が変わった。
「すぐにアリスティード様の所に行って参ります。少しでもまともな条件を引き出して参りますのでお待ちください!」
「私も同行しましょう」
エリックとナゼールは、口々に告げると慌ただしく出て行った。
「私は、イレーヌ夫人の所に行って参ります」
ミシェルは、屋敷内の女性使用人を取りまとめる家政婦長の名前を告げた。
この屋敷では、エリックが男性使用人を、イレーヌ夫人が女性使用人を統括している。
一人取り残されたネージュは、お気に入りのロッキングチェアに移動すると、背もたれに深くもたれかかった。
嫌が応にも頭の中に浮かぶのは、アリスティードの姿である。
(爵位と財産の為とはいえ、私との婚約は恋人がいたのでは、お嫌だったでしょうね)
しかも相手は評判が極めて悪いネージュだ。
上流階級の人々には人に言えない性癖を、秘密クラブで満たす人が案外多い。
ダニエルが、幼い少女に対して普通ではない趣味を持っていた事は、大っぴらにはなっていないが、似たような趣味を持つ紳士達には密かに知られている。
そこで何かされていたらしい女児が、その後マルセルに引き取られて大切に育てられた姿が彼らにどう見えるのか――。
ネージュの悪評は、あながち根拠の無い噂という訳でもなかった。
(アリスティード様が婚約を受けられたのは、この家を守るため……)
ナゼールの発言を反芻する。
それ自体は喜ばしい。ネージュがアリスティードとの婚約を承知したのは、彼に爵位と資産を譲り渡し、一緒に家を守っていくためだ。
アリスティードが嫌がっている以上、一緒にという夢は潰えた。
しかし、彼が恋人とこの家を盛り立てていくのならネージュに否やはない。
また、ネージュが見た予知夢は、きっとその様子だったに違いない。
戒律上離婚はできないから、恋人が愛人扱いになるのは心苦しい。
しかし、二人の間に子供が生まれたら、ネージュの子供として処理して、こちらは飾り物に徹すればいい。
(最低限の財産分与だけして頂いて、別邸か別荘に移されるのが妥当なところかしら?)
貴族の結婚はほぼ政略だ。契約だけの仮面夫婦も、最低限の義務だけ果たした後別居する夫婦も珍しくない。ネージュもそうなるだけだ。
本当は、アリスティードと相思相愛の夫婦になるのが理想だったけれど、孤児の自分がマルセルに慈しまれただけでも分不相応だったのだ。これ以上を望んだらきっと天罰が下る。
(それに、私の体をご覧になった時に嫌がられる可能性もあったわ……)
そうだ。どうして忘れていたのだろう。孤児というだけでなく自分は傷物だ。
ネージュはそっと自分の腹部に手を当てた。
アリスティードはネージュを悪女だと思い込んでいるが、誤解を解く必要もないだろう。自分が悪者として存在したほうが、きっと恋人との仲はうまくいく。
(静かに暮らせるようになったら、マルセル様の事だけを考えて生きていけるわ)
もし、何も持たされず身一つで放り出されても構わない。
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