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祭礼のあと 02
「お帰りなさいませ、アリス様」
神殿から屋敷に戻ってきたアリスティードは、玄関ホールで使用人と一緒に待機していたネージュの姿に目を見張った。
晩餐まで付き合わされて正直へとへとだったが、彼女の姿を見るだけで疲れが吹き飛ぶ。
「出迎えてくださってありがとうございます。体調は大丈夫ですか……?」
男のアリスティードには、初めての女性が体に受ける負担は想像もできない。不安になって尋ねるとネージュは「はい」と返事をした。
「アリス様こそ大丈夫ですか? あまり眠っていらっしゃらないですよね……?」
「俺は平気です。体力には自信があるので」
「それでもお疲れですよね? 入浴の準備をさせておりますので、ゆっくりなさって下さい」
「はい、ありがとうございます」
アリスティードは脱いだ上着を使用人に預けながら、ネージュをまじまじと見つめた。
つい十数時間前に彼女と体を重ねたのだ。まだ実感できない自分がいる。
じっと見つめていると、ネージュの頬がほんのり赤く染まった。彼女もまた意識してくれているのだろうか。
「あの……私は寝室でお待ちしておりますので、もしよろしければいらして下さい」
小声で囁くと、ネージュはこちらが何かを返す前に、一礼して去って行った。
◆ ◆ ◆
ネージュの言う『寝室』とは、夫婦の寝室のことだろう。
本当の夫婦になったのだから、今日から寝室を一緒にするというのはある意味自然だ。
侯爵家の使用人は教育が行き届いているので、こちらを茶化すような発言をする者はいなかったものの、どこか生温い視線を向けられ、アリスティードはいたたまれない気分になった。
だが、寝室を共にと誘われたのは純粋に嬉しい。
またこの腕の中に彼女を抱いて眠れるのだ。
はやる気持ちを抑えながら体を清め、夫婦の寝室に向かうと、既にベッドの中ではネージュが待機していた。
その姿にアリスティードは固まる。襟ぐりが大きく開いた扇情的なデザインのものを身に着けていたからだ。
「お疲れ様です、アリス様。今日もその……、なさいますか……?」
「……いや、今日はそんなつもりは……。俺も睡眠不足ですし……」
そこまで飢えているように見えたのだろうか。
「俺がここに来たのは、ネージュと一緒に過ごしたいからです。その……、軽く触れ合うくらいはしたいなと思いますけど……」
「そうなんですか……? 男性はそういう事がお好きだから私てっきり……」
恥ずかしげにさりげなく胸元を隠すネージュの姿は、相変わらず性質が悪かった。
◆ ◆ ◆
気が付いたらネージュは白黒の空間にいた。
周囲の景色に色がついていないという事は、どうやら自分は夢を見ているらしい。
目の前には、豪奢なドレスに身を包んだ子供の頃の自分とダニエルが並んでいる。
(どうして……)
ネージュは身を震わせた。
なぜまたこんな過去の夢を見ているのだろう。
目の前にいる小さなネージュは、ダニエルに『人形遊び』を強いられている。
ネージュは、いまだに恐怖を覚える自分に気付き、唇を噛んだ。
「消えて!」
ネージュはダニエルに向かって叫んだ。
自分はマルセルのお陰で立ち直ったはずだ。過去の幻影に今更苦しめられたくなかった。
しかし――。
突如首筋に生暖かい空気を感じてネージュはビクリと身を竦ませた。
振り向くと、ナゼールがいて、ネージュは抱きすくめられていた。
「ネージュ様……」
熱に浮かされた瞳が至近距離にあり、ネージュは悲鳴を上げながらもがいた。
(どうして……)
なぜこんな悪夢を見なければいけないのだろう。
気持ち悪さと恐怖に涙が滲む。
ナゼールの痕跡は、アリスティードに優しく触れて貰い、完全に消し去ったはずだ。だから余計に許せなかった。
「ネージュ!」
別の男性の声が聞こえ、肩が掴まれた。
(今度は何……?)
「ネージュ、大丈夫ですか!?」
強く揺さぶられ、大きく目を開けたネージュの視界に入ってきたのは、アリスティードの顔だった。
ストロベリーブロンドに深緑の瞳。
目の前のアリスティードには色がついていて、ネージュは夢から醒めたのだと確信して安堵した。
周囲は暗かったけれど、ベッドの傍に置かれたランプの光が間接照明として室内を照らし出していた。
一瞬見覚えがない部屋……と、戸惑うが、今日から夫婦の寝室を使う事にしたのを思い出す。
「あまりにもうなされていたので……すみません、どうかとは思ったんですが起こしました」
アリスティードが声を掛けてきた。悪夢から逃げられたのは彼のおかげだったらしい。
「いえ、とても嫌な夢を見ていたので……アリス様、ありがとうございます。……申し訳ありません。お休みを妨げてしまったのではありませんか?」
「いや、昨夜はベッドに入るのがかなり早かったので……たぶん普通にしていても、そろそろ目が覚めたと思います」
アリスティードは首を振ると、顔を曇らせ、ネージュの腕に指先を伸ばしてきた。
彼に触れられて、初めてネージュは無意識のうちに、左腕を右手で強く掴んでいた事に気が付く。
その下には、忌々しい指の形の痣がまだ残っている。
「まさか悪夢の原因はナゼールですか?」
「……はい」
状況的に誤魔化しは利かない気がしたので、ネージュは渋々と頷いた。
すると、アリスティードは、ネージュの右手をやんわりと引き剥がし、左腕を自分に引き寄せる。
そして寝間着の袖を捲ると、痣の上に口付けを落としてきた。
「アリス様!?」
「消毒です」
驚くネージュに向かって、アリスティードは不機嫌そうに返してきた。
怒っているようだが、その怒りは恐らくナゼールに向けられたものだろう。
「後ろを向いて頂けますか? 項も消毒しますので」
「えっと……はい……」
指示された通り背中を向けると、後ろから抱き締められた。
そして指先で髪が掻き分けられ、あらわになった項に唇が落とされる。
条件反射的に前日、アリスティードと体を重ねた記憶が蘇り、心臓が早鐘を打った。
「今日はこれ以上はしませんから」
ネージュの緊張を読み取ったのか、アリスティードが囁いてきた。
首筋で吐息を感じてぞくりとしたが、夢の中と違って嫌悪感は覚えなかった。
何よりも、大きな体に包み込まれると安心する。
「ここに引き取られたばかりの時を思い出します。怖くて、一人では眠れなくて」
「まさか祖父もこうしてネージュを……?」
アリスティードはまだ機嫌が悪そうだった。
「いえ、マルセル様ではなく、当時私の世話係だった女中に一緒に寝てもらいました」
ネージュの答えが意外だったのか、彼はわずかに身動ぎした。
「ミシェルの年の離れた姉で、マノンという名の女中でした……。結婚する事になって退職したので、入れ替わりでミシェルが来てくれたんです」
マノンは三児の母になったと聞いている。
懐かしさにネージュは目を細めた。
「……どうりでミシェルと親しいと思いました」
アリスティードは、ネージュの髪を梳くように触れながら囁いた。
「そうですね。家族というのが近いかもしれません。私は両親の顔を知らないので、本物の家族というものを知らないのですが……」
「そうなんですか……?」
「捨て子だったんです。赤ちゃんの時に孤児院の入り口に捨てられていたと聞きました。ネージュという名前だけが書かれた手紙が添えられていたそうです」
「……親の顔は、俺も知らないです」
お腹に回された手に力がこもった。
「そうでしたね」
母方の祖父母に育てられた彼も、実の両親を早くに亡くしている。
ネージュはアリスティードの手に自身の手を重ねた。
会話が途切れるが、決して嫌な沈黙ではなかった。
背中から感じる穏やかなぬくもりに、悪夢のせいでささくれだった気持ちが少しずつ解けていく。
ネージュは目を閉じると、アリスティードの体温に身を委ねた。
神殿から屋敷に戻ってきたアリスティードは、玄関ホールで使用人と一緒に待機していたネージュの姿に目を見張った。
晩餐まで付き合わされて正直へとへとだったが、彼女の姿を見るだけで疲れが吹き飛ぶ。
「出迎えてくださってありがとうございます。体調は大丈夫ですか……?」
男のアリスティードには、初めての女性が体に受ける負担は想像もできない。不安になって尋ねるとネージュは「はい」と返事をした。
「アリス様こそ大丈夫ですか? あまり眠っていらっしゃらないですよね……?」
「俺は平気です。体力には自信があるので」
「それでもお疲れですよね? 入浴の準備をさせておりますので、ゆっくりなさって下さい」
「はい、ありがとうございます」
アリスティードは脱いだ上着を使用人に預けながら、ネージュをまじまじと見つめた。
つい十数時間前に彼女と体を重ねたのだ。まだ実感できない自分がいる。
じっと見つめていると、ネージュの頬がほんのり赤く染まった。彼女もまた意識してくれているのだろうか。
「あの……私は寝室でお待ちしておりますので、もしよろしければいらして下さい」
小声で囁くと、ネージュはこちらが何かを返す前に、一礼して去って行った。
◆ ◆ ◆
ネージュの言う『寝室』とは、夫婦の寝室のことだろう。
本当の夫婦になったのだから、今日から寝室を一緒にするというのはある意味自然だ。
侯爵家の使用人は教育が行き届いているので、こちらを茶化すような発言をする者はいなかったものの、どこか生温い視線を向けられ、アリスティードはいたたまれない気分になった。
だが、寝室を共にと誘われたのは純粋に嬉しい。
またこの腕の中に彼女を抱いて眠れるのだ。
はやる気持ちを抑えながら体を清め、夫婦の寝室に向かうと、既にベッドの中ではネージュが待機していた。
その姿にアリスティードは固まる。襟ぐりが大きく開いた扇情的なデザインのものを身に着けていたからだ。
「お疲れ様です、アリス様。今日もその……、なさいますか……?」
「……いや、今日はそんなつもりは……。俺も睡眠不足ですし……」
そこまで飢えているように見えたのだろうか。
「俺がここに来たのは、ネージュと一緒に過ごしたいからです。その……、軽く触れ合うくらいはしたいなと思いますけど……」
「そうなんですか……? 男性はそういう事がお好きだから私てっきり……」
恥ずかしげにさりげなく胸元を隠すネージュの姿は、相変わらず性質が悪かった。
◆ ◆ ◆
気が付いたらネージュは白黒の空間にいた。
周囲の景色に色がついていないという事は、どうやら自分は夢を見ているらしい。
目の前には、豪奢なドレスに身を包んだ子供の頃の自分とダニエルが並んでいる。
(どうして……)
ネージュは身を震わせた。
なぜまたこんな過去の夢を見ているのだろう。
目の前にいる小さなネージュは、ダニエルに『人形遊び』を強いられている。
ネージュは、いまだに恐怖を覚える自分に気付き、唇を噛んだ。
「消えて!」
ネージュはダニエルに向かって叫んだ。
自分はマルセルのお陰で立ち直ったはずだ。過去の幻影に今更苦しめられたくなかった。
しかし――。
突如首筋に生暖かい空気を感じてネージュはビクリと身を竦ませた。
振り向くと、ナゼールがいて、ネージュは抱きすくめられていた。
「ネージュ様……」
熱に浮かされた瞳が至近距離にあり、ネージュは悲鳴を上げながらもがいた。
(どうして……)
なぜこんな悪夢を見なければいけないのだろう。
気持ち悪さと恐怖に涙が滲む。
ナゼールの痕跡は、アリスティードに優しく触れて貰い、完全に消し去ったはずだ。だから余計に許せなかった。
「ネージュ!」
別の男性の声が聞こえ、肩が掴まれた。
(今度は何……?)
「ネージュ、大丈夫ですか!?」
強く揺さぶられ、大きく目を開けたネージュの視界に入ってきたのは、アリスティードの顔だった。
ストロベリーブロンドに深緑の瞳。
目の前のアリスティードには色がついていて、ネージュは夢から醒めたのだと確信して安堵した。
周囲は暗かったけれど、ベッドの傍に置かれたランプの光が間接照明として室内を照らし出していた。
一瞬見覚えがない部屋……と、戸惑うが、今日から夫婦の寝室を使う事にしたのを思い出す。
「あまりにもうなされていたので……すみません、どうかとは思ったんですが起こしました」
アリスティードが声を掛けてきた。悪夢から逃げられたのは彼のおかげだったらしい。
「いえ、とても嫌な夢を見ていたので……アリス様、ありがとうございます。……申し訳ありません。お休みを妨げてしまったのではありませんか?」
「いや、昨夜はベッドに入るのがかなり早かったので……たぶん普通にしていても、そろそろ目が覚めたと思います」
アリスティードは首を振ると、顔を曇らせ、ネージュの腕に指先を伸ばしてきた。
彼に触れられて、初めてネージュは無意識のうちに、左腕を右手で強く掴んでいた事に気が付く。
その下には、忌々しい指の形の痣がまだ残っている。
「まさか悪夢の原因はナゼールですか?」
「……はい」
状況的に誤魔化しは利かない気がしたので、ネージュは渋々と頷いた。
すると、アリスティードは、ネージュの右手をやんわりと引き剥がし、左腕を自分に引き寄せる。
そして寝間着の袖を捲ると、痣の上に口付けを落としてきた。
「アリス様!?」
「消毒です」
驚くネージュに向かって、アリスティードは不機嫌そうに返してきた。
怒っているようだが、その怒りは恐らくナゼールに向けられたものだろう。
「後ろを向いて頂けますか? 項も消毒しますので」
「えっと……はい……」
指示された通り背中を向けると、後ろから抱き締められた。
そして指先で髪が掻き分けられ、あらわになった項に唇が落とされる。
条件反射的に前日、アリスティードと体を重ねた記憶が蘇り、心臓が早鐘を打った。
「今日はこれ以上はしませんから」
ネージュの緊張を読み取ったのか、アリスティードが囁いてきた。
首筋で吐息を感じてぞくりとしたが、夢の中と違って嫌悪感は覚えなかった。
何よりも、大きな体に包み込まれると安心する。
「ここに引き取られたばかりの時を思い出します。怖くて、一人では眠れなくて」
「まさか祖父もこうしてネージュを……?」
アリスティードはまだ機嫌が悪そうだった。
「いえ、マルセル様ではなく、当時私の世話係だった女中に一緒に寝てもらいました」
ネージュの答えが意外だったのか、彼はわずかに身動ぎした。
「ミシェルの年の離れた姉で、マノンという名の女中でした……。結婚する事になって退職したので、入れ替わりでミシェルが来てくれたんです」
マノンは三児の母になったと聞いている。
懐かしさにネージュは目を細めた。
「……どうりでミシェルと親しいと思いました」
アリスティードは、ネージュの髪を梳くように触れながら囁いた。
「そうですね。家族というのが近いかもしれません。私は両親の顔を知らないので、本物の家族というものを知らないのですが……」
「そうなんですか……?」
「捨て子だったんです。赤ちゃんの時に孤児院の入り口に捨てられていたと聞きました。ネージュという名前だけが書かれた手紙が添えられていたそうです」
「……親の顔は、俺も知らないです」
お腹に回された手に力がこもった。
「そうでしたね」
母方の祖父母に育てられた彼も、実の両親を早くに亡くしている。
ネージュはアリスティードの手に自身の手を重ねた。
会話が途切れるが、決して嫌な沈黙ではなかった。
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