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第1部 目指せゲームオーバー!
第4話 第一異世界人発見
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魔王に魂ごと丸っとデストロイされるべく、オレは勇んで歩き出した。
その直後だった。
「キミ、魔王がどこにいるか知ってるの?」
「あ……」
天の声からごもっともな指摘が飛んできた。
魔王がどこにいるかなど、転生してきたばかりのオレが知っているはずもない。
RPGなら、近くの街や村でクエストを受けて、情報を集めるところから始めるが……
「……ねぇ、ひょっとして私がガイド役っていうのもう忘れてる?」
「そんなわけないじゃん、今お前に質問しようと思ってたって」
思いっ切り忘れてた。
内心冷や汗をかくオレをジト目で睨み、天の声が口を開いた。
「とりあえず、回れ右して道なりに進んで」
「ウス」
草原だが道はある。ゲームで言えば「街周辺の草原」にある感じの一本道だ。
このまま道なり進んでいけば、そのうち村や街に着くだろう。
ガイド役の言葉に従い、オレは足を踏み出した。
◇
「本当に異世界か、ここ……?」
歩き出して10分が経ったが、びっくりするほど何も起きなかった。人間どころか動物もいない。
鳥が空を飛んではいるが、実はそれらが凶暴なモンスターで、急降下して襲ってくる……なんてこともない。
先ほどゴブリンとエンカウントしたのが嘘みたいだ。
「なぁ、オレってどんな魔法使えんの?」
歩きながら天の声に訊ねた。
先ほど《鑑定》なる魔法で見たオレのステータスには、全属性高適性とあった。
全属性ということは、闇魔法とかも使えるのだろうか。
「んーとね、キミがっていうか、人族は自然属性と無属性の魔法が使えるよ」
「種族によって違うのか。自然魔法ってのは、さっき使った炎のやつみたいなの?」
「そうそう。炎・水・雷・地・草・風の6つの属性をまとめて自然属性って言うの」
「なるほど。つまり炎は水に、水は雷に、雷は地に、地は草に、草は風に、風は炎に弱いんだな!」
「なんで分かるの?」
「定番だし」
となると、闇魔法は魔族だけ、光魔法はまた別の種族だけが使えるといった感じだろう。
「そもそも魔法っていうのは、術者の魂から生まれたエネルギー《魔力》を何らかの用途で放出したものの総称ね」
「魔力って魂から生まれるんだ」
「うん。テキトーに言えば気力みたいなものだから、気合い入れればいっぱい魔力生まれるし、純粋な感情からは純度の高い魔力も生まれるよ」
「魔法は気合いってそういうことか」
天の声曰く、「魔力を大量に使う」か「純度の高い魔力を使う」と、魔法の効果が強まるらしい。
つまりこの世界では、気合いと根性で魔法の効力が左右されるのだという。
ファンタジーのはずが、なんともスポ根チックだ。
と、ここまで会話をダラダラとしながら歩いたが、景色に大きな変化はない。
強いて言えば近くに森の端っこが見えるだけで、相変わらず平和な草原が広がっている。
やはり暇だ。
「……通りすがりの王とか来て、今すぐオレのこと殺してくれないかな……」
「……この人バカなのかな……大丈夫かな……」
バカにされたようだが気にしない。
死ねばアニメが観れるのだ、死なない理由がどこにある。
「……まぁ目的地は一緒だからいいけどさ」
天の声が小さく何か言ったようだが、オレには聞こえなかった。
もっと別のものが気になったからだ。
「……なぁ、あそこに倒れてるのって、人じゃね?」
指差した先──森の端っこの木陰に、男性と思しき人影が倒れていた。
急いで駆け寄り、大きめの声を投げかける。
「おい、大丈夫か!?」
「う、うぅ……」
小さく呻く男性を、オレはじっと観察した。
真っ白な髪と肌が目を惹く男だ。黒革のコートに身を包んでいる。
体格や顔のシワからして、50代くらいか。
「この人……」
「知ってるやつ?」
「……いや、すごい弱ってるなって思って」
「確かに……オレが使える魔法に、回復魔法ってある?」
あればそれを使って、この男を助けることができる。
そう考えるが、天の声はあっさりと言った。
「ないよー。回復とか治療ができるのは光魔法だけで、光魔法が使えるのは聖族だけだからねー」
聖族──魔族と対を成す種族のことか。
ゴブリンも天の声も、オレを人族と言っていた。
ならば、オレに回復魔法は使えないだろう。
薬も持っていないため、できることはない。
思わず頭を抱えた、その直後、
──ぐぅぅ~~きゅるるるるるる……。
そんな音が、白髪男性のお腹から聞こえた。
「……食いもん探してくる」
少しツッコみたかったのを押し殺して、オレはその場を後にした。
(つづく)
その直後だった。
「キミ、魔王がどこにいるか知ってるの?」
「あ……」
天の声からごもっともな指摘が飛んできた。
魔王がどこにいるかなど、転生してきたばかりのオレが知っているはずもない。
RPGなら、近くの街や村でクエストを受けて、情報を集めるところから始めるが……
「……ねぇ、ひょっとして私がガイド役っていうのもう忘れてる?」
「そんなわけないじゃん、今お前に質問しようと思ってたって」
思いっ切り忘れてた。
内心冷や汗をかくオレをジト目で睨み、天の声が口を開いた。
「とりあえず、回れ右して道なりに進んで」
「ウス」
草原だが道はある。ゲームで言えば「街周辺の草原」にある感じの一本道だ。
このまま道なり進んでいけば、そのうち村や街に着くだろう。
ガイド役の言葉に従い、オレは足を踏み出した。
◇
「本当に異世界か、ここ……?」
歩き出して10分が経ったが、びっくりするほど何も起きなかった。人間どころか動物もいない。
鳥が空を飛んではいるが、実はそれらが凶暴なモンスターで、急降下して襲ってくる……なんてこともない。
先ほどゴブリンとエンカウントしたのが嘘みたいだ。
「なぁ、オレってどんな魔法使えんの?」
歩きながら天の声に訊ねた。
先ほど《鑑定》なる魔法で見たオレのステータスには、全属性高適性とあった。
全属性ということは、闇魔法とかも使えるのだろうか。
「んーとね、キミがっていうか、人族は自然属性と無属性の魔法が使えるよ」
「種族によって違うのか。自然魔法ってのは、さっき使った炎のやつみたいなの?」
「そうそう。炎・水・雷・地・草・風の6つの属性をまとめて自然属性って言うの」
「なるほど。つまり炎は水に、水は雷に、雷は地に、地は草に、草は風に、風は炎に弱いんだな!」
「なんで分かるの?」
「定番だし」
となると、闇魔法は魔族だけ、光魔法はまた別の種族だけが使えるといった感じだろう。
「そもそも魔法っていうのは、術者の魂から生まれたエネルギー《魔力》を何らかの用途で放出したものの総称ね」
「魔力って魂から生まれるんだ」
「うん。テキトーに言えば気力みたいなものだから、気合い入れればいっぱい魔力生まれるし、純粋な感情からは純度の高い魔力も生まれるよ」
「魔法は気合いってそういうことか」
天の声曰く、「魔力を大量に使う」か「純度の高い魔力を使う」と、魔法の効果が強まるらしい。
つまりこの世界では、気合いと根性で魔法の効力が左右されるのだという。
ファンタジーのはずが、なんともスポ根チックだ。
と、ここまで会話をダラダラとしながら歩いたが、景色に大きな変化はない。
強いて言えば近くに森の端っこが見えるだけで、相変わらず平和な草原が広がっている。
やはり暇だ。
「……通りすがりの王とか来て、今すぐオレのこと殺してくれないかな……」
「……この人バカなのかな……大丈夫かな……」
バカにされたようだが気にしない。
死ねばアニメが観れるのだ、死なない理由がどこにある。
「……まぁ目的地は一緒だからいいけどさ」
天の声が小さく何か言ったようだが、オレには聞こえなかった。
もっと別のものが気になったからだ。
「……なぁ、あそこに倒れてるのって、人じゃね?」
指差した先──森の端っこの木陰に、男性と思しき人影が倒れていた。
急いで駆け寄り、大きめの声を投げかける。
「おい、大丈夫か!?」
「う、うぅ……」
小さく呻く男性を、オレはじっと観察した。
真っ白な髪と肌が目を惹く男だ。黒革のコートに身を包んでいる。
体格や顔のシワからして、50代くらいか。
「この人……」
「知ってるやつ?」
「……いや、すごい弱ってるなって思って」
「確かに……オレが使える魔法に、回復魔法ってある?」
あればそれを使って、この男を助けることができる。
そう考えるが、天の声はあっさりと言った。
「ないよー。回復とか治療ができるのは光魔法だけで、光魔法が使えるのは聖族だけだからねー」
聖族──魔族と対を成す種族のことか。
ゴブリンも天の声も、オレを人族と言っていた。
ならば、オレに回復魔法は使えないだろう。
薬も持っていないため、できることはない。
思わず頭を抱えた、その直後、
──ぐぅぅ~~きゅるるるるるる……。
そんな音が、白髪男性のお腹から聞こえた。
「……食いもん探してくる」
少しツッコみたかったのを押し殺して、オレはその場を後にした。
(つづく)
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