塔の中の小鳥

アオ

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 森の中はとても静かだった。
 先頭は植物学者のリアム様、オリバー様に続き、
 私と殿下が歩き、
 後ろから護衛が二人ついてきていた。
 殆ど誰も入る事のない森だった故、道はなかった。
 30分ほど歩いた頃、大きな石があった。ケイティーは方位磁石を取り出した。
 
 矢印はクルクルと動き、一定の場所を指さない。
 やっぱり、ここは・・・・。
 
 「ここの土は磁石を含んでいるな」
 私の手元を一緒に眺めていた殿下が呟いた。
 「ああ、土じゃないな。この石か」
 大きな石は私たちよりも何倍も大きかった。
 見上げていると、私たちよりも少し先に行っていたリアム様はこっちに向かって大声をあげていた。
 「殿下~!離れないでくださいよ~ここ、少しずつ方向感覚がずれてきそうです」
 方向感覚がずれる?
 そもそもあまり外に出ない私はよくわからないけど、
 やっぱり磁石が関係あるのかしら。
 リアム様が叫ばれたため、私たちは再び歩き出した。
 大きな石は一つだけではなく、
 いくつも形も大きさもバラバラに点在していた。
 その周りには噂通り、不思議な形の植物が色とりどりに咲き乱れ
 視界一面に広がっていた。
 先に到着していたリアム様は四つ這いになって早速植物を調べている。
 ケイティーもしゃがみ込み植物を見た。
 どれもこれも見たことがないような見たことがあるような。
 「ケイティー殿、ここはすごい所ですよ」
 興奮状態でリアム様は私の方に向かってきた。
 「ここの植物、希少価値の薬になるものが多いのです。こんなの初めて見た!」
 「薬?薬!!」
 ああ、そうか。私、すぐに食べられるものばかり考えてた!
 薬、しかも希少価値ならばお金になる!!
 この領土を支えられる程とまではいかないけど、
 皆のお給料を払えることはできるかも!
 「ケイティー殿はあまり薬学には詳しくないですか?」
 「はい、あまりというか苦手でして・・・」
 そうなんですね、いやぁこれは素晴らしい植物ですよと
 スキップをしながらリアム様は草木の方へと去っていった。
 
 私はどの本も読みあさっていたけど薬学は苦手だった。解剖生理学や病理学などは読んでて面白かったけど、
 薬学はどうも頭に入ってこなかった。
 「苦手なこともあるんだな」
 私たちの会話を黙って横で聞いていた殿下は意外そうに呟いた。
 「私は知識を取り入れることは好きなんですが、自分がすることは苦手です」
 悲しいことに、知識だけがあって自分がやると大体失敗に終わる。
 パンのことだって川の作り方だって知識としてはあるのに自分では作ることが出来ない。
 不器用すぎていつも人に止められてばかりだった。
 きっと、薬も草木のことはわかっても調剤するとなると皆が止めるのが
 手に取るようにわかる。
 「それだけ知識があるというのはすごいことだと思う。
 しかも知識だけで終わらず自分で分析し判断する能力がある。
 その能力は王宮で働いで欲しいぐらいだ。
 多少、不器用なぐらいなんだ。出来ないことはできる者が補えば良い」
 殿下は淡々と話していたが私にはじんわりと暖かい言葉だった。
 お父様が亡くなってから必死に毎日過ごした。毎日、必死に考えていた。
 自分の手で何かが出来ればどんなに良かったかと、なんども思った。
 だけど、私にできることなんか考えることだけで。
 誰かに頼らないと次のことには繋がらなくて。
 「私は誰かの、この民の力になれてるのでしょうか?」
 思わず呟いてしまった私は恥ずかしくて俯いた。
 そんなこと言われたって殿下が困るに決まってるのに。
 「大丈夫だ。君は民のことを考え、民のことを思い行動し、
 民のために結果を出している。胸を張れ」
 力強い言葉だった。
 嬉しくて涙が出るのを堪えた。

 うん。頑張ろう。
 私は私が出来ることを考えよう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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