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しおりを挟む今の時期は紅葉で色取り取りになっているはずだが、この森には紅葉がない。
白色の葉と黄金色の幹をした木々が生い茂っていた。
そのため、この森は「白金の森」と呼ばれてた。
この白金の森は普段はほとんど誰も足を入れることがない森だった。
なぜかというと、ここに生息している植物はあまりにも奇妙な形のものが多く、
食に適しているとは言えないものばかりだった。
それにここに足を踏み入れたら帰ってこれないという言い伝えがあったからだった。
これに関してケイティーは昔からある考えがあった。
それを確認すべくここに来たかったのだが・・・・
「殿下。あのう、私、オリバー様の馬に乗るべきかと思いますの・・・」
ケイティーは自分の後ろにいる人物に恐る恐る声をかけた。というのも、馬で移動と決まった際、
乗馬はまだ一人ではおぼつかないケイティーに対しアレクサンドラスは有無を言わさず自分の馬に乗せた。
常識からすると、殿下の馬に一緒に乗るというのはありえなかったが、
なぜか当たり前のように乗せられてしまい、自分の常識に自信がなかったケイティーは乗せられたままだった。
しかし、オリバーが一言、
「殿下・・・・」
と、何かを言いたそうな一言を漏らしたため、やっぱり乗るべきではないと思い、
勇気を出して自分の後ろにいる殿下に声をかけたのだった。
アレクサンドラスはケイティーの上目遣いに一瞬ピクリと眉を動かしたが、
表情は変えなかった。
「なぜ、オリバーの馬に乗る必要がある。私では不服なのか?」
「ふ、不服だなんて・・・。えと、殿下の馬に一緒に乗るのは失礼かと・・思って・・・」
なんだか声質というか、周りの温度が少し下がったような気がしたケイティーは
怖くなって声がだんだん小さくなった。
えー?なんで?だってこの状況はありえないでしょ?なんで怒るの?
今にも泣きそうになり瞳には涙が溜まってきた。
「それになぜ名前を呼ばない。オリバーのなを呼ぶのに私は殿下と呼ぶのか」
呼べるわけないじゃない!
ケイティーの心の叫びは当然聞こえない。
頭に視線が突き刺さっている、流石にそれはわかる。これは拷問なの?
自分たちよりもほんの先にいるオリバーに助けを求めるよう見つめるが、
もちろん気が付いていない。
横を向いて護衛についていた騎士を見ると、彼は一瞬目があったが逸らされた。
ひ、酷い・・・。
誰も助けてくれない・・・。
白金の森まで、馬でほんの30分程で着く距離であるが、ケイティーにとっては拷問の30分だった。
結局、ケイティーは名前を呼ばなかった。
馬から降ろされた時、ため息をつかれ気持ちがどん底になりそうだったが
こんなことに気を取られてる場合じゃないと気を奮い起こした。
ケイティーはポケットから、方位磁石を取り出した。
後ろから植物学者のリアムが声をかける。
「もしかしてここ、方位磁石が狂っちゃいます?」
赤毛の彼は年齢は30代に見えるが実は40代らしい。しかも顔は童顔だ。
背丈はケイティーとさほど変わらないぐらいでとても人懐っこいが
これでも3人の子持ちで愛妻家で有名らしい。
「今まで、この森に方位磁石を入れたものがいないんですよ。でも、皆が迷子になると
昔から言われてたので何かあるのかなぁと。
リアム様は地理にも詳しいですか?」
「まあ、あちこちに植物を探しに行くから必然と土地や土のことは頭に入ってきますけど
ここの土は初めて見ますねぇ」
足元にしゃがみこみ、土を手のひらに乗せた。
「それにこの木はこの国ではあまり生息しないはず。しかも少し違う?」
「やっぱりそうですよね?以前、南の国の植物図鑑を読んだ時、似てるなとは思ったんですけど
微妙に違うなって。で、ここの森のことを調べたらこの森、さほど古くなかったんです。
50年程前は丘だったんですね。で、誰かが植えたのか、外来種としてたまたまここに繁殖したのか、
よくわからないのですがあっという間に森になってしまって。
で、もし外来種ならばここの森の中で生息している植物は外来種ばかりで
この国では手に入らないものがあるのではないかと思って調べたかったんです!」
今までになく話すケイティーに皆が驚いていたがリアムはまあまあと両手で落ち着かせた。
「じゃあ、ここを調べた人はいないんだね。僕らが一番なんだ。しっかり調べよう」
馬から荷物を取り出し前に進んだ。
ケイティーもそれに続いて行こうとすると手を後ろへ引かれた。
後ろに倒れそうになったが、硬い何かにぶつかった。
「君はバカか。なぜ先に行こうとする。安全を確認しながら進むから後ろに決まってるだろう?」
また、怒っているであろうこの声の主の威圧感が半端なかった。
なぜ、こんなにも怒られてばかりいるのか。
世間知らずすぎて呆れられた・・・。
「すみません・・・」
下を向いたケイティーの視界に大きな手がニュッと見えた。
驚いて見上げるとアレクサンドラスが無表情で黙って見下ろしていた。
どうすればいいのかわからなかったケイティーはただアレクサンドラスを見つめていた。
数秒見つめあってすぐに視線を逸らしたのはアレクサンドラスの方だった。
そして、無理やりケイティーの手を取り森の方を見る。
「君は一番体力もないし森に慣れてない。だから離れないように」
「は、はぁ・・」
そうか、頼りないですものね、私。前科もあるし。これ以上、殿下を怒らせないように
指示に従ったほうがいいわね。
殿下に引かれるがまま、ケイティーは森の中に一歩を踏み入れた。
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