塔の中の小鳥

アオ

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 父の葬式はとても静かに流れた。
 村人たちは沢山集まってくれ、誰もが「いい領主様だった。私達がもっと作物をしっかり育てられたらこんなことに…」
と、涙を流しながら話していた。
 
 父は村人達に愛されていたんだなぁ。

 父の友人や親族は少ない。付き合いが悪かったから仕方がなかった。だから葬式の案内を送るのはとてもあっけなく済んだ。その代わりに村人が家族みたいなものだったのかな。だからみんなのために走り回ったのだろう。
 私はそんな父が誇りに思えた。涙を流しちゃだめだ。私がしっかりしないと。
 顎をしゃんとあげ、背筋を伸ばす。

 「お姉ちゃん・・・」
 私の裾をクイっと引っ張りながら弟が今にも泣きそうになっている。
 弟と視線が合うようにしゃがみこみじっと見つめた。
 「レオ、これからは私がお父様の分も頑張るから。レオがこの伯爵家を継げるようにお姉ちゃん頑張るから」
 今まで引きこもっていた姉に何が出来るのだろうかときっとレオは思ってるはず。不安そうな表情はまだ曇ったままだった。

 

 「ありがとうございました。どうかお気をつけてお帰り下さいませ」
 父の葬儀に来てくださった最後のお客様を見送った。散々、表舞台には立とうとしなかった私に様々なアドバイスをくださり私の精神はかなりのダメージを受けていた。
 ああ、図書室に引きこもりたい・・・・・。

 「お嬢様、この後旦那様の書斎へ来ていただけますか?」
 後ろから、ジョンが控えめに声をかけて来た。
 父が亡くなってからジョンはとても優しかった。さすがにこんな時までグダグダ言われたら精神持たなかったと思う。彼も鬼畜ではなかったみたい。

 「よろしくてよ。ちょっとレオの様子を見てからそちらに向かうわ」
 葬儀が終わってからレオの言葉が少なっている。いつも明るくニコニコしていた弟はこんな変な姉でも気にせず毎日笑顔で図書館までおしゃべりをしに来てくれていた。基本、私は聞くばかりで自分から話しかけることは少なかったが弟が話しながらクルクルと表情が変わるのはとても可愛くてずっと眺めていたかった。そのようなレオに早く戻って欲しい。そう思って私は毎日時間が少しでもあるとレオのところに行って話しかけていた。

 「レオ様は疲れたと言って少しお昼寝をされるそうです。その間にお話したいことがあります」

 ジョンの表情がとても硬い。いつもの説教するような目がつり上がった感じではなく切羽詰まったように見える。きっと悪いことなんだろうな・・・。

 「わかりました。じゃあすぐに行きます」

 ああ、行くのがぶっちゃけ怖い・・・。


 
 父の書斎に入るのは何年ぶりだろうか。
 重いドアをゆっくりと開けると誰かがカーテンと窓を開けておいてくれたらしく爽やかな風が私を通り抜けた。それと同時に父が愛用していたものの匂いが鼻に届く。
 貧乏だったか先祖が建ててくれた屋敷はとても広く書斎も本棚が少しだけある程度で真ん中にポツンと机がおいてある。そこには愛用していた万年筆が立ててあり、父がまだ使っているかのようだった。

 そっと机の縁を指でなぞって机を眺めていたらドアのノックする音が聞こえ、振り向くとジョンがたくさんの書類を両手に抱えて入って来た。そしてそれらをドンっと大きな音を立てて机の上に置いた。

 「これは?」

 「お嬢様、単刀直入に言います。このお屋敷にはお金がほぼ残っておりません」

 あー、うーん。やっぱり嫌な予感は的中した。
 
 ジョンは机に置いた書類をガサガサと広げながら説明した。
 「これらは生前旦那様が赤字対策に作られた書類ですが、あまりにも・・・」

 ここまで述べて言葉を詰まらせた。

 「あまりにも楽天的な数字なんでしょ?なんとなくわかるわ」
 父の考えはわかる。きっと希望的なことが分析に含まれてしまっていて冷静にダメな部分や細かく実現可能な改善案はきっと残していなかったと思う。悪いことも大丈夫大丈夫って笑ってなんとかなるだろうといつもおっしゃてってたから。
 
 机に近寄り書類を数枚見て頭を抱えてしまった。

 これならば私が数日前に完成させたあの書類の方がよっぽど・・・

 「あ、ジョン!お父様が亡くなる前に私が書いていた書類は?農業のことしか書いてないけどあのやり方だと・・・」

 「こちらにご用意してあります。ただ、こちらだと長期的な計画すぎて実現するまで数ヶ月はかかります。
  まずは明日からのことも考えないといけません」
 
 明日すらやばいのか!!あぁ、もうどうしよう。
 
 思わず私は頭を両手で抱えてしまった。

 
 


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