塔の中の小鳥

アオ

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 夜早く寝たせいか、朝早く目覚めてしまい簡単に身支度を整えた後、

 まだ誰もいない庭に出た。

 きっとこの時間ならまだ誰も居ないから外に出ても誰も咎めないだろう。

 今日は霧が出ていた。朝霧の中、歩くのは嫌いじゃない。

 なんだか小説の世界みたいで少しだけワクワクしてしまう。

 そんな気持ちになって来れたのも外の世界にも面白いものがあるとちょっとずつ知ってしまったから。
 
 あんなに引きこもりだった毎日だったくせに、

 外に出る楽しみを知ってしまったらベッドで大人しくするのが出来なくなっていた。




 ついでに朝食用の卵と、りんごとみかんを摘んでこよう。

 

 自分は外の仕事は出来ないが、家のちょっとした仕事は出来る。

 さすがに水汲みと薪割りは皆に止められた。

 だけど力が必要ない仕事なら出来ると言い張り、簡単な仕事をさせてもらうようになった。

 朝早くの卵を籠に入れて広い庭園の先にいある果実園の方へと向かった。

 果実園への道は意外と遠い。

 最近は手入れするものも解雇したため、森に近い状態になっていた。

 それでもここへ来ることはケイティに取って楽しみの一つになっていた。

 

 「このみかん、今年は小ぶりだけど味が濃いものになったわね。おいしくいただきます」

 「あら、あなた、とっても綺麗なオレンジ色だわ。きっととっても甘いのね」

 果物に声をかけながらひとつひとつ大事に籠の中に入れていった。

 今年は雨が降ることが少なく水も乾燥気味で果物も育たないのではないかと心配したが

 小ぶりであるも味が濃いものに育ってくれた。

 「水が少なくても育つ果物は貴重よね。これで味が安定してくれるといいのだけど」

 品種についてももっと調べた方が良さそう。どの品種がその作り方に向いているのか、
 
 私にはまだまだ勉強不足で知識が追いついてない。書物上のことしか見えていない。
 
 実際どうなのか、微妙な変化はどんな時に起こりうるのか、
 
 私にはわからないことが多すぎる。

 「でも一番の問題はあなたたちをどう活かすかよね。

 せっかく美味しく実をつけてもそれだけじゃ先につながらない。

 繋がったとしても天気に左右されるんじゃなくてもっと・・・・」




 「君はそうやってあれだけのことを一人で考えたのか?」




 急に後ろから声がしてびっくりして振り向いた。

 こんな朝早くには誰もいないと思ってた。

 腰に練習用の剣をつけた大きな人が立っている。白いシャツにカーキー色のズボン、そして

 黒に近い茶色のブーツを纏っていた。

 ラフな感じであるも上品さが滲み出ている。

 「見苦しいところをお見せしました、すみません」

 慌てて膝をついて頭を下げる。

 距離があっという間に近づいて視線の先につま先が見えた。

 「頭をあげてくれ。先ほどの話の続きを聞きたい」

 おずおずと頭をあげる。そして顔を見た。

 やっぱり綺麗だなぁと思ってしまった。

 少し額に汗があったのが、妙にセクシーでドキドキしてしまう。

 「先ほどの話とは果実のことでしょうか?」
 
 私の独り言がダダ漏れだったのが本当に恥ずかしくてどこかに隠れたいぐらい。

 それでも話はしなければと震えつつ見上げて答える。
 
 じっと見つめられるだけなんだけど、これは肯定と取ればいいのかしら。

 「ええと、考えたと言うことならばそうです。といっても書物を参考にここの土地に合うものをとにかく

 あげただけなんですが・・・・」

 私のたどたどしい言葉にもじっと耳を傾けてくださってるのがわかる。

 大きいから怖いかと思ったのだけど、決してそんなことはなかった。

 ただ、無口で無言の圧迫感が半端ないってこと。

 「この土地は土地自体がとても痩せていて水も乏しいのです。

 土地に対しては痩せている土地でも育つ野菜や穀物、それも短期間で成長できるものを調べました。
 
 それを農家の方と相談してどうにか苗を入手できました。

 とても高価だったのでほんのわずかだけ手に入ったのでまだ試験的なものばかりです。

 それを増やすのが今の目標です。

 果実はもともとあったものの中で冬の寒さに強いものを甘さが強くなるように今までと肥料を変えて

 あとは水を制限しました」

 「なぜ制限を?」

 「甘さが凝縮することがあるらしいので。

 でも制限かけた期間が少し短すぎてるのでどうしたものかと考えているところでした」

 ふむ、と手を顎にかけて殿下はしばし考えてる。

 おお、どんなポーズもかっこよく見える。

 今までこんなに綺麗な人を見たことなかったからいつまでも見続けたい感情と、
 
 これ以上話すのが恥ずかしすぎて1秒でも早くこの場を去りたいという感情が

 ごっちゃごっちゃで頭がパンクしそう。

 いや、逃げたいという感情の方が強くなってしてしまった。

 見上げつつもまたもや涙目になってくる。

 引きこもりにはもう限界です。助けてください。


 下唇を噛み締め必死に耐えた私を見つめニコリと笑った。




 殿下が笑った?!

 
 笑ったよね?

 気のせいじゃありませんよね?

 
 その笑顔もまた素敵で素敵で。は、鼻血が出そうです・・・・。

 

 

 

 
 
 

 

 

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