青空とエプロン

アオ

文字の大きさ
1 / 10

幼子のように

しおりを挟む

 


「葵~。ご飯たべにいこう~」


 
 私はいつもお昼になったらこの医務室に来る。

 最初であったときは大嫌いだった葵も今じゃ大親友。

 彼女と一緒にいることが私にとって癒しとなる。

 「ちょっと待って。今、データーを打ち込んでしまうから」
 
 何事にも責任感の強い彼女は仕事もきちんとする。
 
 そんな彼女が大好きだった。

 「今日もお弁当の日でしょ?私、お茶入れとくね」

 彼女が看護師という職業のせいか、いつも私の体を気遣ってくれ
 
 食事のこととか昔に比べたらかなり変わってきた。

 外食しまくっていた私も自分でお弁当を作ってくるようになり、
 
 この医務室でご飯を食べるのが日課となってきた。

 「今日はねぇ~。柚子茶持ってきたんだ。おいしいんだ~」
 
 彼女がパソコンに向かっている間、私は楽しみにしていたゆず茶をガザゴソと

 バックの中から出す。瓶ごと持ってくるのは重かったけど、この時間のためなら苦ではない。

 そもそも葵がいろんなお茶をおいしく入れてくれるので私もお茶に興味がでて、

 今ではいろんなフレーバーティーを煎れて楽しんでいる。

 ついあちこちからお取り寄せしちゃったり遠くまで買いに行ってしまった。

 今までの私ならここまでハマるってことはなかったのに、

 彼女のおかげで私の世界がどんどん変わっていった。





 「ふぅ~。終わった。お待たせしました」

 お弁当を持ってテーブルにやってきた。
 
 一緒にいただきますといってお弁当を食べ始めた。

 「ねぇ、今日、暇?」
 
 今日はなんだか飲みたい気分だし、報告したいことがあった。

 「う~ん、リョウもいるけどいい?」
 
 む、またしてもヤツか。
 
 「しょうがないわね、我慢するわ」
 
 私の言葉にクスクスわらう。
 
 彼女は私とリョウが仲がいいって思っている。

 私からすると天敵なのに。

 やつのせいで葵との時間が少ないのよ。

 ただでさえ、超独占欲の強い彼氏がいるのに。

 「あ、でも直様は?」
 
 「今日はおとなしくしてくれるって」
 
 一条グループのトップをいく人間が、

 葵には弱いんだよね。

 でも、きっと遅くなったら迎えに来るんだろうけど。

 「リョウとは何時ぐらいに待ち合わせ?」

 「今日はね~。リョウの職場で待ち合わせなんだ」

 そういえば、リョウがどんな仕事をしてるのか私は知らない。

 「リョウの職場?」

 私が不思議そうにしてるとクスクス笑う葵。

 「ふっふ~。リョウ、今日は遅番だから7時までなの。

 仕事終わったら速攻迎えに行こうね、楽しいよ」

 何度聞いてもリョウの仕事を教えてくれなかった。

 楽しいってなんだろう。

 リョウが仕事を持ってること自体不思議だったけど。

 まあ、とにかく今日の仕事は速く終わらせよう。







 定時に仕事を終わらせお先にといって葵と合流した。

 今は、夏に近いので外はまだ明るい。

 これなら明るいうちにリョウの職場に行けるだろうと葵が言った。

 数駅電車で移動したところ、とある住宅街。

 「ねぇ、ここって住宅街だよね?」
 
 葵はニコニコするだけで、教えてくれない。

 と、たどり着いたのが保育園。

 保育園?

 ゲージの中から子供達の笑い声が聞えた。

 「リョウせんせー。これ見て~。」

 かわいらしい女の子が花の冠をして見せた。

 「あら、かわいいわね。よく似合ってよ」
 
 子どもというか、職場でもその口調かよって突っ込みたいくなったけど、

 それが彼らしくっておかしくなる。
 
 「リョウせんせー、こっちきて~」

 「はいはい。しょうがないわね」
 
 そういいながらニコニコして子どもに手を引かれるがまま砂場のところへ行く。

 リョウのまわりには子どもがいっぱい集まり、それぞれがいろんなことを言い、

 取り合いのようになっている。

 ちょっと困った顔をしながらも、一人一人にちゃんと答えている。

 「リョウらしいでしょ?」

 ふふっと笑いながら葵はリョウを眺めていた。

 「リョウらしい・・・・か」

 リョウって見た目ははっきり言ってモデルなみ。

 身長は180センチ以上あって、9頭身?って言いたくなるぐらい小顔で、

 髪は短髪にして笑顔は爽やか系。

 見た目は本当に芸能人ですか?って言いたいくらいに爽やかな笑顔を振りまいてる。
 
 そんないい男が青空の下でミッフィーの青いエプロンをして子どもと戯れる。

 まるで、幼子のように一緒になっている。

 笑顔で子供達とあそんでいるリョウを見て、

 なんだか胸が苦しくなった。

 まぶしくって、せつなくって。

 10代の少女のように、ドキドキして。
 
 ありえない。

 相手はリョウだよ?

 男なんだか、女なんだか、わからないような人なのに。

 それに私にはもう恋愛なんか出来ないのに。

 してはいけないのだ。
 
 


 そう、私はもうすぐ結婚するのだ。



  

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】 積み上がった伏線の回収目前!! 夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。 長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。 待っていたのは、凍てつく絶望。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。 「夫は愛人と生きればいい。  今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」 それでも私は誓う―― 「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」 歪で、完全な幸福――それとも、破滅。 “石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

侯爵令嬢ソフィアの結婚

今野綾
恋愛
ソフィアは希少なグリーンアイを持つヴィンセントと結婚した。これは金が欲しい父の思惑と、高い爵位が欲しいヴィンセントの思惑が一致したからに過ぎない。 そもそもヴィンセントには恋人がいて、その恋人は身分に大きな差があるために結婚することは叶わないのだ。 結婚して早々、ソフィアは実家から連れてきた侍女夫婦とあばら屋に住むように言われて…… 表紙はかなさんのファンアートです✨ ありがとうございます😊 2024.07.05

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

処理中です...