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そっと耳打ち
しおりを挟む「「え?婚約披露パーティ?」」
葵とリョウがびっくりした顔でハモった。
やっぱり驚いたよね。
葵とリョウにそれぞれにパーティの招待状を両手で渡す。
いつもの居酒屋で最初の乾杯をする前に、二人に話すと決めていた。
「そ、一応お嬢さまだからさ。そんな面倒なことしなきゃいけないんだ」
「そんなことじゃなくって。どういうこと?」
葵が珍しく声を大きくしている。
リョウはただ黙って話を聞いている。
「どういうことって、何が?それよりも飲もう!」
「だめ、飲んじゃダメ。ちゃんと説明して」
カップを押さえられてしまった。
むぅ、ダメだったか。こんな時の葵はこわいなぁ。
きっと直様も尻にひかれてるんだろうな・・・。
「いや、ね。政略結婚っていうの?私、一応お嬢様でしょ?
家と家の結婚でさ。こればっかりはしょうがないことなのよ。うん。
これは今決まってたことじゃないし。ね。
前々から言われてきたことだし、覚悟もしてたし。
この年まで好き勝手させてもらったからさ」
葵はまだ納得してないという顔をしてるけど、しょうがない。
これは決まったことなのだ。
私はそんな家に生まれたのだからしょうがないの。
「ほら、そんな顔しないで。さ、飲もう飲もう」
グラスを無理やりくっつけて乾杯した後、グッと一気飲みした。
「う~。もえ~」
あ、葵が泣きそう?やばいぞ。
直様に怒られるよ、給料減給されちゃう。
「そんな顔しないで。いい人なんだよ。ちょっと額が後退してて将来怪しいけど。
まあ、直様に比べたら寂しいけどさ。浮気とかしなさそうだし」
一生懸命、葵を励ます。
「それで、あなたはいいの?もえ」
今まで静かに話を聞いていたリョウが口を開いた。
「いいのって言っても私に拒否権はないのよ。
一応あがいてたときもあるのよ?でも、なかなかうちのバカ親父を説得できる人いないのよね」
そう、私の父は自分の代で会社を立ち上げ、今では数え切れないほどの企業を手がけている。
すごくやり手で、ワンマンで、頭も回って。
そんな父に太刀打ちできる人間は正直ほぼいない。
くやしいけど、きくしかない。
「あなたらしくないわね」
「私らしくない?」
私らしいってなんなんだろう。
リョウが知っている私ってどんな私?
「そう、あなただったらもっとあがくと思ったけど?」
ニヤリと笑いながらグラスを空にした。
ああ、その表情さえも、いいと思った私は重症かも。
・・・・・・・。
ああ!
その手があったか!
「じゃあ、リョウ。協力してくれる?」
私が目をキラキラして言うもんだから、ちょっと引き気味のリョウ。
あ、ひどいな。
「もしかして、恋愛小説みたいなことしようというんじゃ・・・・・」
さすが、葵。
「そう、リョウ。そんなこと言うんだったら協力してよね」
私がニヤリと笑うと、とっても嫌な顔をされた。
そっとリョウに耳打ちして作戦を聞かせた。
「はぁ?本気で言ってるの?」
ニコニコ顔でうなずく私。
「お願い、付き合っているふりして。しばらくだったら支障ないでしょ?
リョウだって今は恋人いないんだし」
両手を合わせて拝む。
「そうだけど・・・・」
しばらく手を頬に当ててしばらく考え込む。
「そのかわりリョウの言うことなんでも聞く。私で出来ることなら」
「なんでも?」
何でもという言葉に食いついたリョウは、
「わかった。協力しましょう」
と言ってくれた。
「ありがと~、持つべきものはオカマの友達よね」
「ちょっと一言余計よ。失礼ねぇ」
なんていつものやり取りをしている私たちを葵は難しい顔で眺めていた。
「で、話とは?」
応接室の革張りの大きなソファーにどっしりと座り、その存在感が重々しい。
両手を組んでじっともえと、リョウを見つめる。
もえの父親、和夫は、二人の返事をじっと待っていた。
「お父様、婚約の話をなかったことにしてほしいのです」
「どうして?もうその話は済んだことだろう?」
一言一言、ずしりとお腹にくる。
自分の父親なのにどうしてこんなにも威圧感があるのか。
もえは幼い頃からこの父親が苦手だった。
ほとんど家にいなかったので接する時間もなかったが、何よりも見た目が熊みたいに大きいのだ。
しかも、若い頃はかなり鍛えていたらしい。
黙って座っているだけで悪いことをして怒られている感覚に陥るのだった。
「でも、あきらめられなかったのです。私、この人と別れることが出来ませんでした」
じろりとリョウを睨む。
リョウは飄々として座っていた。
「初めまして、竹内 涼 といいます。もえさんとは 数ヶ月前よりお付き合いさせていただいてます」
深々とお辞儀をしながら言うリョウはいつもと違って本当に男らしく見える。
一応、男なのにほんともったいないよなぁ。
「付き合っている男がいるなんて聞いてなかったが?」
そうよね、言ってなかったし付き合ってもないんだもん。
「言えばお父様が反対すると思ってたの。家柄がどうとか、仕事がどうとか。
私を幸せにすることができないと言うでしょ?」
「当たり前だ」
ダンっと机を叩いて威嚇された。
思わず。ビクッと肩が震えた。
リョウは前を見たままそっと私の手を握った。
まるで、大丈夫だよって言ってくれるみたいに。
この手がとても暖かくて、頼もしかった。
「お父様が何を言おうとこの方と分かれるつもりもなければ、
お父様が見つけてきた方とは結婚もしません」
私は生まれて初めてお父様に大きな声で反抗した。
面と向かってはっきりと反抗の意思を見せたのは初めてで汗がじっとりと額から流れるぐらい
怖かったけど、この手のぬくもりがある限り大丈夫だと思えた。
そう思えて握る手に力が入る。
今までリョウのことをただのオカマだって思ってた。
なのに、こんなにも頼もしい面があったなんて知らなかった。
リョウを見つめ、リョウもこっちを見つめてきた。
いつもと違う表情でドキドキする。
人をバカにして、男兄弟のように扱われ、リョウにとって自分はそんな存在だってわかってても
好きだって気持ちがあふれてきた。
どうしよう。止まんない。
こんなときなのに。
好きとか言ってる場合じゃないのに。
急な心の変化についていけないなんて。
どうしよう。
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