青空とエプロン

アオ

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僕だから気付く事

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 二人で生活をし始めてはや数ヶ月。
 

 リョウが、おかしい。

 そう、つい最近気がついた。

 自分では、普通にしているつもりだろうけど、かなりおかしい。

 態度が変とかじゃなくって、

 なんていったらいいんだろ。

 たとえば、テレビ見ているとき。

 たとえば、お風呂から上がったとき。

 目が合ったりするとドキドキするぐらいに真剣に見つめてくる。

 そしてびっくりするくらい綺麗な顔で微笑む。

 そんな時、どうしたらいいのかわからなくなる。

 



 「と、言うわけなのよ。なんでか知ってる?」

 「ん~。知ってるような、知らないような」

 葵は、カチャカチャと採血セットを片付けながら答える。

 どうも、今日は二次検診があったみたいで、仕事終了時間間際に駆け込んでくる人が

 数名いたみたい。

 時間になっても待ち合わせに来ない葵を迎えにきた私は手伝ってお片づけをしていた。

 「夫婦なんでしょ?話し合ったら?」

 まあどうせ形だけの夫婦なんだけどね。

 「葵のところは、何でも話すの?」
 
 「話すよぅ?といっても、直さんが勝手にいろんなことをしゃべってるだけだけど」
 
 あー、なんとなくわかる。そんな感じ。

 「ふふ、直様かわいぃ・・・」
 
 想像して思わず笑っちゃった。
 
 遠くにいた葵はあわてて私に駆け寄ると顔を近づける。
 
 「直様は、渡さないよ。たとえもえでも」

 かわいいなぁ。いじめたくなっちゃう。

 「そう?でも直様が私を選んだらしょうがないんじゃない?」

 「やーめーてー」

 耳を塞いでいやいやする。くく。いじめがいがあるわぁ。

 「オレの嫁さん、いじめないでくれる?」

 なんともいえないタイミングで医務室に現れる旦那様。
 
 「あら、いじめてなんかないですよ。私達、親友ですもの」

 ニコニコして直様に近寄ると葵が腕を引っ張る。

 「もえ・・・」

 いじめすぎちゃったかしら。

 「冗談よ。私には愛しい旦那さんがいるからね」

 そう、とっても愛しい旦那様。
 
 なのに、向こうはなんとも思ってないんだもの。寂しいものよね。

 「愛しい・・・・ね。ちゃんと大事にしてもらってるか?」

 直様は直属の上司だから、心配なんでしょ。

 まったく心配性なんだから。

 「大事にしてもらってますよ。かなり尽くされてるんですから」

 そりゃあ朝から晩までいろいろやってもらってる。
 
 私がやろうとしても邪魔扱いされるし。

 だからお礼だけはちゃんと言うようにしている。

 たまにお礼にってリョウの好きなDVD借りてきたり、

 ケーキを買ってきたり。

 それを二人にソファーで座りながら食べたりするのが幸せなのよね~。

 思い出しながらついにやけてしまうわ。

 「もえ、楽しそうね」

 にやけながら両頬を両手で挟んでたら葵がうれしそうに言った。

 「うん、毎日楽しいわよ」
 
 なんてのろけてしまった。この私が、のろけるなんて。

 でもいいんだ。ほんとだもの。

 ニヤケて答えた私の肩をポンポンッと叩いて

 「今度、二人で遊びにおいで。ぜひリョウにものろけてもらいたいから」

 と直様が言ってくれた。

 そうだね、今度リョウに遊びにいこうって誘ってみよう。









 準備が出来た葵とともにいつもの居酒屋へ。

 仕事が残っている直様は申しわけないけど後で合流。

 リョウは・・・・。

 「たぶんねー。この前の女の人と会ってると思うんだ」

 ほろ酔いになってきた私は愚痴るように葵に白状した。

 そう、きっとあの人と会ってる。
 
 誰とあうとか言ってないけどたぶんそう。

 私の中の野生の感がそういってる。

 「この前のって、もえが喧嘩した人?」
 
 「そうです。喧嘩売ってきた人です」

 ブスッとしながら焼酎を掲げて中身を覗く。意味はないけど。

 「リョウとはちゃんと話したの?」

 あの後、誰と会ったのか結局聞けなかった。

 聞くのが怖いのか。

 ううん。怖いとかそんなのはない。

 浮気とかじゃないと絶対思う。

 「じゃあなんで?」

 「んー。リョウなりにちゃんと理由があるとおもうのよね。

 リョウが話さないと言う事は今はまだ聞くべきじゃないかなって。

 時期がきたらちゃんと話してくれると思うんだよね」

 「さーすが、私の奥様だわ」

 後ろからリョウの声がした。

 びっくりして振り向くとハーイと手を挙げてリョウが立っていた。

 「どうしたの?今日も出かけたんじゃないの?」

 「んー。そうなんだけどここに合流したかったからさっさと切り上げてきちゃった」

 お店の店員さんにビールと注文しながら横に座る。

 「それよりも直様は?」

 さっきの話を聞かれていたと思うとなんともいえない気持ちになる。

 リョウは気にも留めていないみたいだけど

 私が気にしている事は分かったと思う。

 どぎまぎしている私の横で葵と直様のはなしで盛り上がっていた。
 
 なにやらとてもうれしそう。

 そんな顔をみると、ああやっぱり男の人が好きなんだって思い知らされる。

 女の私を恋愛対象として好きになってくれる日は来ないんだろうなぁ。

 でも、最近のリョウの表情は変わってきてるようなないような・・・・。

 「もえ、何百面相してんのよ。大丈夫?」

 いつの間にかいろいろ考えていたのが顔に出ていたらしい。

 「う、ううん。何もない」

 ごまかすためにコップに残った焼酎を一気飲みする。

 くー。胃にくるー。

 「さ、次のたのもう。焼酎のお湯割梅干し入りね~」

 こんなときは飲むしかない。考えたって答えはリョウ本人しか知らないのだから。

 葵とリョウはあきれた顔してたけど気にせずどんどん飲み物を頼み、

 直様が来た時にはすっかり出来上がってしまった。

 そして強制送還される私。

 「おつかれさまでした~」

 フラフラしながらも上司である直様にぺこりと挨拶をする。

 「ああ、もういいから。リョウ、頼むぞ」

 「はいはい。まったくうちの奥様はすぐ飲みすぎるんだから」

 ブツブツ言いながら私を支えてタクシーのほうへと向う。

 私はリョウに抱えられるままフラフラと歩いていた。99%夢の中にいる。

 「リョウ!」

 すでに遠くになった葵がリョウを呼び止めた。

 「?」

 振り向いたリョウに向かってこう聞いた。

 「リョウ、リョウは幸せ?」

 リョウの表情は私には見えなかった。だって腰をほぼ抱えられて下を向いてたから。

 葵はしばらく沈黙した後、

 「おやすみ~。」

 と去っていった。

 そして私は深い深い眠りについてしまった。


 









 タクシーの中。

 リョウは行き先を告げてもえの頭を自分の膝の上に乗せた。

 ふぅっとため息をついてもえの髪を撫でる。最近、カットしたこの髪型は

 もえによく似合っていた。

 くるくると自分の指に髪を絡ませながら葵の質問を思い出していた。

 なんでそんな質問してきたのだろうか。

 最近のもえの変化に関係しているのかしら。

 毎日、一緒に生活している私だから気付いた事。

 もえの表情の変化。

 些細なことでももえの変化に気がついてつい顔がほころんでしまう。
 
 こんなこと、もえは気付いているんだろうか?

 多分、気付いてないだろうな。

 うちの奥さんは。

 すやすやと幸せそうに微笑みながら眠っているもえのまぶたにそっとキスを落とす。

 キスをされた場所をぼりぼりかきむしる姿をもえをみて、

 リョウは優しく微笑んだ。


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