青空とエプロン

アオ

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オレンジの陽

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 なんだかうれしくってつい抱きついちゃった私。

 冷静に考えれば、私に抱きつかれてもリョウとしてはうれしくないよね。

 女の私に抱きつかれるよりは直様に抱きつかれたほうが、うれしいだろう。

 「ご、ごめん。つい抱きついちゃった」

 あわててリョウから離れようとするけど、意外とがっしりとしたリョウの両手が

 私の腰を掴んで離してくれない。

 「リョ、リョウ?」

 思わず手を回された腰を見た。

 私の両腕はリョウの首にまわしたままで、なんだかとても恥かしいのですが。

 「あら、離さないわよ。せっかくもえの方から抱きついてきたんですもの」
 
 語尾にハートマークがついているのは気のせいかな。
 
 「やっとうちの奥さんが私に触ってくれたんだもの、もっと堪能させて頂戴」

 そういって私をグッと引き寄せて苦しいほど抱きしめられてしまった。

 なんだか、リョウのキャラじゃないんだけど。

 でもどうすればいいのかわかんなくってただ大人しく抱きしめられていた。

 しばらくすると、

 「うん。やっぱりもえなら私大丈夫みたい。

 というか、もえなら欲情する」
 
 あの。

 いま、爆弾発言しませんでしたか?

 欲情って、欲情って・・・・・・。

 「もえのそばにいたらなんだか女の子に対して大丈夫になったのかなって思ったんだけど、

 どうももえ限定みたい。

 もえしか、こんなふうに抱きしめたいとか、

 キスしたりとか、

 思わないみたいだわ」

 どんどんと、爆弾を落としていくリョウに私はついていけなくなる。

 抱きしめる?

 キス?

 そんなセリフがリョウの口から出来るたびに心拍数が上昇する。

 ど、どうしたらいいのかしら。

 自分の一方通行だと思い込んでいたのに。

 これって、これってリョウも私のこと好きだっていうことだよね。

 

 たぶん・・・・。



 
 うーんうーん唸りながら考えていると、リョウは体を少し離して

 私の両脇を抱えると膝の上にのせ、

 お互いの顔がよく見えるようになる。

 真正面から今リョウを見ると恥かしくってどうも照れくさいから、

 思わず下を向く。

 「ちょっと、ちゃんと顔を見せて」

 「いや」

 「もえ」

 リョウの真剣な声で思わず顔を見てしまった。

 「私の人生の中で女と意識しても愛おしいと想えるのはもえだけよ。

 この先もずっと。

 もえにとって私は姉妹か、おかんみたいなものかもしれないけど、

 私はあなたのこと愛してるから」

 



 愛してるから ―――――――― 。




 リョウが私を愛してくれる。
 

 
 じゃあ、私は片思いじゃなかったんだ。

 


 ちゃんと繋がってたんだ。








 信じられない気持ちと、うれしさでどうにかなりそうで。

 両手で顔を隠して下を向いてしまった。
 
 そして、ぽろぽろと涙が出てきた。



 リョウは私のことを女性としては受け入れてくれないとわかっていても

 自分の気持ちを抑え切れなくてそれが切なくて泣きそうになっても

 自分がリョウのことを好きでいられればいいやって思って

 一緒にいられれば幸せだって思っていた。

 それなのに、それなのに。


 

 「もえ?ごめん。驚かせちゃった?ごめんね」

 私が泣いちゃったもんだから、リョウは私をそっと抱きしめながら頭を撫でた。

 「ちがう、ちがうの」

 私もちゃんと気持ちを伝えないと。

 涙を洋服の袖でゴシゴシと拭いてまっすぐにリョウを見た。

 「いつもおかん扱いしたりしてたけど違う。

 私、リョウのことずっと前から好きだった。

 リョウが子供と遊んでいたのを見たときから、好きになってしまったの。

 だから、リョウに協力してもらうように頼んでしまって・・・・。
 
 まさか、結婚出来るようになるとは思わなかったけど、

 リョウのそばにいれるだけで幸せだった。

 毎日がすごくすごく楽しかった。

 私の片思いだってわかっていても楽しかった」

 一呼吸ついて私の頭にあったリョウの両手を私の両手で包み込んだ。

 「だから・・・・。だから・・・・私すごくうれしいの。
 
 リョウが私と同じ気持ちだとわかったら涙が出ちゃっ!」





 最後まで言葉が出る前にリョウが優しく私にキスをした。

 最初はついばむように。

 だんだんと深くなり舌が絡まり合う。

 その合間に私の名前をささやく。

 甘く切ない声で。

 こんな声で呼ばれるなんて私は溶けてしまうかもしれない。

 あーもー幸せ。

 こんなに幸せでいいのかしら。

 「こんなに幸せでいいのかしら」

 はぁっと溜息をつきなががらリョウは私を抱きしめた。

 同じことを考えていたかと思うとおかしくなってクスクスと笑う。

 「同じこと考えてた。似たもの夫婦だね」

 その言葉にリョウもクスクスと笑った。




 夫婦かぁ。

 
 私たち、やっと本物の夫婦になれたような気がする。

 

 リョウに抱きつきながら窓の外をみると、いつの間にか夕暮れになっていて、

 オレンジ色の陽が窓いっぱいに差し込んでいた。

 「きれい・・・・・」

 「ほんと・・・・。あ。洗濯物入れなきゃ」

 いきなり現実に戻ったリョウはベランダに向ってさっさと行ってしまって

 取り残された私はがっくりきてうなだれてしまった。

 ちょっと、あんなにいいムードだったのに。どうよ、これって。

 


 でも。

 

 リョウらしいか。


 
 誰よりもエプロンが似合って、

 青空の下で子供と遊ぶのが似合っている男の人。


 

 それが私の愛しい愛しい旦那様なのだ。








 「リョウ~。私も手伝う~」

 そう言って私はリョウのいるベランダへと向った。


 
 
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