【完結】悪女を押し付けられていた第一王女は、愛する公爵に処刑されて幸せを得る

甘海そら

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【回想】処刑の日の彼ら

4、説明

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「処刑の偽装……ですか?」

 落ち着けば、早速キシオンは説明を始めてくれたのだった。
 椅子に着いてのメアリの問いかけに、彼はソファの上で「えぇ」と頷く。

「そういうことですかね。今日のアレコレはそのためのこと。で、貴女の処刑はさきほど終わりました。これで貴女は晴れて死んだ身ということになるでしょう」

 晴れての使い方はそれであっているのかどうか。
 不思議に思ったが、それはともかくだ。
 
 メアリは思い出していた。
 地下牢でのことだ。
 キシオンの従者は2人がかりで大きな麻袋を運んでいたが……

「あ、あの……身代わりということでしょうか?」

「それはそうです。絞首台が空では誰も納得しませんから。あ、そうですそうです。貴女が着ていた服ですが、それはもちろん身代わりに使わせて……」

「な、なんということをしたのですか!?」

 当然、腰を浮かせて叫ぶことになった。
 だが、キシオンにはその理由が分からないらしい。
 目を白黒とさせて見返してくる。

「え、えーと、何です? 服ですけど、そんな大事でした?」

「そういうことではありません!! 身代わりだなんて、そんな酷いことを……っ!!」

 自らの代わりに、絞首台にて苦悶の内に命を断たれた誰かがいる。
 そうとなれば叫ばざるを得なかったのだ。
 キシオンも理解したようだった。
 なるほどと頷きを見せた。

「そこについてですか。それは、うん。貴女であれば当然気にしますか」

「だ、誰だって気にします!! 当たり前じゃないですか!?」

「いや、そこは貴女のご家族を思い浮かべてもらえばいいですが……あー、そこは大丈夫です。貴女はですが、牢屋の中で死亡したことになっていますから」

 メアリは首をかしげることになった。

「牢屋の中で死亡?」

「そうです。抵抗した末に不慮の事故と。ですので、誰かが絞首台で苦しんだわけではありません。貴女の身代わりになったのは死体ですから」

「では、あの麻袋の中には……え? ま、まさか、私に似た誰かを手にかけ……っ!?」

「ち、違います違います! あれは、王都の犯罪者の死体ですから! 夫を殺したからって牢屋にいた人ですから!」

 どういうことかと首をかしげ続けるメアリに、キシオンは「はぁ」とため息をこぼしつつに応えてくる。

「まったく、少しは俺を信じてもらいたいものですけどね。法務卿として、俺は王都における犯罪者の管理を任せられていますから。それで、貴女と同じ年頃の女性が獄中死したとなりましたので」

「……では、私のために犠牲になった方は?」

「いません。まぁ、彼女の死体には酷いことをしましたから。その辺りは、ほとぼりが冷めた頃にでも彼女の家族に相当の行いをしたいと思っています」

 一応のところ、一安心しても良さそうな回答だった。
 メアリが椅子に座り直せば、キシオンがあらためて口を開いてくる。

「とにかく、そういうことです。身代わりになり得る死体を手に入れて、それで貴女を処刑にと話を持ってきた感じですかね」

「もしかしてですが、お父様が領主に冤罪を着せた話も?」

「そりゃ当然です。俺となります。一部界隈では有名だった話ですので。真偽は不明でしたが、貴女を処刑に持っていくには十分であったかと」

 結果がこれであれば頷くことになる。
 キシオンもまた一度頷きを見せ……そして、「はぁ」と疲労感の見えるため息をついた。

「ど、どうされました?」

「いや? 良かったなと思いまして。早めに理想の死体を手に入れられて本当に良かった。一応、貴女が楽になれるように振る舞ったつもりだったのですが、あのバカ母娘め。下手をすれば、死んでいましたよ」

 彼が話しているのは母と妹のあの不祥事についてに違いなかった。
 確かに、あの件では死を身近にすることになったが、メアリの関心はそこには無かった。

「……やっぱり、私のために前に出てくれたんですね」

 ほほ笑みと共に口にする。
 キシオンは「まぁ」と頷きを見せた。

「俺の計画が露呈しない範囲で何かしようと思いましてね。お気づきでしたか?」

「はい。それで……この指輪も?」

 メアリは左手にはめ直してあった指輪を見せる。 
 キシオンは不思議な苦笑を見せてきた。

「まぁ、それは貴女のためでは無いですけどね。何も出来なかった自分が悔しければ、いつかへの決意も込めて見張りに分からないように渡させてもらいました。どうですかね? 何か役に立ちましたか」

 メアリは右手で指輪を包めば、笑みで頷く。

「……はい。これが無ければ、私は多分壊れていました。いえ、間違いなく。私はきっと生きていても、生きてはいないような状態で……キシオン」

 思わずだった。
 メアリは立ち上がる。
 背筋を伸ばせば、ほほ笑みと共に頭を下げる。

「……ありがとうございました。生きてきて本当に良かったです」

 頭を上げると、キシオンは小さくほほ笑みを見せてきた。
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