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【回想】処刑の日の彼ら
5、決意
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「そうですか。しかしまぁ、申し訳ない。時間がかかり過ぎました。この計画のためには、法務卿として貴女の処刑を取り仕切る必要があったのですがね。それを継ぐには、やはりそれなりの年齢が必要でして」
申し訳なさそうなキシオンに、メアリは慌てて首を左右にする。
「わ、悪いなんてとんでも無いです! 嬉しかったですから! 本当に嬉しかったです!」
「ははは、そうですか。そう言って貰えると、俺も多少は罪悪感を抱かずにすみます。まぁ、ゆっくりして下さい。今までの分というわけでは無いですが、ゆっくり骨身を休めてもらえれば」
メアリは笑みで頷きを見せることになるが……次いで、首をかしげることになった。
「しかし……どうなのでしょう?」
「はい? どうなのとは?」
「これからだけど、私はここで過ごさせていただくの? それは……ご迷惑では?」
メアリとしては、ここで死ぬまで閉じこもって過ごしたところで不満など何も無い。
欲を言えばたまにはキシオンに会いたいが、その他に問題などは何も無かった。
ただ、問題はキシオンだ。
自分を隠していることが露呈してしまった時に、彼がどんな目に会うのか?
これは間違いなく王家に対する裏切り行為だ。
処刑を偽装したこともそうであれば、王家から便利な悪女を奪ったことが大きい。
それらを考えると、素直にキシオンに甘えることは出来なかった。
メアリは思案する。
自らここから消える必要もあるだろうか。
もちろん、頼る先も無ければそれは死と同義だが、キシオンのためであればそれもかまわなかった。
「……はぁ」
そんな決意を固めたところでのキシオンだった。
その露骨な呆れのため息に、メアリは首をかしげることになる。
「ど、どうしました?」
問いかければ、キシオンはジトッとした半目でにらみつけてくる。
「……迷惑であれば死んでもかまわない。でしょ? 絶対ですよね? 絶対にそんなこと思ってますよね?」
メアリは「え?」と目を丸くすることになる。
「あ、あの、その、え? ……も、もしかして心が?」
「読めるわけありませんけど、顔に書いてあれば分かりますって。その辺りが貴女の長所でもあるが……はぁ。そのせいで、あのバカ王家が調子づいたわけで。少し考えた方がいいと思いますよ?」
その助言の是非はともあれだった。
メアリは本題について不安の表情を見せることになる。
「ですが、やはりご迷惑では? 私を隠していることが露見すれば、貴方はもちろんシュラネス家も……」
「そんなことは心配しなくて大丈夫です。多分ですが、そんなに長いことここに隠れる必要は無いでyそうから」
メアリは首をかしげることになる。
「ここに隠れる必要は無い? 他に安全な隠れ場所があるということ?」
「そもそも、俺は貴女に隠遁生活を送らせるつもりは無いから。貴女には早々に表舞台に戻ってもらうつもりです」
このキシオンの言葉の意味が、メアリにはまったく理解出来なかった。
「お、表舞台ですか? え、えーと、再び王宮に? あの、悪女として?」
「はい? そんなことを俺がまさか強いると思います?」
心外とばかりにキシオンだった。
メアリは慌てて頭を下げる。
「す、すみません。でしたら……えーと?」
問いかければ、キシオンは「ふん」とニヤリと笑った。
「悪女は死んだのですよ? これであの王家のバカ共が上手くやっていけると思います? 今まで通りにやっていけると思います?」
「それは今まで通りは難しいかと思いますが……あの、もしや?」
多少察せられるところがあった。
キシオンは不敵な笑みで頷きを見せる。
「そういうことです。必ず、問題が起きます。そして、皆が気づく瞬間が来ます。悪女とは何だったのか? 王家の連中は、悪女を利用して何を隠してきたのか?」
キシオンは大きく足を組んだ。
彼の鋭い双眸には凄絶な光が宿っていた。
「とにかくです。貴女を散々もてあそんでくれた礼をね。あの連中にしてやらないと俺の収まりがつかないって話ですよ。少なくとも、連中には表舞台から去ってもらいますが……まさかですよ? 貴女はそれに否とは言いませんよね?」
否と言ったところで聞くつもりは無い。
そんなキシオンのまとう雰囲気だった。
では、自分はどうなのだろうか?
メアリは考えることになる。
彼らには退場してもらう。
おそらくは、二度と国内の政治には関わらせないということになるだろう。
思い返すことになる。
彼らの言動を思い返す。
彼らは果たして、この国を担うに足る何かを示したことがあったのか?
彼らの存在が国民たちにとって有益であるのかどうか?
「……分かりました」
メアリはキシオンに頷きを見せる。
「私は悪女として彼らの悪行を助長してきました。であれば……ブラント国民のためです。その責任を取る必要があるでしょう」
責任をもって、表舞台から彼らを排除する。
メアリはそう決心した。
キシオンは「また自罰的ですねと」と苦笑を浮かべながらに頷きを見せた。
申し訳なさそうなキシオンに、メアリは慌てて首を左右にする。
「わ、悪いなんてとんでも無いです! 嬉しかったですから! 本当に嬉しかったです!」
「ははは、そうですか。そう言って貰えると、俺も多少は罪悪感を抱かずにすみます。まぁ、ゆっくりして下さい。今までの分というわけでは無いですが、ゆっくり骨身を休めてもらえれば」
メアリは笑みで頷きを見せることになるが……次いで、首をかしげることになった。
「しかし……どうなのでしょう?」
「はい? どうなのとは?」
「これからだけど、私はここで過ごさせていただくの? それは……ご迷惑では?」
メアリとしては、ここで死ぬまで閉じこもって過ごしたところで不満など何も無い。
欲を言えばたまにはキシオンに会いたいが、その他に問題などは何も無かった。
ただ、問題はキシオンだ。
自分を隠していることが露呈してしまった時に、彼がどんな目に会うのか?
これは間違いなく王家に対する裏切り行為だ。
処刑を偽装したこともそうであれば、王家から便利な悪女を奪ったことが大きい。
それらを考えると、素直にキシオンに甘えることは出来なかった。
メアリは思案する。
自らここから消える必要もあるだろうか。
もちろん、頼る先も無ければそれは死と同義だが、キシオンのためであればそれもかまわなかった。
「……はぁ」
そんな決意を固めたところでのキシオンだった。
その露骨な呆れのため息に、メアリは首をかしげることになる。
「ど、どうしました?」
問いかければ、キシオンはジトッとした半目でにらみつけてくる。
「……迷惑であれば死んでもかまわない。でしょ? 絶対ですよね? 絶対にそんなこと思ってますよね?」
メアリは「え?」と目を丸くすることになる。
「あ、あの、その、え? ……も、もしかして心が?」
「読めるわけありませんけど、顔に書いてあれば分かりますって。その辺りが貴女の長所でもあるが……はぁ。そのせいで、あのバカ王家が調子づいたわけで。少し考えた方がいいと思いますよ?」
その助言の是非はともあれだった。
メアリは本題について不安の表情を見せることになる。
「ですが、やはりご迷惑では? 私を隠していることが露見すれば、貴方はもちろんシュラネス家も……」
「そんなことは心配しなくて大丈夫です。多分ですが、そんなに長いことここに隠れる必要は無いでyそうから」
メアリは首をかしげることになる。
「ここに隠れる必要は無い? 他に安全な隠れ場所があるということ?」
「そもそも、俺は貴女に隠遁生活を送らせるつもりは無いから。貴女には早々に表舞台に戻ってもらうつもりです」
このキシオンの言葉の意味が、メアリにはまったく理解出来なかった。
「お、表舞台ですか? え、えーと、再び王宮に? あの、悪女として?」
「はい? そんなことを俺がまさか強いると思います?」
心外とばかりにキシオンだった。
メアリは慌てて頭を下げる。
「す、すみません。でしたら……えーと?」
問いかければ、キシオンは「ふん」とニヤリと笑った。
「悪女は死んだのですよ? これであの王家のバカ共が上手くやっていけると思います? 今まで通りにやっていけると思います?」
「それは今まで通りは難しいかと思いますが……あの、もしや?」
多少察せられるところがあった。
キシオンは不敵な笑みで頷きを見せる。
「そういうことです。必ず、問題が起きます。そして、皆が気づく瞬間が来ます。悪女とは何だったのか? 王家の連中は、悪女を利用して何を隠してきたのか?」
キシオンは大きく足を組んだ。
彼の鋭い双眸には凄絶な光が宿っていた。
「とにかくです。貴女を散々もてあそんでくれた礼をね。あの連中にしてやらないと俺の収まりがつかないって話ですよ。少なくとも、連中には表舞台から去ってもらいますが……まさかですよ? 貴女はそれに否とは言いませんよね?」
否と言ったところで聞くつもりは無い。
そんなキシオンのまとう雰囲気だった。
では、自分はどうなのだろうか?
メアリは考えることになる。
彼らには退場してもらう。
おそらくは、二度と国内の政治には関わらせないということになるだろう。
思い返すことになる。
彼らの言動を思い返す。
彼らは果たして、この国を担うに足る何かを示したことがあったのか?
彼らの存在が国民たちにとって有益であるのかどうか?
「……分かりました」
メアリはキシオンに頷きを見せる。
「私は悪女として彼らの悪行を助長してきました。であれば……ブラント国民のためです。その責任を取る必要があるでしょう」
責任をもって、表舞台から彼らを排除する。
メアリはそう決心した。
キシオンは「また自罰的ですねと」と苦笑を浮かべながらに頷きを見せた。
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