23 / 29
【回想】処刑の日の彼ら
5、決意
しおりを挟む
「そうですか。しかしまぁ、申し訳ない。時間がかかり過ぎました。この計画のためには、法務卿として貴女の処刑を取り仕切る必要があったのですがね。それを継ぐには、やはりそれなりの年齢が必要でして」
申し訳なさそうなキシオンに、メアリは慌てて首を左右にする。
「わ、悪いなんてとんでも無いです! 嬉しかったですから! 本当に嬉しかったです!」
「ははは、そうですか。そう言って貰えると、俺も多少は罪悪感を抱かずにすみます。まぁ、ゆっくりして下さい。今までの分というわけでは無いですが、ゆっくり骨身を休めてもらえれば」
メアリは笑みで頷きを見せることになるが……次いで、首をかしげることになった。
「しかし……どうなのでしょう?」
「はい? どうなのとは?」
「これからだけど、私はここで過ごさせていただくの? それは……ご迷惑では?」
メアリとしては、ここで死ぬまで閉じこもって過ごしたところで不満など何も無い。
欲を言えばたまにはキシオンに会いたいが、その他に問題などは何も無かった。
ただ、問題はキシオンだ。
自分を隠していることが露呈してしまった時に、彼がどんな目に会うのか?
これは間違いなく王家に対する裏切り行為だ。
処刑を偽装したこともそうであれば、王家から便利な悪女を奪ったことが大きい。
それらを考えると、素直にキシオンに甘えることは出来なかった。
メアリは思案する。
自らここから消える必要もあるだろうか。
もちろん、頼る先も無ければそれは死と同義だが、キシオンのためであればそれもかまわなかった。
「……はぁ」
そんな決意を固めたところでのキシオンだった。
その露骨な呆れのため息に、メアリは首をかしげることになる。
「ど、どうしました?」
問いかければ、キシオンはジトッとした半目でにらみつけてくる。
「……迷惑であれば死んでもかまわない。でしょ? 絶対ですよね? 絶対にそんなこと思ってますよね?」
メアリは「え?」と目を丸くすることになる。
「あ、あの、その、え? ……も、もしかして心が?」
「読めるわけありませんけど、顔に書いてあれば分かりますって。その辺りが貴女の長所でもあるが……はぁ。そのせいで、あのバカ王家が調子づいたわけで。少し考えた方がいいと思いますよ?」
その助言の是非はともあれだった。
メアリは本題について不安の表情を見せることになる。
「ですが、やはりご迷惑では? 私を隠していることが露見すれば、貴方はもちろんシュラネス家も……」
「そんなことは心配しなくて大丈夫です。多分ですが、そんなに長いことここに隠れる必要は無いでyそうから」
メアリは首をかしげることになる。
「ここに隠れる必要は無い? 他に安全な隠れ場所があるということ?」
「そもそも、俺は貴女に隠遁生活を送らせるつもりは無いから。貴女には早々に表舞台に戻ってもらうつもりです」
このキシオンの言葉の意味が、メアリにはまったく理解出来なかった。
「お、表舞台ですか? え、えーと、再び王宮に? あの、悪女として?」
「はい? そんなことを俺がまさか強いると思います?」
心外とばかりにキシオンだった。
メアリは慌てて頭を下げる。
「す、すみません。でしたら……えーと?」
問いかければ、キシオンは「ふん」とニヤリと笑った。
「悪女は死んだのですよ? これであの王家のバカ共が上手くやっていけると思います? 今まで通りにやっていけると思います?」
「それは今まで通りは難しいかと思いますが……あの、もしや?」
多少察せられるところがあった。
キシオンは不敵な笑みで頷きを見せる。
「そういうことです。必ず、問題が起きます。そして、皆が気づく瞬間が来ます。悪女とは何だったのか? 王家の連中は、悪女を利用して何を隠してきたのか?」
キシオンは大きく足を組んだ。
彼の鋭い双眸には凄絶な光が宿っていた。
「とにかくです。貴女を散々もてあそんでくれた礼をね。あの連中にしてやらないと俺の収まりがつかないって話ですよ。少なくとも、連中には表舞台から去ってもらいますが……まさかですよ? 貴女はそれに否とは言いませんよね?」
否と言ったところで聞くつもりは無い。
そんなキシオンのまとう雰囲気だった。
では、自分はどうなのだろうか?
メアリは考えることになる。
彼らには退場してもらう。
おそらくは、二度と国内の政治には関わらせないということになるだろう。
思い返すことになる。
彼らの言動を思い返す。
彼らは果たして、この国を担うに足る何かを示したことがあったのか?
彼らの存在が国民たちにとって有益であるのかどうか?
「……分かりました」
メアリはキシオンに頷きを見せる。
「私は悪女として彼らの悪行を助長してきました。であれば……ブラント国民のためです。その責任を取る必要があるでしょう」
責任をもって、表舞台から彼らを排除する。
メアリはそう決心した。
キシオンは「また自罰的ですねと」と苦笑を浮かべながらに頷きを見せた。
申し訳なさそうなキシオンに、メアリは慌てて首を左右にする。
「わ、悪いなんてとんでも無いです! 嬉しかったですから! 本当に嬉しかったです!」
「ははは、そうですか。そう言って貰えると、俺も多少は罪悪感を抱かずにすみます。まぁ、ゆっくりして下さい。今までの分というわけでは無いですが、ゆっくり骨身を休めてもらえれば」
メアリは笑みで頷きを見せることになるが……次いで、首をかしげることになった。
「しかし……どうなのでしょう?」
「はい? どうなのとは?」
「これからだけど、私はここで過ごさせていただくの? それは……ご迷惑では?」
メアリとしては、ここで死ぬまで閉じこもって過ごしたところで不満など何も無い。
欲を言えばたまにはキシオンに会いたいが、その他に問題などは何も無かった。
ただ、問題はキシオンだ。
自分を隠していることが露呈してしまった時に、彼がどんな目に会うのか?
これは間違いなく王家に対する裏切り行為だ。
処刑を偽装したこともそうであれば、王家から便利な悪女を奪ったことが大きい。
それらを考えると、素直にキシオンに甘えることは出来なかった。
メアリは思案する。
自らここから消える必要もあるだろうか。
もちろん、頼る先も無ければそれは死と同義だが、キシオンのためであればそれもかまわなかった。
「……はぁ」
そんな決意を固めたところでのキシオンだった。
その露骨な呆れのため息に、メアリは首をかしげることになる。
「ど、どうしました?」
問いかければ、キシオンはジトッとした半目でにらみつけてくる。
「……迷惑であれば死んでもかまわない。でしょ? 絶対ですよね? 絶対にそんなこと思ってますよね?」
メアリは「え?」と目を丸くすることになる。
「あ、あの、その、え? ……も、もしかして心が?」
「読めるわけありませんけど、顔に書いてあれば分かりますって。その辺りが貴女の長所でもあるが……はぁ。そのせいで、あのバカ王家が調子づいたわけで。少し考えた方がいいと思いますよ?」
その助言の是非はともあれだった。
メアリは本題について不安の表情を見せることになる。
「ですが、やはりご迷惑では? 私を隠していることが露見すれば、貴方はもちろんシュラネス家も……」
「そんなことは心配しなくて大丈夫です。多分ですが、そんなに長いことここに隠れる必要は無いでyそうから」
メアリは首をかしげることになる。
「ここに隠れる必要は無い? 他に安全な隠れ場所があるということ?」
「そもそも、俺は貴女に隠遁生活を送らせるつもりは無いから。貴女には早々に表舞台に戻ってもらうつもりです」
このキシオンの言葉の意味が、メアリにはまったく理解出来なかった。
「お、表舞台ですか? え、えーと、再び王宮に? あの、悪女として?」
「はい? そんなことを俺がまさか強いると思います?」
心外とばかりにキシオンだった。
メアリは慌てて頭を下げる。
「す、すみません。でしたら……えーと?」
問いかければ、キシオンは「ふん」とニヤリと笑った。
「悪女は死んだのですよ? これであの王家のバカ共が上手くやっていけると思います? 今まで通りにやっていけると思います?」
「それは今まで通りは難しいかと思いますが……あの、もしや?」
多少察せられるところがあった。
キシオンは不敵な笑みで頷きを見せる。
「そういうことです。必ず、問題が起きます。そして、皆が気づく瞬間が来ます。悪女とは何だったのか? 王家の連中は、悪女を利用して何を隠してきたのか?」
キシオンは大きく足を組んだ。
彼の鋭い双眸には凄絶な光が宿っていた。
「とにかくです。貴女を散々もてあそんでくれた礼をね。あの連中にしてやらないと俺の収まりがつかないって話ですよ。少なくとも、連中には表舞台から去ってもらいますが……まさかですよ? 貴女はそれに否とは言いませんよね?」
否と言ったところで聞くつもりは無い。
そんなキシオンのまとう雰囲気だった。
では、自分はどうなのだろうか?
メアリは考えることになる。
彼らには退場してもらう。
おそらくは、二度と国内の政治には関わらせないということになるだろう。
思い返すことになる。
彼らの言動を思い返す。
彼らは果たして、この国を担うに足る何かを示したことがあったのか?
彼らの存在が国民たちにとって有益であるのかどうか?
「……分かりました」
メアリはキシオンに頷きを見せる。
「私は悪女として彼らの悪行を助長してきました。であれば……ブラント国民のためです。その責任を取る必要があるでしょう」
責任をもって、表舞台から彼らを排除する。
メアリはそう決心した。
キシオンは「また自罰的ですねと」と苦笑を浮かべながらに頷きを見せた。
52
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします
たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。
荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。
「この猫に構うな。人間嫌いだから」
冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。
猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。
婚約破棄?結構ですわ。公爵令嬢は今日も優雅に生きております
鍛高譚
恋愛
婚約破棄された直後、階段から転げ落ちて前世の記憶が蘇った公爵令嬢レイラ・フォン・アーデルハイド。
彼女の前世は、ブラック企業で心身をすり減らして働いていたOLだった。――けれど、今は違う!
「復讐? 見返す? そんな面倒くさいこと、やってられませんわ」
「婚約破棄? そんなの大したことじゃありません。むしろ、自由になって最高ですわ!」
貴族の婚姻は家同士の結びつき――つまりビジネス。恋愛感情など二の次なのだから、破談になったところで何のダメージもなし。
それよりも、レイラにはやりたいことがたくさんある。ぶどう園の品種改良、ワインの販路拡大、新商品の開発、そして優雅なティータイム!
そう、彼女はただ「貴族令嬢としての特権をフル活用して、人生を楽しむ」ことを決めたのだ。
ところが、彼女の自由気ままな行動が、なぜか周囲をざわつかせていく。
婚約破棄した王太子はなぜか複雑な顔をし、貴族たちは彼女の事業に注目し始める。
そして、彼女が手がけた最高級ワインはプレミア化し、ついには王室から直々に取引の申し出が……!?
「はぁ……復讐しないのに、勝手に“ざまぁ”になってしまいましたわ」
復讐も愛憎劇も不要!
ただひたすらに自分の幸せを追求するだけの公爵令嬢が、気づけば最強の貴族になっていた!?
優雅で自由気ままな貴族ライフ、ここに開幕!
殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!
さら
恋愛
王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。
――でも、リリアナは泣き崩れなかった。
「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」
庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。
「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」
絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。
「俺は、君を守るために剣を振るう」
寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。
灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。
心を病んでいるという嘘をつかれ追放された私、調香の才能で見返したら調香が社交界追放されました
er
恋愛
心を病んだと濡れ衣を着せられ、夫アンドレに離縁されたセリーヌ。愛人と結婚したかった夫の陰謀だったが、誰も信じてくれない。失意の中、亡き母から受け継いだ調香の才能に目覚めた彼女は、東の別邸で香水作りに没頭する。やがて「春風の工房」として王都で評判になり、冷酷な北方公爵マグナスの目に留まる。マグナスの支援で宮廷調香師に推薦された矢先、元夫が妨害工作を仕掛けてきたのだが?
断罪された私ですが、気づけば辺境の村で「パン屋の奥さん」扱いされていて、旦那様(公爵)が店番してます
さら
恋愛
王都の社交界で冤罪を着せられ、断罪とともに婚約破棄・追放を言い渡された元公爵令嬢リディア。行き場を失い、辺境の村で倒れた彼女を救ったのは、素性を隠してパン屋を営む寡黙な男・カイだった。
パン作りを手伝ううちに、村人たちは自然とリディアを「パン屋の奥さん」と呼び始める。戸惑いながらも、村人の笑顔や子どもたちの無邪気な声に触れ、リディアの心は少しずつほどけていく。だが、かつての知り合いが王都から現れ、彼女を嘲ることで再び過去の影が迫る。
そのときカイは、ためらうことなく「彼女は俺の妻だ」と庇い立てる。さらに村を襲う盗賊を二人で退けたことで、リディアは初めて「ここにいる意味」を実感する。断罪された悪女ではなく、パンを焼き、笑顔を届ける“私”として。
そして、カイの真実の想いが告げられる。辺境を守り続けた公爵である彼が選んだのは、過去を失った令嬢ではなく、今を生きるリディアその人。村人に祝福され、二人は本当の「パン屋の夫婦」となり、温かな香りに包まれた新しい日々を歩み始めるのだった。
『婚約破棄された公爵令嬢は、王と交わらない道を選ぶ』
ふわふわ
恋愛
婚約者である王太子アルベルトから、一方的に婚約破棄を告げられた公爵令嬢エレノア。
だが彼女は、涙も復讐も選ばなかった。
「婚約は、役目でしたもの。終わったのなら、それで結構ですわ」
王宮を去ったエレノアは、領地に戻り、
干渉しない・依存しない・無理をしない
ただそれだけを軸に、静かに領地運営を始める。
一方、王となったアルベルトもまた、
彼女に頼らないことを選び、
「一人の判断に依存しない国」を作るための統治に身を投じていた。
復縁もしない。
恋にすがらない。
それでも、二人の選択は確かに国を安定へと導いていく。
これは、
交わらないことを選んだ二人が、
それぞれの場所で“続けられる世界”を完成させる物語。
派手なざまぁも、甘い溺愛もない。
けれど、静かに積み重なる判断と選択が、
やがて「誰にも壊せない秩序」へと変わっていく――。
婚約破棄から始まる、
大人のための静かなざまぁ恋愛ファンタジー
本物聖女の力は無力でした ――見世物レベルの聖女のおかげで婚約破棄されました――**
鷹 綾
恋愛
魔法が存在しないと信じられていた世界に、
突如として現れた「本物の聖女」。
空中浮遊、瞬間移動、念動力――
奇跡を披露した平民の少女は、たちまち市民の熱狂を集め、
王太子はその力に目を奪われる。
その結果、
王太子の婚約者だった公爵令嬢アストリアは、
一方的に婚約を破棄されてしまった。
だが、聖女の力は――
・空中浮遊は、地上三十センチ
・瞬間移動は、秒速一メートル
・念動力は、手で持てる重さまで
派手ではあるが、実用性は乏しい。
聖女の力は、見世物レベル。
少なくとも、誰もがそう判断していた。
それでも人々は喝采し、
権威は少女を縛り、
「聖女」という立場だけが一人歩きしていく。
そんな中、婚約破棄された公爵令嬢アストリアは、
ある違和感に気づき始める。
――奇跡よりも、奪われているものがあることに。
派手な復讐はない。
怒鳴り返しもしない。
けれど静かに、確実に、
“正しさ”は明らかになっていく。
見世物にされた奇跡と、
尊厳を取り戻す少女たちの物語。
---
短編 一人目の婚約者を姉に、二人目の婚約者を妹に取られたので、猫と余生を過ごすことに決めました
朝陽千早
恋愛
二度の婚約破棄を経験し、すべてに疲れ果てた貴族令嬢ミゼリアは、山奥の屋敷に一人籠もることを決める。唯一の話し相手は、偶然出会った傷ついた猫・シエラル。静かな日々の中で、ミゼリアの凍った心は少しずつほぐれていった。
ある日、負傷した青年・セスを屋敷に迎え入れたことから、彼女の生活は少しずつ変化していく。過去に傷ついた二人と一匹の、不器用で温かな共同生活。しかし、セスはある日、何も告げず姿を消す──
「また、大切な人に置いていかれた」
残された手紙と金貨。揺れる感情と決意の中、ミゼリアはもう一度、失ったものを取り戻すため立ち上がる。
これは、孤独と再生、そして静かな愛を描いた物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる