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第1章 【side 敦貴】
11.友との秘められたラブホテル ②
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ここまできて、おろおろしてもどうにもならないので、敦貴はシャワーを浴びている間に覚悟を決めた。
しかし、上がってタオルで身体を拭いていれば、そこで一悩みすることになる。
服を着て戻るべきなのか、それとも裸で行くべきなのか。まるで初めて行為をする女の子のような心境だ。
普段は下着一枚で女性を迎え、さっさと事を済ませるのだが、今回その姿で戻って張り切っていると見られるのも不満だった。
「こんなことでうじうじして、嫌になってくる……」
もっと軽い気持ちで挑みたいのに、思い詰める自分が鬱陶しかった。すっかり気が抜けた敦貴は、その場に足を投げ出して座る。
「はぁー、戻りたくないなー」
面倒になって考えるのを諦めたその時、うってつけのものが視界に入った。それは棚に畳んで準備されていたバスローブだ。
「なーんだ、これ着ればいいじゃん」
悩みが解決して爽快な気分になった。鼻歌を歌いながらバスローブを手に取り、それを着てから皇祐のところに戻ることにしたのだが。
「コウちゃん……」
「随分、遅かったな」
「これ見て、バスローブ、すげーちっちぇーの」
バスローブに袖を通したはいいが袖だけじゃなく丈も短くて、かなりおかしな恰好になっていた。両手を広げてその姿を見せれば、皇祐は吹き出して肩を震わせて笑う。いつも落ち着いている彼が、こんなにも感情をむき出しにするのは珍しいことだった。
「そんなに可笑しい?」
高校の頃のように彼との距離が近づいた気がして、喜びが込み上げてきた。
「ああ、久しぶりだよ、こんなに笑ったの」
「もっと大きいの用意しておいてくれたらいいのにねー」
「敦貴は身体が大きいからな。大丈夫、すぐ脱ぐことになるよ。じゃあ、僕もシャワーを浴びてくるね」
さっきまで笑っていたのが嘘のように、淡々とした口調で話しながら皇祐はバスルームに向かった。
どんな時も平常心を保っているのは昔からのことだったが、そのおかげで敦貴の方は気おくれする。
「すぐ脱ぐことになるって……コウちゃんの口からそんなセリフを聞くなんて」
身体がかゆくなりそうなセリフに思えたが、皇祐が使うと心がどよめき、カッコいいとさえ感じた。言い慣れているせいなのだろうか。
高校の頃、男子みんなで性的な話で盛り上がっていても、皇祐は一人だけ涼しい顔をしていた。女子に告白されるのを目撃したこともあったが、悩むこともせず、すぐに断るのだ。だから、あまり興味がないのかと思っていた。
でも、ゲイだというのだから相手が男だと違うのだろうか。仕事柄、経験は敦貴よりも多いはずだ。どんな風にするのか想像はできなかったが、とにかくすごく官能的なのではないかと考える。
いろいろイメージを膨らませていれば、さらに緊張が増した。ベッドに横になっていた敦貴は、大きな身体でごろごろと転がった。
もしかしたら、初めて経験した時よりも緊張しているかもしれなかった。
しかし、上がってタオルで身体を拭いていれば、そこで一悩みすることになる。
服を着て戻るべきなのか、それとも裸で行くべきなのか。まるで初めて行為をする女の子のような心境だ。
普段は下着一枚で女性を迎え、さっさと事を済ませるのだが、今回その姿で戻って張り切っていると見られるのも不満だった。
「こんなことでうじうじして、嫌になってくる……」
もっと軽い気持ちで挑みたいのに、思い詰める自分が鬱陶しかった。すっかり気が抜けた敦貴は、その場に足を投げ出して座る。
「はぁー、戻りたくないなー」
面倒になって考えるのを諦めたその時、うってつけのものが視界に入った。それは棚に畳んで準備されていたバスローブだ。
「なーんだ、これ着ればいいじゃん」
悩みが解決して爽快な気分になった。鼻歌を歌いながらバスローブを手に取り、それを着てから皇祐のところに戻ることにしたのだが。
「コウちゃん……」
「随分、遅かったな」
「これ見て、バスローブ、すげーちっちぇーの」
バスローブに袖を通したはいいが袖だけじゃなく丈も短くて、かなりおかしな恰好になっていた。両手を広げてその姿を見せれば、皇祐は吹き出して肩を震わせて笑う。いつも落ち着いている彼が、こんなにも感情をむき出しにするのは珍しいことだった。
「そんなに可笑しい?」
高校の頃のように彼との距離が近づいた気がして、喜びが込み上げてきた。
「ああ、久しぶりだよ、こんなに笑ったの」
「もっと大きいの用意しておいてくれたらいいのにねー」
「敦貴は身体が大きいからな。大丈夫、すぐ脱ぐことになるよ。じゃあ、僕もシャワーを浴びてくるね」
さっきまで笑っていたのが嘘のように、淡々とした口調で話しながら皇祐はバスルームに向かった。
どんな時も平常心を保っているのは昔からのことだったが、そのおかげで敦貴の方は気おくれする。
「すぐ脱ぐことになるって……コウちゃんの口からそんなセリフを聞くなんて」
身体がかゆくなりそうなセリフに思えたが、皇祐が使うと心がどよめき、カッコいいとさえ感じた。言い慣れているせいなのだろうか。
高校の頃、男子みんなで性的な話で盛り上がっていても、皇祐は一人だけ涼しい顔をしていた。女子に告白されるのを目撃したこともあったが、悩むこともせず、すぐに断るのだ。だから、あまり興味がないのかと思っていた。
でも、ゲイだというのだから相手が男だと違うのだろうか。仕事柄、経験は敦貴よりも多いはずだ。どんな風にするのか想像はできなかったが、とにかくすごく官能的なのではないかと考える。
いろいろイメージを膨らませていれば、さらに緊張が増した。ベッドに横になっていた敦貴は、大きな身体でごろごろと転がった。
もしかしたら、初めて経験した時よりも緊張しているかもしれなかった。
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