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第一章
27、優秀な長男のおねだり
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ルートヴィッヒを追いかけて書斎の前まで来ると、思い切ってその重厚な扉をノックする。
「ルートヴィッヒ様、エレオノーラです。あの……」
(何を何て言えばいいんだろう……)
言葉に詰まってしまう。
中からは返事がない。
ここには居ないのか、もしかしたら自分の顔は見たくないのかもしれない。
諦めてジークの待つ食堂に戻ろうと踵を返した時、ギィっと扉が開く音がした。
「ルートヴィッヒ様っ」
慌てて戻ると、ルートヴィッヒは何も言わずにエレオノーラの細い手を引いて、再び扉を閉めた。
扉の後ろでルートヴィッヒはエレオノーラを抱きしめた。
その沈黙が気まずくて、エレオノーラは謝罪を始めた。
「ルートヴィッヒ様、先程はすみませんでした。失礼なことを事を言ってしまったみたいで……それが何だったのか分かっていないので、本当の意味での反省は出来ていないのですが……ルートヴィッヒ様の御気分を害してしまって申し訳ございません──」
「エルのせいではない」
ルートヴィッヒが口を開いた。その囁きでも深く響く声と、白いシャツ越しに感じる体温がエレオノーラに昨夜の事を思い出させる。
(私ってば、今はそんなこと思い出してる場合じゃないわ……)
「ジークのせいでもない。俺のせいだ」
ルートヴィッヒは浅い溜め息をついた。
「そんな、ルートヴィッヒ様は何も悪くございません」
エレオノーラが思わず見上げると、蝋燭の灯りに揺らされてより一層神秘的に輝く紫の瞳とぶつかる。
「エルは優しいな」
ルートヴィッヒは困ったような笑顔を浮かべてエレオノーラの額に口付けた。
(やっぱりルートヴィッヒ様のこの笑顔、好きかも……)
「額へのキスでそんなに赤くなるなんて、エルは相変わらず初心だな。それとも、昨晩の事を思い出したのか?」
「なっ、全然違います! これはルートヴィッヒ様が微笑んだからっ」
つい必死で反論してしまうエレオノーラの長い髪を撫でるルートヴィッヒ。
「何故俺が笑うとエルが赤面するんだ?」
最もな問いに答えられないエレオノーラはどうしようもなくてルートヴィッヒの胸に顔をうずめる。
「私にだって分かりません!
……そろそろジーク様の所へ戻りましょう」
「ジークは待ってない」
きっぱりと言い放つルートヴィッヒ。
「でも……」
「今頃あいつは酒でも飲みに街へ出掛けているだろう。
だから、少しだけ俺とこのままここに居てくれ」
それはルートヴィッヒがエレオノーラにした初めての"わがまま"だった。
「……はい……」
ルートヴィッヒの腕の中で瞳を閉じて、その鼓動を感じた。
「ルートヴィッヒ様、エレオノーラです。あの……」
(何を何て言えばいいんだろう……)
言葉に詰まってしまう。
中からは返事がない。
ここには居ないのか、もしかしたら自分の顔は見たくないのかもしれない。
諦めてジークの待つ食堂に戻ろうと踵を返した時、ギィっと扉が開く音がした。
「ルートヴィッヒ様っ」
慌てて戻ると、ルートヴィッヒは何も言わずにエレオノーラの細い手を引いて、再び扉を閉めた。
扉の後ろでルートヴィッヒはエレオノーラを抱きしめた。
その沈黙が気まずくて、エレオノーラは謝罪を始めた。
「ルートヴィッヒ様、先程はすみませんでした。失礼なことを事を言ってしまったみたいで……それが何だったのか分かっていないので、本当の意味での反省は出来ていないのですが……ルートヴィッヒ様の御気分を害してしまって申し訳ございません──」
「エルのせいではない」
ルートヴィッヒが口を開いた。その囁きでも深く響く声と、白いシャツ越しに感じる体温がエレオノーラに昨夜の事を思い出させる。
(私ってば、今はそんなこと思い出してる場合じゃないわ……)
「ジークのせいでもない。俺のせいだ」
ルートヴィッヒは浅い溜め息をついた。
「そんな、ルートヴィッヒ様は何も悪くございません」
エレオノーラが思わず見上げると、蝋燭の灯りに揺らされてより一層神秘的に輝く紫の瞳とぶつかる。
「エルは優しいな」
ルートヴィッヒは困ったような笑顔を浮かべてエレオノーラの額に口付けた。
(やっぱりルートヴィッヒ様のこの笑顔、好きかも……)
「額へのキスでそんなに赤くなるなんて、エルは相変わらず初心だな。それとも、昨晩の事を思い出したのか?」
「なっ、全然違います! これはルートヴィッヒ様が微笑んだからっ」
つい必死で反論してしまうエレオノーラの長い髪を撫でるルートヴィッヒ。
「何故俺が笑うとエルが赤面するんだ?」
最もな問いに答えられないエレオノーラはどうしようもなくてルートヴィッヒの胸に顔をうずめる。
「私にだって分かりません!
……そろそろジーク様の所へ戻りましょう」
「ジークは待ってない」
きっぱりと言い放つルートヴィッヒ。
「でも……」
「今頃あいつは酒でも飲みに街へ出掛けているだろう。
だから、少しだけ俺とこのままここに居てくれ」
それはルートヴィッヒがエレオノーラにした初めての"わがまま"だった。
「……はい……」
ルートヴィッヒの腕の中で瞳を閉じて、その鼓動を感じた。
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