オメガ大学生、溺愛アルファ社長に囲い込まれました

こたま

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 コンコンとノックの音がした。

「はい」

 ベッドから下りて、ドアまでゆっくり歩く。途中念のため手すりを掴んで転ばないように気を付けていく。

「おはようございます。千尋様。ゆっくりお休みになれましたか?」
「はい。ありがとうございます」
「本日、秀之様は休日出勤のため、ご出立なさいました。朝食のご用がありますが、召し上がられますか?」
「ありがとうございます。頂きます。昨日のお食事とても美味しかったです」
「それはありがとうございます。では並べさせて頂きます」

 朝食には、シリアルに牛乳がかけてあるものや、フルーツ、小さい野菜のはいったスープ、卵焼きが細かく切ってあり、紅茶が添えられていた。全てスプーンで食べられる。

「美味しそう。頂きます」
「どうぞ。お召し上がりください」

 一人なのでニュースを見ながら頂いた。歯磨きをして、朝の洗顔を何とか左手で水だけで不恰好ながら済ませ、トイレを済ませた。
 さて、着替えようと寝室に繋がるクローゼットルームに入ってみた。

「わっ!すごい」

 たくさんの洋服がかけてあり、タンスの引き出しを開けるとインナーやシャツ、セーター等とナイトウエアもいくつも仕舞われている。

「何人分だろう?それに、今の季節以外のものもあるなぁ。サイズ的には僕にぴったりなんだけど。誰の洋服なんだろう?使って良いのかな?」

 着ても良いものか、わからなかった。昨日のうちに秀之さんに聞いておけば良かったな。
 お手伝いさんに聞いてみよう。呼び出しボタンをおっかなびっくり押してみた。
 暫くするとノックが聞こえた。ドアまで行って開けながら

「はい。あ、お忙しいところすみません。お食事ごちそうさまでした。あと、うかがっても良いですか?」
「お粗末さまでした。お口に合えば良いんですが。何かご用がございますか?」
「着替えようと思ったのですが…」
「お手伝いさせて頂きますね」
「すみません」

 部屋の中にお手伝いさんを招き入れた。

「このクローゼットには沢山お洋服があるのですが、着させて頂いて良いものかどうかわかりませんでした。どなたかがお使いのお部屋だったのですか?」
「まあ。ご説明が足りませんで申し訳ございません。こちらの衣類は全て秀之様が千尋様がお使いになられるようにとご準備なさいました。全て千尋様の物でございます。どれでもお好きなようにお使い頂けます」
「そうだったんですか!すみません」
「とんでもございません。お着替えも大変だと思いますのですお手伝い致します」

「千尋様、こちらのお洋服が腕を通しやすいかと…」
「そうですね。そちらをお借りします」
「千尋様のお召し物ですのでどうぞお使い下さいませ」
「あ、すみません、ありがとうございます」

 お手伝いさんに手伝って貰って着替えを済ませた。着ていた寝巻きは、洗濯してくれると持っていってくれた。昨日と今朝使ったタオルやシーツなどのリネンも一緒に片付けてくれて、落ち着いて時間が使えるようになった。
 友人に明日から登校すること、ノートのコピーをお願いしたいことを連絡しておき、実家に電話をかけた。

「もしもし?お母さん?千尋です」
「千尋!どう?大丈夫?」
「うん。連絡があったかも知れないけど退院して秀之さんの御宅にお世話になってるんだ」
「聞いたわ。どうなの?」
「凄い豪邸だよ。お手伝いさん達が気遣ってくれて、看護士さんもお風呂の介助をしてくれて、困ることが無いんだ。明日からは大学にも行けそう」
「まあ。良かったわ~!東条さんが配慮してくださるって言っていたから、お任せして療養に専念してね。何かあればお母さん、そちらに行って滞在する覚悟もあるわよ」
「ありがとう。今のところ順調に安静に出来てる。お父さんとおじいちゃん、おばあちゃん、千菜によろしくね。また連絡するね」

 明日からは、大学に行って夏休み前の課題を終わらせるぞ。頑張ろうと決意を改めて、パソコンを開いた。大変だけど左手で少しずつ文章を打っていく。

「昼食のお時間ですよ。お休みできたら休憩しませんか?」
「ありがとうございます」

 お手伝いさんが昼食を運んで来てくれた。具だくさんの小さめサンドイッチとフルーツ、アイスティーだ。

「美味しそう。頂きます」

 昼食をとり、また課題を続けた。午後になり、またコンコンとノックの音。

「はい」
「千尋さん、真琴です。少し早めだけどお風呂と体調伺いに来ました」
「真琴さん!ありがとうございます」

 入室して貰い、腕や体の調子をお話した。明日から大学に行くつもりであることも。

「右腕はなるべく動かさないで、吊ったままがいいね。ノートは借りて、音声録音したりとか後で確認できれば安心でしょう。大学の食堂で食べれられる物はありそう?無ければお弁当を作って貰えば良いですね」
「はい。わかりました。そのように考えます。多分カレーライスなんかは左手で食べられると思います。休みの間のノートは頼んだんですが、今後の分も頼んでみます」
「そうですね。困ったら多分秀之さんが何とかしてくれると思いますよ」

 腕は痛みや腫れも引いてきて、濡れないようにして今日も入浴介助をしてくれた。ほっこりして、またパソコン画面と向き合ってちまちまと左手でキーを打つ。
 
 夕食時になったら、ノックが聞こえた。

「はい」
「千尋様、秀之様がお帰りでご一緒に夕食をいかがかと仰せです」
「ありがとうございます。頂きます」

 今日は気分を変えてダイニングルームでの食事はどうかと提案された。入浴の後で寝巻きに着替えてしまったので迷っていたら、その格好のままで構いませんと言ってくれた。ずっと部屋の中だったので気分転換するのも良いかとダイニングルームに行く事にした。
 秀之さんが迎えに来てくれるというので、それまで課題の続きをしていると

「千尋さん、食事を取りに行きましょう」
「はい。お願いします」
「ダイニングはこちらです。少し距離があるので、失礼します」

 さっと近づいた秀之さんにお姫様抱っこをされた。

「わっ!」
「落とさないので大丈夫。左で掴まっていてください」
「っはい」

 秀之さんの首に動かせる左腕を回して掴まっていると、慎重に廊下をすすんでいく。

「こちらです」

 映画で見た貴族のような長いダイニングテーブルの椅子に下ろされた。隣の席に秀之さんが座る。

「テーブルがとても大きいですね」
「昔、人数が多かった時期があったので。今は大きすぎてむしろさみしいですね」

 ここに秀之さんが一人で座っているなら、確かに寂しく感じる。

「さあ、頂きましょう」
「はい」

 夕食は、コースのようにスープ、前菜、シチューが出た。秀之さんにはバゲット、僕には小さく切ってくれてある。具材も僕のものは全て小さくしてくれた。最後に桃と紅茶。とても満足感がある。

「美味しかったです。ごちそうさまでした」
「明日の朝食は、和食の予定だそうです。千尋さんの部屋で一緒に頂いて良いですか?」
「はい。お願いします」
「明日は大学に送る方が来ます。講義は何時から?私が出勤するより遅いなら頼んでおきますね」
「ありがとうございます。ノートを借りたり、レポートをするので早めに行きたいと思います」
「わかりました」

 食後は、部屋までの距離をリハビリがてらゆっくり歩く事にした。秀之さんが左手を握ってくれて、気を付けて歩く。筋力が衰えると困るから、少しずつお屋敷内や大学でも歩いたりしていこう。

「支えをありがとうございました。お休みなさい」
「ふふっ。いいですね。お休みなさいって言ってくれるの。良い眠りを。お休みなさい」
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