お疲れポメラニアンの俺を癒したのは眼鏡イケメンの同期だった

こたま

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「クウン…?」(あれ?)

(あ、そうだ。犬になって、野坂の家につれて帰って貰って、撫でてもらったら眠くて...)

 目を覚ました累は掛け布団から顔を出して周囲を見渡す。すると目の前に眼鏡を外して眠っている野坂の顔が見えた。

(野坂。一緒に寝てる。夜遅かったもんな。迷惑を掛けてしまった。でも良く見ると、睫毛か長くて、鼻筋がしゅっとして、唇が薄くてすっごい男前だ。時代劇の役者さんみたいに格好いい。野坂ってこんなに格好良かったんだ。真面目で評価も高くて、一流大学卒だもんな。隠れモテだって言われてるらしいけど)

「クウン…」(お腹空いた、トイレ行きたい)

「ん?どうした?」
「ワン」(起こしてゴメン)
「ン?良いよ?どうした?」
「クウン」(トイレ借りたい)
「ん?トイレ?」
「ワン!?」(わかったの!?)

 寝ぼけ眼をしぱしぱすると、ポメラニアンを抱き上げた野坂。バスルームに連れて行った。

「トイレだと落ちちゃうだろ?そこでして。大小どっちでも、処理したり洗い流したり出来るから。気にしないで良いよ」
「クウン」(ごめん、ありがとう)

 野坂が後ろを向いた。累が排水口に排泄すると、水を流してきれいにしてくれ、ついでに温かいシャワーで累をさっと洗い、バスタオルに包んだ。

「きれいになったね。さっぱりした?」
「キャン」(うん)
「さあ、昨日の続きをしよう」
「ワウ?」(ん?)

 野坂に抱かれ、運ばれるとまたベッドに座る野坂の膝に腹這いで乗る。タオルにくるまれたまま、トントンと背中を柔らかく撫でて

「可愛い。前田、君は素敵だ。同期の中でも特に良いやつだし、頑張ってる。無理しているなら話を聞くよ?何か出来ることがあるならさせて欲しい」
「クウ~ン」(ありがとう)

 ナデナデ、トントンと体を温かく触られ、かわいいと何度も言う。累の頭にそっと唇を寄せたり、頬をすりすりと擦りつける。野坂は時間を掛けて、ゆっくりと累を甘やかした。

「可愛い。前田。好きだよ、好きなんだ」

 ポン!!

「わっ!!」
「前田!?」
「野坂…ゴメン。助かった。はぁ」
「本当に前田だ」
「うん。ゴメン。今退くね」

 累は、裸にバスタオルを巻いた姿で野坂の膝にうつ伏せで抱きついている自分に慌てる。

「いや、重くないし大丈夫だけど」
「本当にゴメン。ありがとう」

 急いで体を隠しながら起き上がる累。

「服どこかな?それか、何か借りられる?」
「スーツは掛けてあるけど、とりあえず普段着とインナーの新しいの出すよ」

 野坂は着替えを見繕ってベッドに置いた。

「着替えたらダイニングキッチンに来て?朝食の準備を始めておく。食べたらゆっくり話をしような」
「ありがとう。ホント。助かりました」

 寝室の引戸を閉めて累を一人にしてくれた。累は、新しいインナーをパッケージから出して履くと、スウェット上下を借りて着た。いずれもLサイズで、普段Mサイズを着用する累には大きい。

 引戸を開けて、寝室の証明を切る。

「ありがとう」
「着れた?」
「うん、ちょっと大きいけど」
「プ…だいぶ大きいな。けど着られて良かった」
「なんだよ?」
「いや。かわいいなって」

 ぷくっと頬を膨らませた累は、大きい服の袖が指先まで覆い、裾も長く彼シャツみたいで可愛いらしい。それを見た野坂が少し頬を赤くする。

「ん?そう?朝食、手伝おうか?」
「いや。もう出来るから、座って?」
「ありがとう」

 ダイニングテーブルには、二脚の椅子があった。昨夜野坂が座って居なかったほうに累は腰掛けた。
 既にテーブルにはバター、ヨーグルトが置いてあり直ぐにトースト、それからお皿にトマトとウインナー、目玉焼きが乗った物が運ばれて来た。

「すごい、ちゃんとした朝食だ」
「有り合わせだよ、目玉焼きは何派?」
「ケチャップある?」
「あるよ。どうぞ」
「ありがとう。いただきます」
「召し上がれ」

「どう?」
「美味しい」
「自炊しない派なの?」
「うん。苦手。買ったりレトルトとか。なるべく外食はさけて食費を節約したいんだけど」
「そう。俺も簡単なのしか出来ないけど教えようか?」
「ホント?嬉しい」
「ふふっ。こんなので良ければいつでも」

 気恥ずかしさを感じながら二人で囲む食卓。幸せを感じた。誰かと食べるって嬉しい。二人とも口角を上げて食事をすすめた。

「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした」
「いやいや。すごく旨かったよ。洗うのは得意なんだ。やらせてくれない?」
「じゃあ、頼むよ。よろしく」

 BARのバイトで皿やグラスは洗い慣れている累。ちゃちゃっと洗って次々とかごに入れていく。大学時代に料理もママさんから習おうとしていたのだが、何度か包丁で指を傷つけたり火傷をするうちに料理禁止を言い渡されてしまっていた。

「上手いね、慣れてる」
「洗い物だけだよ。料理は危ないからって禁止にされた」
「お母さんに?」
「ううん。そこらへんも、まあ。良かったら話聞いてよ」
「何でも聞くよ?さっきつい言っちゃったけど。俺、前田が好きなんだ。役に立てるなら何でも」
「ははっ。恥ずっ。ホント?とりあえず話をしよっか...」

 洗い物を終えて、先ほどと同様にテーブルに向かい合った二人。累から話し始めた。

「俺、クオーターなんだ。見た目派手だろ?高校くらいから女子にモテたりストーカー的な子も現れて。でも、本当は年上の男性に甘やかされてよしよしってされたくて。大学時代に悩んで意を決してゲイバーに行った。話を聞いてくれたママさんのところでちょっとバイトしてたんだ」
「そうだったんだ」
「うん。元は引っ込み思案だし。それで、洗い物は出来るけど指切ったり火傷するから料理は禁止で。そんでお客さんと会話するうちにコミュ力上がって、ママさんの伝でボランティアしたのが評価されてうちの会社に入社できたんだけど」
「うん。それで?」
「営業って、仮面被って無理するじゃん。キャバとか、アルコールとか、苦手だけど笑顔で盛り上げてさ。そんで、甘えられる家族やママさんとかにもずっと会えなくて。苦しいな、疲れたなって思っていたら急に犬になってた…」
「そうだったんだな。辛かったな、頑張ったな。びっくりしたけど、出会えたのが自分で良かったよ。俺もいろんな悩みを抱えている」
「へえ、それって聞いていいこと?どんなん?」
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