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教育実習生
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「理人、教頭先生がありがとうっておっしゃっていたよ?」
「何がありがとう?」
「理人が大学合格実績をかさ増ししたこと」
「ああ、それか」
理人と通話をしている。理人はまだ大学で研究中なのだが、なんだかの反応時間という待ち時間が出来たそうで連絡してくれた。
理人は高校時代の僕絡みでの発情期事件のあと、快く許してくれた学院長先生や教頭先生に恩義を感じていた。
だから学院のためにと進学しない可能性の高い大学も含めて多数の合格実績を作って貢献しようとしたのだ。
「結局今の大学にして良かったよ。千颯と一緒だし、研究室も希望の研究が出来る環境があったからね」
「それなら良いけど、T大行かなくてもったいないって随分言われたよね」
「そうだな。先生達、お元気そうだった?」
「とっても。お変わり無かったよ」
「良かった。千颯、アルファの先生や生徒に気を付けてな」
「うん。大丈夫。ありがとう」
「田村先生、僕、オメガでも大学に行きたいんです。先生がどうやって勉強したり進学先を決めたのか教えて貰えませんか?」
「もちろん、僕の経験談でよければ話すよ?」
数人のオメガの子達に囲まれて、進学希望者には勉強法やバース対応の整っている大学の探しかた、たとえば発情期で休んだときの欠席扱いやテストの代替方法とか、自分の調べた事を話した。
「「「ありがとうございます」」」
「役に立てたなら良かったよ」
「先生はオメガで初の特待生で、W大現役合格ですよね。オメガの希望の先輩です」
「そんな大層なものじゃないけど、嬉しいな」
「またお話してくださいね」
良かった。役に立っている。でもアルファクラスの生徒には、ちょっと遠巻きに見られて話しかけて貰えない。
僕はネックガードはしていないし、明らかに噛みあとがあって番持ちだとわかる。
君たちにフェロモンで危害を加える事はないと最初の挨拶でも言ったんだけど。
やはりオメガから教わるなんてプライドが許さないのかな?仕方ないかも知れない。しかし先生になってからもそれだと、大丈夫だろうか。
そんな悩みもありつつ、無事に教育実習を終える事は出来た。最終日、僕の学生時代の担任の先生や保健室の先生、教頭先生に学院長先生まで、皆さんにご挨拶が出来た。
「田村君、卒業したときオメガの先生枠があったら是非就職してください。また時々連絡くださいよ?」
「教頭先生、本当にありがとうございます。お世話になりました。僕も母校の学院で是非働かせて頂きたいと思います」
本当に働けたら良いな。時々連絡して人事状況を伺うお約束をした。保健室の先生からは、小さい花束を頂いて
「やっぱりオメガの先生がいると良いですよね。相談しやすいから。保健室のことも手伝って貰えるので助かります。就職を待っているね」
「ありがとうございます。是非。またこちらでお世話になれると嬉しいです」
さあ未来の目標に向かって、残りの大学生活も頑張ろう。しっかり卒業出来るようにしよう。
通い慣れた学院から自宅への帰り道、一人胸に抱負を抱いていた。
「先生!」
「わっ…」
自宅の脇道から突然目の前に学院の制服を着たアルファ男子が飛び出してきた。
「どうしたの?」
この子、僕の授業は凄くじっと集中して聞いてくれた子だ。遠巻きに良く見られている感じを受けていたんだけど。
「先生が番のいる方だとわかっています。でも、どうしても想いを伝えて吹っ切らないと受験に向かえないと思って。ご迷惑だと思ったんですが待たせて頂きました」
「え?」
「初恋なんです。以前一度先生の後をつけて、ご自宅を知ってしまいました。もう、こんなことしないので許してください。先生が好きです!」
「ありがとう。でもごめんなさい。僕には大事な番がいるんだ」
「はい。わかっています」
「ごめん。勉強頑張ってね。受験がうまく行くように祈るよ。それと素敵な相手に巡り合えるように…」
「はい。ありがとうございました!」
ばっ、と頭を下げてから彼は走って行った。あの様子ならストーカーまがいにはならないだろう。去った方を見ていたら
「千颯…」
「あ。理人…おかえり」
「見てたよ」
「ごめん。ちゃんと断ったよ。彼も僕が番持ちだってわかっていた」
「うん。でも心配した通りだ。千颯にはもっと俺のフェロモンでガードしないと。まだつけ足りなかったかな」
「そんなことないよ。大学では、アルファの同級生からすごいべったりついてるって言われたよ?」
「噛みあともちゃんと残ってるよな…」
理人が僕のうなじを確認した。
「大丈夫だよ。僕も毎朝鏡で見てる」
「そうなの?」
「うん。理人の存在を確認して安心して出掛けられるんだ」
「千颯、好きだ」
「僕も理人を愛してる」
「今日は二人で泊まりに行かない?」
「これから?」
「そういうホテル。行ってみようよ。ちゃんと抱き合って確認したい」
「う、わかった。行こう」
お互いに自室に荷物を取りに戻って、初めてそういうホテルに行ってみた。
「発情期以外でのエッチもこういうホテルも初めてだね」
「産まれてからずっと何でも一緒にやってきたけど、まだ初めてがたくさん残ってたな」
「うん。だから一生、楽しいこと一緒に経験し続けようね」
理人が僕をベッドに押し倒した。性急にキスを繰り返す。深いキスに溺れそうになると
「かわいい。千颯愛してる」
口を離してそう言うと、あっと言うまにポンポンと服を脱がされた。
「理人も脱いで」
理人の服に手をかけたら、自ら脱ぎ捨てるように肌を見せた。研究で忙しい筈なのに筋肉のついたお腹が羨ましい。
「格好良いよ」
「ありがとう。千颯は綺麗だ」
意識がしっかりしている時に胸を吸われたり、起立を扱かれると恥ずかしくて気持ちも良い。
「あ、あ」
滑りを纏った指先で後ろの膨らみをとんとん、と撫でられてもっと欲しくなる。
「きて」
「うん」
いつの間にか大きくなっていた理人のモノが僕を翻弄した。二人で達すると長い抱擁に包まれた。
理人に包まれるといつも安心して幸せだ。これからもきっと、こうやって僕達は人生を続けていくのだろう。
「何がありがとう?」
「理人が大学合格実績をかさ増ししたこと」
「ああ、それか」
理人と通話をしている。理人はまだ大学で研究中なのだが、なんだかの反応時間という待ち時間が出来たそうで連絡してくれた。
理人は高校時代の僕絡みでの発情期事件のあと、快く許してくれた学院長先生や教頭先生に恩義を感じていた。
だから学院のためにと進学しない可能性の高い大学も含めて多数の合格実績を作って貢献しようとしたのだ。
「結局今の大学にして良かったよ。千颯と一緒だし、研究室も希望の研究が出来る環境があったからね」
「それなら良いけど、T大行かなくてもったいないって随分言われたよね」
「そうだな。先生達、お元気そうだった?」
「とっても。お変わり無かったよ」
「良かった。千颯、アルファの先生や生徒に気を付けてな」
「うん。大丈夫。ありがとう」
「田村先生、僕、オメガでも大学に行きたいんです。先生がどうやって勉強したり進学先を決めたのか教えて貰えませんか?」
「もちろん、僕の経験談でよければ話すよ?」
数人のオメガの子達に囲まれて、進学希望者には勉強法やバース対応の整っている大学の探しかた、たとえば発情期で休んだときの欠席扱いやテストの代替方法とか、自分の調べた事を話した。
「「「ありがとうございます」」」
「役に立てたなら良かったよ」
「先生はオメガで初の特待生で、W大現役合格ですよね。オメガの希望の先輩です」
「そんな大層なものじゃないけど、嬉しいな」
「またお話してくださいね」
良かった。役に立っている。でもアルファクラスの生徒には、ちょっと遠巻きに見られて話しかけて貰えない。
僕はネックガードはしていないし、明らかに噛みあとがあって番持ちだとわかる。
君たちにフェロモンで危害を加える事はないと最初の挨拶でも言ったんだけど。
やはりオメガから教わるなんてプライドが許さないのかな?仕方ないかも知れない。しかし先生になってからもそれだと、大丈夫だろうか。
そんな悩みもありつつ、無事に教育実習を終える事は出来た。最終日、僕の学生時代の担任の先生や保健室の先生、教頭先生に学院長先生まで、皆さんにご挨拶が出来た。
「田村君、卒業したときオメガの先生枠があったら是非就職してください。また時々連絡くださいよ?」
「教頭先生、本当にありがとうございます。お世話になりました。僕も母校の学院で是非働かせて頂きたいと思います」
本当に働けたら良いな。時々連絡して人事状況を伺うお約束をした。保健室の先生からは、小さい花束を頂いて
「やっぱりオメガの先生がいると良いですよね。相談しやすいから。保健室のことも手伝って貰えるので助かります。就職を待っているね」
「ありがとうございます。是非。またこちらでお世話になれると嬉しいです」
さあ未来の目標に向かって、残りの大学生活も頑張ろう。しっかり卒業出来るようにしよう。
通い慣れた学院から自宅への帰り道、一人胸に抱負を抱いていた。
「先生!」
「わっ…」
自宅の脇道から突然目の前に学院の制服を着たアルファ男子が飛び出してきた。
「どうしたの?」
この子、僕の授業は凄くじっと集中して聞いてくれた子だ。遠巻きに良く見られている感じを受けていたんだけど。
「先生が番のいる方だとわかっています。でも、どうしても想いを伝えて吹っ切らないと受験に向かえないと思って。ご迷惑だと思ったんですが待たせて頂きました」
「え?」
「初恋なんです。以前一度先生の後をつけて、ご自宅を知ってしまいました。もう、こんなことしないので許してください。先生が好きです!」
「ありがとう。でもごめんなさい。僕には大事な番がいるんだ」
「はい。わかっています」
「ごめん。勉強頑張ってね。受験がうまく行くように祈るよ。それと素敵な相手に巡り合えるように…」
「はい。ありがとうございました!」
ばっ、と頭を下げてから彼は走って行った。あの様子ならストーカーまがいにはならないだろう。去った方を見ていたら
「千颯…」
「あ。理人…おかえり」
「見てたよ」
「ごめん。ちゃんと断ったよ。彼も僕が番持ちだってわかっていた」
「うん。でも心配した通りだ。千颯にはもっと俺のフェロモンでガードしないと。まだつけ足りなかったかな」
「そんなことないよ。大学では、アルファの同級生からすごいべったりついてるって言われたよ?」
「噛みあともちゃんと残ってるよな…」
理人が僕のうなじを確認した。
「大丈夫だよ。僕も毎朝鏡で見てる」
「そうなの?」
「うん。理人の存在を確認して安心して出掛けられるんだ」
「千颯、好きだ」
「僕も理人を愛してる」
「今日は二人で泊まりに行かない?」
「これから?」
「そういうホテル。行ってみようよ。ちゃんと抱き合って確認したい」
「う、わかった。行こう」
お互いに自室に荷物を取りに戻って、初めてそういうホテルに行ってみた。
「発情期以外でのエッチもこういうホテルも初めてだね」
「産まれてからずっと何でも一緒にやってきたけど、まだ初めてがたくさん残ってたな」
「うん。だから一生、楽しいこと一緒に経験し続けようね」
理人が僕をベッドに押し倒した。性急にキスを繰り返す。深いキスに溺れそうになると
「かわいい。千颯愛してる」
口を離してそう言うと、あっと言うまにポンポンと服を脱がされた。
「理人も脱いで」
理人の服に手をかけたら、自ら脱ぎ捨てるように肌を見せた。研究で忙しい筈なのに筋肉のついたお腹が羨ましい。
「格好良いよ」
「ありがとう。千颯は綺麗だ」
意識がしっかりしている時に胸を吸われたり、起立を扱かれると恥ずかしくて気持ちも良い。
「あ、あ」
滑りを纏った指先で後ろの膨らみをとんとん、と撫でられてもっと欲しくなる。
「きて」
「うん」
いつの間にか大きくなっていた理人のモノが僕を翻弄した。二人で達すると長い抱擁に包まれた。
理人に包まれるといつも安心して幸せだ。これからもきっと、こうやって僕達は人生を続けていくのだろう。
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