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先生になりたい、番になりたい
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日曜日、僕の部屋に理人を招いた。二人でそれぞれ大学の課題をしたり、気分転換に動画を見ている。あまり会話をしなくても同じ空間にいるだけで落ち着けるのは、産まれた時からの幼なじみ所以だ。
今日僕は将来のことについて理人に話したい事がある。
「僕、大学で教職課程を取ろうと思うんだ」
「そうか。千颯は先生になりたいんだね?」
「うん。塾講師の時、僕もオメガの先生に早く出会えていたらもっと安心できたんじゃないかなって思ったんだ」
「そう。素晴らしい考えだね。今は雇用機会均等法で教職もオメガ枠の採用率が決まっているから働きやすくはなったよね。応援したいけど、心配だな」
「心配?」
「教師にはアルファが多い。教育実習や就職をしたら千颯が狙われそうだ」
「大丈夫だよ。他の人に目移りなんてしないから」
「うん、ありがとう。でも襲われたりしたらとか俺が院生の間に千颯は社会人になるんだなとか俺の自信の無さがいけないんだ。千颯はすごいよ。いつも前向きに頑張ってる」
「ふふふ。僕が前向きになれているのは理人っていう柱がしっかり建って揺るぎないからだよ。いつもありがとう」
「千颯。ありがとう。好きだよ。本当に愛してる」
「僕も理人が好きだ。それならさ、もう番になる?結婚は理人が卒業と就職してからでも、先に番えば安心出来ない?」
「千颯はそれで良いの?」
「良いから提案してるんだよ」
「番になれば他の人とは番えなくなる。俺は安心できるよ」
「それなら、教育実習に行く前には番になる計画を立てよう」
家族にも、先生になりたいこと、番になる計画を説明した。二人が決めたならそれを応援すると言って貰って嬉しかった。
理人は、記念になる発情期、番契約だから張り切ってホテルを予約するって、先に向けたバイトを頑張っている。僕もオンラインでオメガ男子生徒に勉強を教えるバイトを見つけた。
「理人、最近会えてないから会わない?」
「ごめん。実験と課題とバイトで忙しかった」
「うん。わかっているよ。課題しながらでも良いから」
「ごめんね。夜遅くなりそうだけど伺って良い?おじさんとおばさんがよければ…」
「大丈夫だよ。僕の部屋で課題しながら夜食でも食べようか」
「ありがとう。多分夕食は食べられないまま行くから何かあると助かる」
「わかった。待ってるね」
理系の理人は実験や課題が大変そうだ。その上ホテル貯金をしているから、大忙し。
「お母さん、夜遅く理人来るから。夕食用意したい」
「あらそう。二人で食べる?」
「課題しながら食べられるように作っておきたいんだけど」
「おにぎりとか?」
「そうだね。あと、サンドイッチとか?」
「理人、いらっしゃい」
「おじゃまします。遅くにすみません」
「大丈夫。まだ皆起きて好きな事してるから。部屋に行こう?」
「これ、よかったら食べながら課題して?」
「ありがとう。美味しそう」
おにぎらず、サンドイッチ、白菜とベーコン入りのミルクスープはスープジャーに入れてある。
「うまい。身体が暖まる」
「良かった。大学大丈夫?無理しないで」
「大丈夫。もう少ししたら落ち着ける」
「そっか、お互いに頑張ろう」
「千颯。キスして良い?」
「うん」
実家暮らし同士の大学生だから、キスまでの関係。番になるってどんな感じかな。キスだけでドキドキ、心臓がうるさいのに。
「ごちそうさま」
「お粗末様。理人、本当に無理しないでね」
「ありがとう。教育実習前の発情期、楽しみで仕方ないよ。目の前に人参がぶら下がる馬みたいに頑張れそう」
「気を付けて、身体が一番大事だよ?」
「うん」
軽い足取りで隣家に帰る理人。元気そうで安心はしたけれど。約束の発情期まで身体を壊しませんように。
アルファとオメガの発情期のお泊まりに人気のホテルがある。ルームサービスがとても充実していて、オメガのスタッフが多数勤めているという。
「わあ。窓から海が見える」
「そうだね。発情期に入る前に散歩しよう?」
海沿いのホテルにチェックインして荷物を置いたら海岸を散歩した。白い砂浜に冷たい冬の空気が冴える。
「夕食は千颯の好物を頼んだよ」
「ありがとう。楽しみだ」
白身魚のムニエルに白ワイン。もう今夜遅い時間あたりから発情期に入るだろう。今のうちにしっかり栄養を取ろう。
「美味しい…」
「良かった。教育実習先は学院だよね?お世話になった先生に会えるのは楽しみだね」
「そうなんだ。担任の先生や教頭先生に会えるのが楽しみ。色々ご迷惑をおかけしてお世話になったから、お礼を伝えてくるよ」
部屋に入り二人でバブルバスの中でイチャイチャしていたら熱くなってきた。湯あたりではなく発情期の始まりだとわかる。
「理人、きた…」
「うん、香りが立ち上って強い。とても良い香りだ」
「行こう?」
理人が僕を抱き上げて、タオルでざっと拭きバスローブにくるんだ。自分も同じようにすると、お姫さま抱っこで寝室に連れて行ってくれた。
そっと下ろされるとキスをしながらお互いにローブを剥いだ。素肌が触れ合い安心した。
深いキスを繰り返しながら僕の反応を伺って胸や前を刺激する。長い指が中を探り、キスを交わしながら理人が入ってきた。
「あ、ん…」
「いい。すごい」
「うん」
「愛してる」
「僕も」
途中でうつ伏せにされ枕を胸に抱きしめていると、理人がうなじを舐めた。うなじにキスして、舐めてから訊かれた。
「噛んで良い?」
「うん、理人好きだよ」
「千颯、大好き」
理人の歯が立てられた。項が熱く、身体がカッと火照った。キラキラと目の前に光が滲む。
「愛してる、ありがとう」
理人が僕を仰向けにしたら瞬きと共に瞳からポロリと涙が流れた。泣いていたんだと気付く。
「理人。嬉しい」
「千颯」
ぎゅっと抱きしめあった。僕達は、一組の番として生涯離れない存在になれたんだ。
「産まれてきてくれてありがとう」
「僕もだよ。好きだ」
「ああ、幸せだよ、愛してる」
僕達の番契約はとても幸福な記念日になったのだった。
今日僕は将来のことについて理人に話したい事がある。
「僕、大学で教職課程を取ろうと思うんだ」
「そうか。千颯は先生になりたいんだね?」
「うん。塾講師の時、僕もオメガの先生に早く出会えていたらもっと安心できたんじゃないかなって思ったんだ」
「そう。素晴らしい考えだね。今は雇用機会均等法で教職もオメガ枠の採用率が決まっているから働きやすくはなったよね。応援したいけど、心配だな」
「心配?」
「教師にはアルファが多い。教育実習や就職をしたら千颯が狙われそうだ」
「大丈夫だよ。他の人に目移りなんてしないから」
「うん、ありがとう。でも襲われたりしたらとか俺が院生の間に千颯は社会人になるんだなとか俺の自信の無さがいけないんだ。千颯はすごいよ。いつも前向きに頑張ってる」
「ふふふ。僕が前向きになれているのは理人っていう柱がしっかり建って揺るぎないからだよ。いつもありがとう」
「千颯。ありがとう。好きだよ。本当に愛してる」
「僕も理人が好きだ。それならさ、もう番になる?結婚は理人が卒業と就職してからでも、先に番えば安心出来ない?」
「千颯はそれで良いの?」
「良いから提案してるんだよ」
「番になれば他の人とは番えなくなる。俺は安心できるよ」
「それなら、教育実習に行く前には番になる計画を立てよう」
家族にも、先生になりたいこと、番になる計画を説明した。二人が決めたならそれを応援すると言って貰って嬉しかった。
理人は、記念になる発情期、番契約だから張り切ってホテルを予約するって、先に向けたバイトを頑張っている。僕もオンラインでオメガ男子生徒に勉強を教えるバイトを見つけた。
「理人、最近会えてないから会わない?」
「ごめん。実験と課題とバイトで忙しかった」
「うん。わかっているよ。課題しながらでも良いから」
「ごめんね。夜遅くなりそうだけど伺って良い?おじさんとおばさんがよければ…」
「大丈夫だよ。僕の部屋で課題しながら夜食でも食べようか」
「ありがとう。多分夕食は食べられないまま行くから何かあると助かる」
「わかった。待ってるね」
理系の理人は実験や課題が大変そうだ。その上ホテル貯金をしているから、大忙し。
「お母さん、夜遅く理人来るから。夕食用意したい」
「あらそう。二人で食べる?」
「課題しながら食べられるように作っておきたいんだけど」
「おにぎりとか?」
「そうだね。あと、サンドイッチとか?」
「理人、いらっしゃい」
「おじゃまします。遅くにすみません」
「大丈夫。まだ皆起きて好きな事してるから。部屋に行こう?」
「これ、よかったら食べながら課題して?」
「ありがとう。美味しそう」
おにぎらず、サンドイッチ、白菜とベーコン入りのミルクスープはスープジャーに入れてある。
「うまい。身体が暖まる」
「良かった。大学大丈夫?無理しないで」
「大丈夫。もう少ししたら落ち着ける」
「そっか、お互いに頑張ろう」
「千颯。キスして良い?」
「うん」
実家暮らし同士の大学生だから、キスまでの関係。番になるってどんな感じかな。キスだけでドキドキ、心臓がうるさいのに。
「ごちそうさま」
「お粗末様。理人、本当に無理しないでね」
「ありがとう。教育実習前の発情期、楽しみで仕方ないよ。目の前に人参がぶら下がる馬みたいに頑張れそう」
「気を付けて、身体が一番大事だよ?」
「うん」
軽い足取りで隣家に帰る理人。元気そうで安心はしたけれど。約束の発情期まで身体を壊しませんように。
アルファとオメガの発情期のお泊まりに人気のホテルがある。ルームサービスがとても充実していて、オメガのスタッフが多数勤めているという。
「わあ。窓から海が見える」
「そうだね。発情期に入る前に散歩しよう?」
海沿いのホテルにチェックインして荷物を置いたら海岸を散歩した。白い砂浜に冷たい冬の空気が冴える。
「夕食は千颯の好物を頼んだよ」
「ありがとう。楽しみだ」
白身魚のムニエルに白ワイン。もう今夜遅い時間あたりから発情期に入るだろう。今のうちにしっかり栄養を取ろう。
「美味しい…」
「良かった。教育実習先は学院だよね?お世話になった先生に会えるのは楽しみだね」
「そうなんだ。担任の先生や教頭先生に会えるのが楽しみ。色々ご迷惑をおかけしてお世話になったから、お礼を伝えてくるよ」
部屋に入り二人でバブルバスの中でイチャイチャしていたら熱くなってきた。湯あたりではなく発情期の始まりだとわかる。
「理人、きた…」
「うん、香りが立ち上って強い。とても良い香りだ」
「行こう?」
理人が僕を抱き上げて、タオルでざっと拭きバスローブにくるんだ。自分も同じようにすると、お姫さま抱っこで寝室に連れて行ってくれた。
そっと下ろされるとキスをしながらお互いにローブを剥いだ。素肌が触れ合い安心した。
深いキスを繰り返しながら僕の反応を伺って胸や前を刺激する。長い指が中を探り、キスを交わしながら理人が入ってきた。
「あ、ん…」
「いい。すごい」
「うん」
「愛してる」
「僕も」
途中でうつ伏せにされ枕を胸に抱きしめていると、理人がうなじを舐めた。うなじにキスして、舐めてから訊かれた。
「噛んで良い?」
「うん、理人好きだよ」
「千颯、大好き」
理人の歯が立てられた。項が熱く、身体がカッと火照った。キラキラと目の前に光が滲む。
「愛してる、ありがとう」
理人が僕を仰向けにしたら瞬きと共に瞳からポロリと涙が流れた。泣いていたんだと気付く。
「理人。嬉しい」
「千颯」
ぎゅっと抱きしめあった。僕達は、一組の番として生涯離れない存在になれたんだ。
「産まれてきてくれてありがとう」
「僕もだよ。好きだ」
「ああ、幸せだよ、愛してる」
僕達の番契約はとても幸福な記念日になったのだった。
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