庶子のオメガ令息、嫁ぎ先で溺愛されています。悪い噂はあてになりません。

こたま

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「まあ。何のご心配もありませんわ。どうぞお気になさらずに」
「そうですよ。多少は陛下からの書状で伺っておりました。こちらは王都からは遠く滅多に参りません。貴族付き合いは不要です。城と領地のことだけ知って頂いて、息子と仲良くして頂ければ有難い」
「本当に。私達だってね…」

 伯爵家は辺境にあり冬は雪に覆われ、また戦がちなので昔から嫁入り先として厭われやすかった。

 伯爵婦人にご自身の過去の話まで披露されたところによると。侯爵令息と婚約していたが地味で本好きな婦人は嫌だと浮気されて婚約破棄になった。
 貴族社会で噂されて傷つき、年齢からも新しい縁談に消極的になっていたところ、国王陛下から良い男がいると親友の伯爵を勧められ結婚したという。

「夫はとても素晴らしい方です。国を守るために命がけで、大変尊敬しています。私を大事にしてくれ、こちらに来て良かったと思っています。貴族社会と付き合わなくて済むのも楽です。年齢が高い同士だったので息子一人ですが、子宝にも恵まれて幸せですよ」
「そうだったんですか」
「礼儀作法はうちの家令に習えば良い。本は沢山有りますから勉強には困りません」
「ありがとうございます。こんなご縁を頂けておそれ多いほどです」

「いいえ。中々縁談に恵まれませんでしたので有難い限りですわ。只でさえ難しいのに、エメリックの噂ときたら…事実無根の噂を聞いて、どなたも釣書をお断りなさるの」
「北方を守る軍の司令官になるのだから、恐ろしいという噂は放って置いたのだが。実際は戦場では勇敢に戦うが戦争を嫌っている。誰も死なせず被害を少なくしようと策を練る人間だ。うちの軍は、軍人を守るために軽く強い鎧と仮面を纏う。それを怖れたのもあるだろうがなあ」
「痣についても。赤ちゃんの時、神殿で鑑定を受けた時に額にあったサーモンパッチという痣は2歳頃には消えていたんですのよ。エメリックは優しいし、真面目だし…」
「学園時代にふわふわと噂や装飾品ばかりの女性は好まずに、お付き合いのアプローチを断ったことがあったらしいが…尾ひれが着いてとんでもない噂が流されているようでな」
「我が家は無駄な装飾は好まず、質実剛健なだけですのに」

「さあ、話はそんなところで終わりにして、休んで頂きましょう。長旅でお疲れでしょう?」

 エメリックが話を継いだ。

「そうね。これからサシャさん、エレアさんと呼ばせて頂くわ。ここはもうお二人にとってご自分の家ですから、気楽に寛いで下さいね」
「ありがとうございます」

 エメリックが二人を部屋に案内する。

「私の部屋の隣がサシャさんの部屋です。浴室を隔て繋がっています。寝室と衣装室、応接間を兼ねた書斎があります」

 まずはサシャの居室を案内したエメリック。広い部屋には品の良い家具が配置されている。大きな寝台には綺麗なシーツが敷かれ、衣装室には既に幾つかの衣装が掛けられてあった。

「隣がお母上の部屋です」

 続いて母の部屋へ。こちらも広い寝室には簡単な応接セットと文机や書棚、衣装棚もあり、バスルームが付属された豪華な一室。来客用の居室のようであった。

「こちらがサシャさんを担当するメイドさん達です。それからこちらはお母上のメイドさんです」
「エメリック様。私は息子のメイドのお仕事をするつもりで参りました」
「少ないですが我が城にもお勤め頂いている方がいますからご心配ありません」
「そんな。申し訳ございません…」
「お母上は、サシャさんを支えてあげてください」
「ありがとうございます」

 エレアは、目に涙を湛えて感謝の言葉を述べた。これまでの不遇を思えば、いかに丁重に扱われていることか。サシャはこれで幸せになれるかも知れないと安堵の気持ちで出た涙であった。

 二人は、それぞれの居室でお茶をのみ、長旅の疲れを癒す。夕食の時には、家令、軍の副司令官といった主だった家臣を紹介されると説明を受けた。

「サシャ様、こちらにお召し変え下さいませ」
「こちらのお色もお似合いになりそう」
「お髪も飾らせて頂けますか?」

 若いメイドさん達が、サシャをお人形のように飾り立てる。かわいらしいサシャが可愛い服を着ると大変似合って嬉しくなるのだ。

「まああ。可愛いですわ」
「本当に。どれもお似合いになります」

 サシャには過分な衣装に思えたが貴族としては簡易な物で、しかし素材は上質だ。

「恥ずかしいです。こんなに綺麗なお洋服は着たことが無くて」
「とっっても、お似合いですよ」
「はい。かわいいです」

 頬を染めているサシャが可愛くて、さらに髪を結ってとめるとより美しい様子であった。

「さあ、そろそろお迎えが参られますよ」

 執事の迎えでダイニングルームに行くと、既に母が到着していた。

「お母様、とっても綺麗」
「ありがとう。私にまでドレスが用意して下さってあったの。恥ずかしいわね」
「ううん。きれいで似合ってる…お母様が幸せそうで良かった」
「あなたのお陰よ。こんなに良くして頂くなんて」

「サシャさん、とても似合うね。可愛くてきれいだ」
「エメリック様」

「両親が来るまで、サシャさんの好きな物やこれまでのことを聞いても良いですか?」
「はい。勿論です」

 食事の前にエメリックに問われるまま、これまでの生活や教会での学びを話した。
 エメリックが否定したり蔑むことなしに聞いていることで安心して話す事が出来た。

「素晴らしいね。こんなに真面目で頑張りやさん。とても素敵です」
「ありがとうございます。お恥ずかしい話を聞いて下さって感謝します」
「いや。そういう方ならこの地は過ごしやすいと思う。でも困ったことや足りないものがあれば遠慮なくおっしゃってください。なるべくご希望に沿います」
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