親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま

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「おはよう。絢斗」
「おはよう。ゆっくり眠れた?」
「すごく良い睡眠を取れた。マットレスも布団も気持ち良かったよ」
「それなら良かった。朝食にしよう。座って」

 朔空が階下に降りると既に絢斗は起床して朝食の準備をしていた。ダイニングテーブルには、サラダやパン、目玉焼きにウインナーという定番の食事が並んでいた。さらに暖かいスープとコーヒが運ばれて来た。


「あ~美味しかった。ごちそうさま」
「どういたしまして」

 二人で食器を食洗機に入れて作動させ、一通り後片付けを終えた。

「話しても良い?」
「うん」

 ソファーに並んで座る。緊張した面持ちの絢斗が、一つ深呼吸をしてから朔空の方に体を向けた。自分の両手で朔空の両手を取るときゅっと握った。

「朔空、好きです。高校の時からずっと好きです。親友で満足しよう、諦めようと思った事もあるけど、無理だった。ずっと、朔空だけを愛してます」
「え……あ、ありがとう」
「朔空が俺を好きになってくれるか考えてみてほしいんだ。嫌悪感がなければ、ここに住んでもっと一緒に過ごしながら考えてくれないかな?」
「うん…嫌悪感なんて無いよ。びっくりしてるだけ。絢斗には、恋人がいると思っていたから」
「そっか。どうしてそう思ったの?」
「いつもモテるから。でも、確かに彼女の話なんて聞いたことなかったよね」
「いつも朔空を一番に考えていたよ。困った時に助けてくれたり、優しくて可愛くて、綺麗で。ずっと好きだ。大学の頃試しで良いって告白されて女の人と少しデートした時もあったけど、朔空みたいには愛しく思えなかった。俺の一番好きな人は変わらずに朔空だ」
「ありがとう。ちゃんと考えてみる。僕はまだ恋愛したことないんだよ。この年で恥ずかしいけど」
「そう言ってくれて嬉しい。ちょっと部屋を見てくれる?」

 朔空は昨日直ぐに寝たので2階の他の部分はあまり見ていなかった。二人でもう一度2階にあがった。

「この部屋は、投資のために作ったんだ」

 そこには大きなテーブルの前にモニターがいくつも株価やニュースを表示してあり、長く座れるようなパソコン用の椅子があった。他には棚が幾つか。

「この部屋は、オフィスとして考えて作ったんだ。この家にはネット環境を最高のもので揃えてある」

 次の部屋には、大きな作業テーブルや椅子、ホワイトボードのある小会議室のようなスペースと、個人用のパソコン机と椅子が数組、業務用プリンターや棚等の設備があり既に使っているようだった。

「凄いね。既にオフィスとして使っているの?在宅ワークにしたんだ?」
「実は会社を売ったんだ。投資用と前に住んでいたマンションも売って利益が出た。金融資産の評価額は上がっている。配当もあるから生活には困らない。今後、出来れば朔空と二人でITコンサルタントの仕事をしたいんだ。デジタル化に必要なアプリを作って課題を解決したり、低コストで顧客のニーズを満たせる方法を考えて小さな仕事でも自分達らしく働きたい。どうかな?」
「え!?そんな風に考えていたの?仕事内容はすごく魅力的だ。でも今の会社を直ぐに辞められない。暫く考えても良い?」
「ああ。いくらだって待つよ。片思い10年目だよ?気の長さには自信がある」
「なんか…申し訳ないな」
「いや。俺がしたくて勝手にしていることなんだから、気にしないで。他の部屋も見てよ」

 2階にもトイレと洗面所、シャワールームがあった。昨日朔空が泊まった部屋には、クローゼットに少し朔空のサイズに合う普段着とインナーが揃えてあった。

「とりあえずこれを着て、スーツを買いに行こう」
「助かる。ありがとう」
「次が俺の部屋」

 最後に案内された部屋には、巨大なベッドがあり、二人用のカフェテーブルと椅子、小さな冷蔵庫があった。続くクローゼットルームには絢斗のスーツや普段着が掛けられ、不自然に空いたスペースがある。

「ここに朔空のスーツとワイシャツも掛けられるから。ネクタイとか共用出来る。二人で色味を合わせて服を選んだりするのも楽しいと思う」
「う…凄いね。色々準備万端だ」
「いつか告白して一緒に住みたいって思っていたのが、今回のトラブルで早まった。ごめん。朔空は大変だけど、俺にとってはむしろ幸運かもしれない」
「そうか。何か、僕まで楽天的な気持ちになってきた。ありがとう」

 早速普段着に着替えてとりあえず吊るしの既製スーツを少し、ワイシャツを少し購入した。ネクタイは、絢斗の持っていない色味を少し。食器や日用品は既に揃っているというので、買い物は少なかった。

 二人用の食材を買って帰宅。一緒に協力して料理をするのもとても楽しい。久しぶりにゲームをしたり、サブスクリプションで映画を観たり。リラックスして楽しく過ごした。


「行ってきます」
「行ってらっしゃい。気をつけて。本当に送迎要らない?」
「大丈夫。ありがとう」

 朔空は、電車での通勤時間が片道20分長くなった。しかし、日常生活にはむしろ余裕が出来ている。
 在宅勤務である絢斗が洗濯掃除をして、食事を用意して待っていてくれるからだ。
 これまでの外食や中食だった時よりも野菜が多くて優しい味付けによって体調も良く、広い浴槽で入浴できるのは精神的回復を促す。
 何より絢斗と楽しい会話をしながらの食事や余暇が朔空には幸せな時間であった。

「あー、今日も美味しかった。ありがとう。絢斗めっちゃ料理の腕が上がってる。仕事しながらなのにありがとう。何もしてなくてごめん」
「良いよ。在宅で殆ど充電期間なんだから。何もしないと暇を持て余すよ」
「本当にありがとう」
「週末、時間が有るんだろう?温泉取ったから泊まりで行こう」


 たまの連休には、知らない間に露天風呂付きの部屋を予約してある。二人で行く旅行はもう何度目になるのか。

「絢斗はいつも良い宿を見つけてくれるけど、どうやって調べてるの?」
「主にサイトで客室露天風呂付き一択だよ」
「大浴場は苦手だから?」
「朔空を見せたくないからに決まってる」
「へ?」
「綺麗な朔空を見てエッチな事想像するやつがいたら嫉妬でおかしくなりそう」
「は?」
「俺はいつも目の遣り場に困って顔が赤くならないように、反応しないように必死なんだよ」
「え?…」
「気付いてなかっただろうけど」
「うん…だから浴槽で離れたり、お風呂の時間ずらしたりするのか…」
「そう。悪い…」
「いや。聞けて良かったよ」


 今回の宿も絢斗の絶対条件である客室露天風呂のある高級宿。部屋食では創作和洋食が振る舞われた。魚のカルパッチョや新鮮野菜。ローストビーフには和風のソース。主にワインに合うメニューだ。白、赤の順でワインを楽しみ、締めには出汁茶漬け。朔空が緑茶の茶碗を手に持つとほんのり色づいた頬に湯気がかかって艶かしく美しい。

「朔空。俺と生活してみてどうだった?今の気持ち、さわりだけでも聞かせてくれない?」
「毎日本当に楽しい。絢斗といられて嬉しい。これが続いたら良いって思う。だから、僕は絢斗が好きだと思うよ」
「朔空!本当に?それは友人?それとも恋愛として?」
「うん、多分恋愛なんだ。確かめたい。キスしてみよう?それと少しエッチなこともしてみたいんだ」
「う…。良いの?凄いご褒美なんだけど」
「うん。初心者だから考慮してね」
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