運命の番と出会ったら…幸運な再会でした

こたま 療養中

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「部屋まで背負っていくから、また乗って?場所を教えてくれる?」
「ごめんなさい。ありがとう。でもさっきより痛くないから多分歩けるよ?」
「早く治って欲しいから、乗ってくれた方が嬉しいんだ。良ければ背負わせて」
「うん。お願いします」

 また蒼士の背中に茜が乗った。軽くて暖かい、幸せな感触が蒼士を覆う。告げられた部屋番号までゆっくり背負って連れて行く。

「入っても良い?」
「うん」

 中のベッドにそっと茜を下ろした。

「シャワー、大丈夫?手伝おうか?」
「あ…大丈夫。恥ずかしいし一人で平気。ここまで運んで貰ってありがとうね」
「いや。僕は宝来蒼士だ。よろしくね」
「蒼士くん?僕は春川茜」
「うん。さっき書いてたの見た」
「そっか」
「茜君、可愛い。好き。すごく良い香りがする」
「え?そう?」
「うん。多分、僕達運命だよ。きっとまた会える」
「そうかな?」
「うん。絶対に忘れない。きっと大人になったら君を見つけてプロポーズします。だから待っていてください。お願いします」
「そんな。まだバース性もわからないよ?」
「でもきっと運命だ。どうかお願い。君に選んで貰えるように、しっかり頑張って立派な大人のアルファになるから。きっと迎えに行きます。誰とも番にならないで、待っていて」

 蒼士はベッドに座らせた茜の前に跪いた。茜の両手を握って額を寄せた。

「わからないけど…ありがとう」
「うん。きっと迎えに行く」

 次の朝、朝食会場は同じだったが時間が入れ替えだった。出てきた茜を見つけた蒼士は

「大丈夫?茜君。痛くない?」
「あ。ありがとう。大丈夫」
「良かった」

 茜の笑顔が眩しくて幸せな気持ちになった蒼士は、一日中、茜が居ないかと目線で探して過ごした。
 友人と笑い合う茜。仲良く人と気遣えるような様子。可愛らしい仕草。ドキドキして、幸せで堪らなかった。
 いつも何かと御世話係を任じられて、やれやれと対応していた蒼士だった。しかし、もし茜の役にたつことであれば何でもしてあげたいと思う。

 その夜は、蒼士達が星空鑑賞で茜達は敷地内散策だった。また暗闇で転んでしまわないかと心配で仕方がなかった。そして、活動終わりに戻った茜を捕まえると

「今日も、怪我の様子を見た方が良いと思う。救護室に行かない?」
「蒼士くん。大丈夫だと思うよ?」
「これからまたお風呂の時間でしょう?覆わなくて良い?」
「うん。でも、ありがとう。一応行こうかな」

 今日はさすがにおんぶは出来ず、横に並んで救護室に向かった。トントンとドアをノックして、開けると

「あっ!ごめんなさいね。これからお熱の出た子をお迎えに来て貰ったから、車まで連れて行って申し送らないと行けないんだ。急用かな?」
「いえ。昨日の傷の消毒と、お風呂の前に覆った方が良いかと思って来ただけです」
「そっか...もし、自分で出来そうなら、そこにあるもの使ってくれる?時間がかかりそうなの」
「はい。大丈夫です。自分で出来ます」

 蒼士は、茜の代わりに返答した。そして茜を座らせて昨日のガーゼとテープを外した。

「良かった。悪化してないね。消毒して、またガーゼで覆っておこう。その上から昨日みたいに濡れないようにしておくね」
「ありがとう。ずいぶん慣れてるの?上手だね」
「両親とも仕事をして忙しいんだ。自分で何でもやりなさいって、小さい時からなるべく何でも出来るように教わって自分で手当てしてた」
「そうなんだ。すごいなあ」
「食事はお手伝いさんが用意してくれるし、出来ないことも多いけど」
「ありがとう。これで安心したよ」
「良かった。部屋まで送るね」

 借りた物は元通りに片付けて、部屋を出た。養護教諭はまだ戻らないので、部屋の外に不在と札を出してドアを閉めた。

「茜君はどこの中学に行くの?」
「どうだろう?このままならA中学だけど。お父さん、そのうち転勤するかもしれないって。蒼士くんは?」
「そうか。僕も中学受験するから、どこを受けて、受かるかわからない。でも、絶対会いたい」

 部屋まで送り、蒼士はまた許可を得て入室した。お互いに家の住所や電話番号と言った連絡先を交換した。

「僕も、まだわからないけど蒼士くんは特別な感じがする。優しいし、格好良いし、素敵だよ」
「ありがとう。今日はもっと茜君が好きになった。知り合えて嬉しい。奇跡の出会いだと思うよ」
「そうなのかな」
「運命と出逢える確率は、天文学的数字なんだよ」
「そうなんだ」

 ベッドに二人で座っていたが、蒼士は昨日のように茜の前に跪いた。両手をまたそっと握る。
 まっすぐ茜を見つめると、本能が身体を揺さぶった。何も教えられて居ないのに、この人を逃すまいと心臓がダンダンと脈打って

「キスしても…いい?」
「え?キス?」
「うん。すこしだけ」
「うん。…いいよ」

 そっと目を閉じた蒼士が茜に近づいた。小さな唇同士がそっと触れた。暖かさを感じ、ふんわりと心が弾んだ。それからすこしだけ、二人とも唇を開けた。蒼士の舌が茜の唇をちょんと触れる。
 子供らしい、拙い口付けだった。しかし、どきどきと胸を弾ませ幸福な初恋の証。蒼士は一生この気持ちを忘れることは無いだろうと思った。

「好きです。きっと大人になって迎えに行きます。待っていてね」
「ふふっ。くすぐったい気持ち。どうもありがとう」

 幸福のうちに終わりを告げ、名残惜しさで溢れた校外学習。帰宅してからも蒼士はその記憶を反芻しては自らの努力の源泉として、溢れる思いを持て余すほどだった。茜宛に早速手紙を送った。

 しかし。帰宅後すぐ、茜には残念な事が次々と起こっていた。まずは帰った夜から高熱にうなされた。
 救急受診した病院で、意識が朦朧として水分も摂れない様子から入院し、ウイルス感染であると診断された。
 やっと退院すると父がアメリカに赴任することが決まって、バタバタと引っ越す事になった。

 慣れない環境、落ちた体力。落ち着いた生活を取り戻す頃には、校外学習での出来事が記憶から殆ど抜け落ちてしまっていた。
 友人にも引っ越しの挨拶が出来ないまま、あっという間の出来事だった。とても大切な何かを忘れているような、不安感に苛まれながらの引っ越しであった。

「茜。行くよ」
「お姉ちゃん。ちょっと待って」
「二人とも荷物大丈夫?」
「うん。でも何か忘れている感じがする。何だろう?」
「お別れの挨拶出来なかったね。それかな?」
「多分、すぐ帰国出来るわよ。家族皆で頑張りましょう」
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