婚活アプリのテスト版に登録させられたら何故か自社の社長としかマッチング出来ないのですが?

こたま

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「史。週末日曜日開いてる?」
「はい。特に予定はありません」
「それなら博物館に行かない?企画展、史が気に入りそうなんだ。先行チケットを貰ったから、混まないで入れると思うよ」
「えッ?もしかして、古生物のですか?」
「そう」
「わっ。行きたいです。僕、大好きなんです。アノマロカリスを近くで見られたら嬉しいです。以前の企画展では混雑であんまり見られなかったので」
「良かった。前に聞いていたからね。仕事関連だから、史もスーツ着ておいで」
「はい。わかりました。でも僕が同行して大丈夫なんですか?」
「大丈夫だから誘ってる。楽しみだね」
「はい、とっても。お誘いありがとうございます」

 その企画展のコマーシャル映像を請け負った関係で、皇成は関係者に挨拶をしに行くことになった。
 休日に秘書を伴う案件でもなく、一人で行っても良かったが史が好きそうだからと声を掛けたのだった。

 多忙な社長の皇成ではあるが、夕食や休日も何かと出かける用事を作って史とのデートを企画していた。
 映画や博物館、美術館に食事と、皇成の運転で海へのドライブに行ったこともある。

 史も皇成と出かけることに慣れ、いつも楽しんでいた。史にあわせて行き先も行程も考えて楽しませる皇成はとても愛情深かった。史も直ぐに皇成を好きになって行ったが、皇成が噂どおり辰巳グループの親族だと聞かされ少し気後れはしていた。

「史。こっちだよ」
「皇成さん!お待たせしました」
「いや。私も今来たところだよ」
「ふふふ。ありがとうございます」

(皇成さん、今日も格好良い。先に着いても、今来たよって言ってくれるの、優しいな)

 今日は電車移動をして、駅で待ち合わせをしていた。博物館の関係者専用入り口から、事前公開チケットで入場した二人。入り口では関係者の人達と皇成が挨拶を交わす。そして人の疎らな館内でゆっくりと展示物を見学して、出口に向かった時の事だった。皇成と少し雰囲気の似た背の高い男性が二人に話し掛けて来た。

「皇成じゃないか」
「政臣…」
「何?可愛い子連れて、お前のオメガ?」
「私の大事な人だ。モノみたいに言うな。失礼だ」
「ふうん。なあ。皇成なんかやめて、俺の番にならない?こっちは本家だぞ。まあ、俺にはアルファの妻がいるから、妾の一人だけどな」

 男性が史に手を伸ばしてきた。

「やっ…」

 まるで死臭を纏った黒い蛇に身体中を締め付けられるような苦しさが史を襲った。

(嫌。怖い。苦しい。気持ち悪い)

「止めろ!」
「何だよ。俺は本家の嫡男アルファだぞ。大体俺だってオメガと結婚したかったのに、政略でアルファの女と結婚させられてさ。お前は良いよな。自由にしやがって」
「最終的に結婚を決めたのはお前だろうが。それが条件で本社に残って居られるんだろう?」
「くそッ」

「行こう」
「はい」

 史を手の中に取り戻した皇成は、建物を出て大通りに出ると居合わせたタクシーに史と乗った。

「このまま、うちに来てもらっても良いかな?話したい事があるんだ。政臣がごめんな、史。顔色が悪く見える」
「わかりました。さっきは気持ち悪いと思っていましたが今は大丈夫です。一緒に伺います」

「着いたよ」

 到着したのは、とても大きな邸宅だった。門から玄関までもタクシーで乗り入れ、やっと玄関に辿り着いた。

「ここは実家なんだ。史が政臣に目を付けられてしまった。急で申し訳ないが両親を紹介させてくれないか。史を従兄弟のあいつに取られたくない」
「えっ。さっきの方は従兄弟?」
「そう。うちの家族の経緯を含めて説明させて欲しいんだ。両親は私の味方だし、力になってくれるだろう」

 玄関に入ると、ロマンスグレーの紳士と年齢不詳な美しい男性が二人を出迎えた。周りには家政婦さんと思われる女性と執事のような男性もいて、一般家庭の史には驚く光景だった。

「父さん、母さん。こちらが史です。紹介が遅くなってすみません。困ったことになりました。力を貸してください」

 暖炉にグランドピアノまである大きなリビングで、ソファーに向かい合った。皇成からアルファと男性オメガの両親を紹介され、辰巳家について説明を受けた。

 
 皇成の父は辰巳グループの本家次男で、兄に本家と本社を譲って独立して起業した。現在はグループ内での会社規模、業績ともに弟である父のほうが優位にある。

 また兄の息子である政臣は、皇成にとって従兄弟で、これまであちらこちらのオメガと付き合ったり、果ては妻に隠れて夜職のオメガを番にして妾として囲ってみたり、仕事で多大な損害を出す等の問題を起こして来た。

 互いに仕事に利益となる家のアルファ女性と政略結婚している政臣が、優秀な妻と共に本家を立て直すのを条件に政臣を本社に残した。しかし今後も問題を起こせば父は彼を追放する、妻も離縁して実家に帰ると伝えているそうだ。

「政臣も流石にもう静かにはするでしょうが」
「いや。史さんが良ければ、早く番になったほうが良い。本家の業績がまた落ちているんだ。政臣が自暴自棄にならないとも限らない。それに皇成、そろそろ広告代理店は下の者に経営を譲ってわが社に戻って来なさい。自力で会社を興して発展させたのは良いことだが、私も60近いんだ。そろそろこちらも皇成に任せたい。史さん。苦労をかけるかも知れないがお互いに運命だと思ったのなら、是非とも皇成を支えてやってください。お願いします」
「私からもお願いします。皇成は真面目で優しい息子です。私も一般家庭で育って、主人と運命的に出会って結婚しました。史さんが困らないように、私に出来ることはなんでもさせてください」

「お義父様、お義母様」

 皇成が史の前に跪いた。史の手を取ると懇願する。

「史。結婚してください。出来れば直ぐに番にして欲しい。君のご両親にまずはご挨拶させて貰えないか?」
「はい。わかりました。僕も今日、あの人に触られてとても嫌でした。怖かったです。他の人なんて考えられません。皇成さんと番になって結婚します!」
「史。ありがとう」

「「史さん!」」

 もう迷わない、そう決めた史は行動力の固まりだった。直ぐに両親に連絡すると、皇成を連れて実家に向かうことにした。

「ちょっと待って、史。結納金と手土産だけ、直ぐに用意するから」
「皇成。うちの金庫に新札があるから使って」
「母さん、すみません」

 そして、道すがら史の家族の好きなお菓子と母の好きな花の花束を調達すると実家に向かった。

「お父さん、お母さん、ただいま!」

 史が皇成と辰巳グループの事、直ぐに番になって結婚するつもりであることを告げ、皇成を紹介すると。

「キュー。バタン」
「へ?お父さん?」
「ちょっと、史。お父さんびっくりして目を回しちゃったじゃない」
「すみません。私のせいでご迷惑をおかけします。お義父様は大丈夫ですか?」
「私だってあんまり大丈夫じゃないわよ。びっくりしたわ。なんて事なの?!辰巳グループですって?会社の社長さん!?」
「そこはあまり気にされなくても…ご挨拶が遅れて本当に申し訳ございませんでした」
「そこ!気にするわよぉ。うちなんて普通の会社員ですから。史にそんなのが務まるかしら。とりあえずお父さん、病院いく?」
「うーん。…大丈夫。病院嫌い。史。史がぁ…嫁にぃ」
「お父さん、しっかりして」
「うう」

「あ。そういえば今日、お兄ちゃんは?」
「彼女とデートですって」
「へえ、そっか」
「彼女~。結婚~。二人とも~!巣だっていくのかぁ?!」
「もう~。お父さんったらぁ」

(びっくりはしているけど二人ともに反対はされ無かったんだから、もう良いよね?番にはなっちゃおう。結婚だって、僕社会人なんだから自分で決めても良いよね!)

 史はいざとなったら強い。もう話しは終わりと決めて皇成との未来を見据えたのだった。
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