隠れオメガは溺愛アルファにからめ捕られました

こたま

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 病院の仕事はじめには、例年他の受診者さん達の邪魔にならないように貸し切りで人間ドックを受ける。今年からは柚月も一緒だった。

「柚月。検査着まで可愛くて似合ってるなんて。どうしたら良いんだ」

 俊輔は、人目を憚らずに柚月を抱きしめた。頬に軽いキスまで繰り出す。

「本当だよね。可愛い。何でも似合うよ。さあ、皆で一緒に受けようね」

 母の号令により四人で順次検査を回る。父と母は

「今年も無事を祈っているよ。皆健康でありますように」
「本当だよ。結果を待ってから次の旅行に行けるんだからね。何かあったら精密検査を受けてね?」

 仲の良い家族行事に着いていく柚月。こうして年下の番の為に長生きしようとする義父の姿に、とても愛情深いと思った。

 両親は無事に旅行に出発した。俊輔と柚月は3月の春休みに結婚式を挙げる事になった。ハワイでの挙式前に俊輔と柚月は、皆の希望で和装での前撮り写真も撮った。

 ハワイ旅行の参加者は、柚月と俊輔と両親に叔母、従姉妹、従姉妹の娘で計七人。プライベートジエットを予約してある。ホテルと結婚式場も手配済みだ。


「初めてのハワイ。楽しみです」
「機内で着るジャージを買おう。楽な格好をお揃いにして着ようよ」
「え!ジャージなのに10万円?あり得ません」
「そう?良いものだよ?」
「そうでしょうけれど、リラックス出来ません…」
「そうかな?チュッ」

 旅行前の買い物。俊輔は人前で頬やつむじにキスをする。柚月が恥ずかしそうで可愛いからと何処でもイチャイチャしていた。俊輔はそうして自分のものだと知らしめたい気持ちも満足させていた。

「俊輔さん、もったいないですよ」
「良いよ買おう。それ、包んでください」
「かしこまりました」
「じゃあ、あとは婚礼衣装と結婚指輪の最終確認をして出発までOKだ。当日が楽しみだね」

 俊輔の両親も一時帰国して、神戸から叔母達も合流する。ホノルルまでの機内で小学生のお子様が遊ぶものも用意して、家族の楽しい結婚式がもうすぐだった。


 大学が春休みになる前に、課題と次の年度の履修を提出してサツキとお茶をした柚月

「結婚式楽しみだね。おめでとう柚月。結局柚月の結婚が先になったね。どんなだったか教えてね」
「ありがとうサツキ。ハワイ旅行と挙式を楽しんでくるね。お土産何か希望ある?」
「うーん。マヌカハニーがあったらお願い」
「わかった。新年度にまた会おうね」
「行ってらっしゃい」

 大学に入ってまだ一年。怒涛の日々だった。番になり、結婚して式を挙げる。その後はホテルでの披露宴も予定されていた。

 ー出発の日。飛行場で俊輔の叔母家族と挨拶を交わす。

「俊輔、柚月さん。ご無沙汰でしたわね。ご結婚おめでとう。こちらが娘と孫よ。宜しくね」
「初めまして。柚月です。どうぞよろしくお願いいたします」
「「初めまして」」

「ご結婚おめでとうございます。私達までご招待頂いてありがとうございます。とても楽しみにしていました」

 俊輔の従姉妹は、優しげな女性で小学生の娘もかわいらしい。機内では施設で小さい子どもの世話に慣れていた柚月が遊んであげると、すぐに慣れて仲良くなった。


「ハワイ。海が綺麗!日本の海と色が違いますね」
「そうだね。チェックインしたら、俺達は式の予行があります。皆はそれぞれ自由に過ごしてください」
「うん。僕達は観光しているね。お義姉様達はどうされますか?」
「私達も三人で買い物に行ってくるわ」
「では、明日の式まで各自楽しんでください」

 俊輔と柚月の新婚夫婦は、コーディネーターさんと共に会場と式次第を確認して衣装や小物をチェック。全て整えると海の見えるレストランで二人のディナータイムだ。

「景色が良いな。ワインも良いものが揃えてある。二人で食事を出来て良かったよ」
「海鮮がおしゃれに創られて美味しいですね。色々準備をして頂いて、ありがとうございました。僕、幸せです」
「ふふ…可愛いね、柚月。明日の式も楽しみだね」
「はい」

 ホテルの部屋は新婚夫婦用に飾られ、柚月はまた感嘆の声を上げた。

「かわいい、お花とバルーンで飾られています」
「ああ、そうだな」
「写真撮って良いですか?サツキに見せたいです」
「良いよ」

 パシャとスマホで撮影していると、俊輔が後ろから柚月を抱きしめた。つむじにキスをしながら

「二人でお風呂に入ろう。明日に響かない程度に夜も楽しもうね」
「…はい…」

 俊輔は、顔を少し赤らめる柚月を満足そうに見る。柚月も期待していると見て取れた。そのまま抱き上げて浴室へ。お互いを脱がせ合い、体を手のひらで撫でながら清め合う。そして花が浮かぶ乳白色の浴槽に入ると、座った俊輔は足の間に入れた柚月を後ろから抱いた。

「あっ…」

 柚月の感じる両の胸の先を指先で摘み、柔らかく捻る。可愛らしい声を堪能しながら、牙の跡が残る項を舌で撫でると、柚月の前の起立も撫で上げた。
 湯の暖かさと興奮でほんのりとピンクに色づく体を慈しみ、のぼせる前に浴室からあがるとバスタオルで軽く拭きバスローブを着せた。

「は。あっ…もう」
「うん。ベッドに行こう」

 横たえられた柚月は、輝くように色気があった。それを射貫くように見る俊輔は、獰猛な瞳を優しい表情で隠すと

「愛してる。入れて良い?」
「はい。僕も欲しいです」

 ジェルも足すと指先を柚月の中に差し入れた。柚月の気持ちいいところは把握していた俊輔は、撫で叩くことでもっと声をあげさせる。

「あっ、あ...ん...、いく...」
「一緒にいこう」

 ゆっくりと柚月を侵略した俊輔は、大きく動き出した。

「あ、あ...」
「っ…」
「いく...」

 二人とも精を放ち、息を整えながら抱き合った。

「好きだ」
「俊輔さん」


「晴れて良かったねぇ。柚月さん、本当に綺麗。可愛い。ね、あなた?」
「ああ。俊輔が幸せで良かった」
「僕も幸せだよ。嬉しいなあ」
「私もとても幸せだ。君と結婚して息子が幸せになっている。神に感謝しているよ」

 白いチャペルは、青空に映えた。俊輔と柚月の家族だけの小さな結婚式が行われた。白い装束の米国人神父が促すと、誓いの言葉を述べて長いキスをする二人。参列した家族も新郎新婦も皆が笑顔の式だった。
 式の前後には二人で、また家族も加えて沢山写真を撮影した。俊輔は柚月をお姫さま抱っこしたり、その姿勢でのキスを仕掛けたり。カメラマンもノリノリで楽しい写真撮影だ。

「素敵ねえ」
「本当ですね」
「俊輔さんも柚月さんも格好いい。良いなあ」

 叔母家族も感激していた。

 南国らしく、挙式の後は家族で着替えるとファイヤーダンスやフラダンスを鑑賞しながらのカジュアルなBBQ を中心としたディナーだ。
 父と母、俊輔と柚月も二人ずつ踊る。皆の笑い声の溢れる楽しい一時だった。

 ホテルの自室では、

「帰りたくないな」
「本当ですね。またハワイに来たいです」
「うん。夏休みにでも直ぐに来よう」
「はい」
「早く子どもに後継させてゆっくりしたい両親の気持ちも分かるな」
「そうですね」
「ふふ…こんな気持ちになったのは柚月のお陰だ」
「僕は、こんな幸せで夢みたいです。どこかにいたら、僕の両親も喜んでくれるでしょうか?」
「ああ。生きていて状況を知ったら、きっと柚月の幸せを喜ぶだろう」
「そうだと良いです。俊輔さん、ありがとう。大好きです。僕はお義父様やお義母様も皆さん大好き。家族が出来て嬉しいです」
「俺の方がありがとうだよ。愛してる」

 俊輔は、柚月と知り合って直ぐから柚月自身と両親の事も調べ始めていた。しかし、情報は途切れたままであった。何かしらの事情があって柚月を手離さずには居られなかったのだろう。
 いつか、柚月を両親と会わせてやりたい。でもそれが自分達の別離に繋がるのであれば避けたい。俊輔は葛藤していた。
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