繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました

こたま

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「エレン、おまえは賢く美しい。オメガであるから家督は継げないが、身元の確かなアルファの婿養子を必ずや見つけてくるから安心しなさい」
「お父様。お心遣いありがとうございます。僕はお父様とお母様の子供に産まれて本当に幸せです」
「エレン。愛する我が子…」

 エレンは子爵家の長子として誕生した。白く滑らかな肌に細い金の髪がふわふわと彩り、アメジストの大きな瞳を瞬かせる。
 産まれた時から小さめで可愛らしく、オメガではないだろうかと考えられてきた。

 アルファとオメガの番男性同士である両親からの愛を一身に受けてすくすくと美しく育った。両親は、優しいベータの老教師を招いてエレンに学問と貴族としての教養を身につけさせた。


 エレンは、両親と教師の愛情深い教育により真面目で優しく、百合のようなたおやかな美しさを持つ少年になった。
 もしエレンがアルファか、もしくはベータであったなら、一人っ子であり問題なく子爵を継げたであろう。
 この子爵家は、家格は子爵であるが領地は広く、資源に恵まれ農産物の実りが多い。

 過去の領主たちは多くが教育に重きを置いていた。領民は広く皆読み書きを覚えており、家柄にかかわらず優秀な人材を取り立てた事で長く栄えてきた。


「エレン、おまえは賢く美しい。オメガであっても良き伴侶を見つけ、子爵家を盛り立てて欲しい」
「そうだね。お父様が素敵なアルファの旦那様をきっと見つけてくれるよ」
「お父様、お母様ありがとう」

 学園に入るよりもだいぶ早いが、10歳の歳にエレンは神殿を鑑定のため両親と訪れた。

 オメガの発情期を迎える前に、人によっては倦怠感やぼーっとする時期があるなど、前駆症状が出ることがある。
 エレンには、軽い前駆症状と思われる症状が出始めていた。それがバース鑑定を早めに受けることを促したのだった。

「エレン様。心の準備は大丈夫ですか?」

 長く白い神官服を着た年嵩の神官長が両親、エレンの三人を水晶玉の前に並び立たせると言った。

「はい。お願いします」
「では、両手をここに…」

 エレンが玉虫色に光ったり瑠璃色に変化する元は透明であった水晶玉に両手をかざした。

 水晶は、くるくると色味を変化させると、暖かみのある柔いピンク色に変わった。

「これは。なんと美しい桃色…。ちょうど王子殿下の黄緑と補色になりますか…」

「エレン様。優しく美しいピンク色です。清らかな母なるオメガと判定されました」

「そうですか。オメガだと覚悟をしておりました。ありがとうございました」

「エレン様の未来に幸あらんことを…」

 鑑定後は、エレンの部屋に強固な鍵を取り付けたり、部屋で籠っていることが出来るように水回りを改修したり、ベータの側仕えを増やしたりと、屋敷を調えていった。

 鑑定から数週間後の事だった。子爵の父宛に、王家からの書状が届けられた。

「ポール殿下の印籠だ」

 父が執務室で開封すると、翌月に開催される王子殿下のお誕生会にエレンをお招きくださるとの内容だった。
 父から執事を介して、執務室に母とエレンが呼ばれた。

「二人とも、聞いてくれ」
「何でございましょうか」

 母が父に答えた。エレンは二人の会話を注意深く聞いていた。

「早くも王宮にエレンがオメガであると伝わったようだ。王子殿下のお誕生会に招かれたよ。おそらくは婚約者候補の一人としてのことだろう」
「まだ鑑定年齢よりも早いですのに。鑑定から数週間しか経っていませんよ?」

「ああ。だが、我が国は最近アルファもオメガも少ないだろう?ポール殿下はアルファと鑑定されておられるが、同じ年頃にオメガの貴族ご子息のいらっしゃるというお話があまり聞こえて来ないからなぁ」
「そうですね。でも、今後鑑定を受けられる方の中にいらっしゃるかも知れませんし、私共が存じ上げないだけかも知れませんね」
「そうだな。殿下は今後学園で学ばれたり、卒業後には近隣諸国の外遊に行かれる。その中で良い方との出会われるか政略結婚の可能性だって出てくるだろうな」

「はい。我が家のような子爵家では、家格に釣り合いも取れません。候補を広げるだけの意味合いであれば、気負わずともよいでしょうか...」
「ああ。元よりお誘いをお断りできるものでも無い。二人で行って、様子を見てきて欲しい。殿下とエレンの他の参加者にアルファやオメガのような方がおいでになっているか。殿下やご学友の方々はどのようなご様子か。婚約者候補の方々がどのくらいの人数おられるのか」
「はい。かしこまりました」

「エレンも良いかい?」
「はい。承知致しました」

 王宮に初めて登城することになったエレン。緊張もあるが、どんなところかと楽しみでもある。

 王子様ってどんなかたなんだろう?同じ年頃の貴族のかたとお会いできるのかな?

 美しい庭園があると聞いたことがある。お庭を見られるのだろうか。お茶やお菓子を頂く作法もお勉強しないと。

 ワクワク、ドキドキする。エレンが嫌がることなく楽しみにしている様子に母は胸を撫で下ろした。
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