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プロローグ 二 荒廃した世界
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西暦2223年、地球はかつてないほどの窮地に立たされていた。
百年ほど前までは、様々な技術分野発展のために世界各国がしのぎを削り合っていた。特に宇宙開発は目まぐるしい進化を遂げ、アンドロメダ銀河まで三日で移動できるほどの技術が完成されていた。
しかし七十年ほど前から、度重なる異常気象による飢饉、発展途上国での人口爆発、地域紛争、様々な天災、厄災、人災といった不幸が世界を襲い始めた。
そして四十年前、ついに困窮しきった人々は食糧を求めて戦争を始めた。
第三次世界対戦だ。
いくつもの国が地図から姿を消した。
敗戦国であるEU連合は莫大な賠償金により崩壊。EU連合は永世中立国であるスイスの統治下に置かれた。
大戦後、食糧問題は悪化の一途を辿っていった。
そして二十年前、軍縮、不戦に関する全ての条約が撤廃された。それにともない世界各国で軍拡の動きが見られた。日本ですら憲法第九条はなくなり、自衛のために核兵器保有国となった。
世界には再び世界大戦が起きるかもしれないという緊張が走り続けていた。
数ヶ月前、筑波大学にあるJAXAとの共同研究室。
人々は今日の生活の保障もされず、暗い空気が漂っているはずなのだがここだけは違った。
そこにいた研究者たちはこの世界の窮地を打開する一筋の希望が見えたことに歓喜していた。
「おお!神よ!これで私たちは救われる」
研究者が神に祝福を捧げてしまうほどだ。
「あの星が手に入れば」
「この計画を次の国連総会で発表しましょう」
そして今日はその国連総会の日。
現在国際連合は、永世中立国となっている日本とスイス、それに加えて大国アメリカ、ロシア、中国が安保理の常任理事国となり、国連の中心となって活動している。しかし、国連の効力は極限まで弱まり、形骸化されてしまった。
それでも何とかこの壊れかけの世界を繋ぐ最後の砦として機能している。
この日、村田貴史外相は一世一代の大仕事を任されていた。
彼は自覚していた、自分の発言次第で人々の命運が決まると言っても過言ではないことを。
そんなことなど露程も知らない他国の代表たちはいつも通り自国の利益を考えていた。
進行役のテミスが、
「本日は各国の首脳、外相にお集まりいただきありがとうごさいます。ただ今より国連総会を始めさせていただきます。まず始めに、日本国外相よりお話があるようですのでお願いします」
「えー、日本外相の村田です。まずはこちらをご覧ください」
中央のスクリーンに写し出されたのは、広大な森林やのどかな田舎町、中世のヨーロッパを想起させるような城やそれを囲む城下町。
どれも今の地球には見られない光景だ。
これを見たアメリカ全権大使のトーマスは鼻で笑った。
「昔の世界を見せてどうしようというんだ?よもや今更昔の綺麗な地球に戻しましょうなんて言わないよな?」
「もちろんです。実は……こちらの映像は地球で撮られたものではないんですよ」
瞬間、会場にどよめきが起こった。
隅の方に座っている男が声をあげた。
「あのエムグレーション計画を成功させたんですか!?」
エムグレーション計画とは、人類移住計画の一環で移住可能な星を発見するための計画のことである。
「ええ、JAXAの人工衛星がアンドロメダ銀河の中に地球の二倍ほどの大きさのある人類移住可能な星を発見しました」
中国のカン国家主席が身を少し乗り出しながら、
「それで、いったいどんな星なんだ?」
「緑豊かな国ですよ。この星を我々は豊穣の女神の名前をとってエリウと呼んでいます。エリウは五つの大陸に分かれており、それぞれカナマ皇国、アラバス合衆国、アルハール連邦、チューベルン公国、テンハイ帝国の五つの国が納めています」
「ちょっと待て、国が存在するということは人間がいるのか?」
「トーマスさん、その通りです。地球人と全く変わりない生物がいるのです。ですが、この星は地球と全く異なるものがあります」
「それはなんなんだ?」
「それは……昔の小説の世界によくでてきた魔法や魔物やドラゴンが存在する星なんです」
百年ほど前までは、様々な技術分野発展のために世界各国がしのぎを削り合っていた。特に宇宙開発は目まぐるしい進化を遂げ、アンドロメダ銀河まで三日で移動できるほどの技術が完成されていた。
しかし七十年ほど前から、度重なる異常気象による飢饉、発展途上国での人口爆発、地域紛争、様々な天災、厄災、人災といった不幸が世界を襲い始めた。
そして四十年前、ついに困窮しきった人々は食糧を求めて戦争を始めた。
第三次世界対戦だ。
いくつもの国が地図から姿を消した。
敗戦国であるEU連合は莫大な賠償金により崩壊。EU連合は永世中立国であるスイスの統治下に置かれた。
大戦後、食糧問題は悪化の一途を辿っていった。
そして二十年前、軍縮、不戦に関する全ての条約が撤廃された。それにともない世界各国で軍拡の動きが見られた。日本ですら憲法第九条はなくなり、自衛のために核兵器保有国となった。
世界には再び世界大戦が起きるかもしれないという緊張が走り続けていた。
数ヶ月前、筑波大学にあるJAXAとの共同研究室。
人々は今日の生活の保障もされず、暗い空気が漂っているはずなのだがここだけは違った。
そこにいた研究者たちはこの世界の窮地を打開する一筋の希望が見えたことに歓喜していた。
「おお!神よ!これで私たちは救われる」
研究者が神に祝福を捧げてしまうほどだ。
「あの星が手に入れば」
「この計画を次の国連総会で発表しましょう」
そして今日はその国連総会の日。
現在国際連合は、永世中立国となっている日本とスイス、それに加えて大国アメリカ、ロシア、中国が安保理の常任理事国となり、国連の中心となって活動している。しかし、国連の効力は極限まで弱まり、形骸化されてしまった。
それでも何とかこの壊れかけの世界を繋ぐ最後の砦として機能している。
この日、村田貴史外相は一世一代の大仕事を任されていた。
彼は自覚していた、自分の発言次第で人々の命運が決まると言っても過言ではないことを。
そんなことなど露程も知らない他国の代表たちはいつも通り自国の利益を考えていた。
進行役のテミスが、
「本日は各国の首脳、外相にお集まりいただきありがとうごさいます。ただ今より国連総会を始めさせていただきます。まず始めに、日本国外相よりお話があるようですのでお願いします」
「えー、日本外相の村田です。まずはこちらをご覧ください」
中央のスクリーンに写し出されたのは、広大な森林やのどかな田舎町、中世のヨーロッパを想起させるような城やそれを囲む城下町。
どれも今の地球には見られない光景だ。
これを見たアメリカ全権大使のトーマスは鼻で笑った。
「昔の世界を見せてどうしようというんだ?よもや今更昔の綺麗な地球に戻しましょうなんて言わないよな?」
「もちろんです。実は……こちらの映像は地球で撮られたものではないんですよ」
瞬間、会場にどよめきが起こった。
隅の方に座っている男が声をあげた。
「あのエムグレーション計画を成功させたんですか!?」
エムグレーション計画とは、人類移住計画の一環で移住可能な星を発見するための計画のことである。
「ええ、JAXAの人工衛星がアンドロメダ銀河の中に地球の二倍ほどの大きさのある人類移住可能な星を発見しました」
中国のカン国家主席が身を少し乗り出しながら、
「それで、いったいどんな星なんだ?」
「緑豊かな国ですよ。この星を我々は豊穣の女神の名前をとってエリウと呼んでいます。エリウは五つの大陸に分かれており、それぞれカナマ皇国、アラバス合衆国、アルハール連邦、チューベルン公国、テンハイ帝国の五つの国が納めています」
「ちょっと待て、国が存在するということは人間がいるのか?」
「トーマスさん、その通りです。地球人と全く変わりない生物がいるのです。ですが、この星は地球と全く異なるものがあります」
「それはなんなんだ?」
「それは……昔の小説の世界によくでてきた魔法や魔物やドラゴンが存在する星なんです」
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