朔の生きる道

ほたる

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父side

朝起きてから甘えん坊モード発動中の朔は、珍しく下肢装具を着けるのを嫌がり抱っこで病院まで来た。
男性看護師の山添さんに病室に案内されても俺から離れる事を嫌がり、結局秦先生に検査の結果を聞きに行くのは、母さんだけで行ってもらった。

山添さんが洗腸道具を取りに病室から出て行くと、ぽつりぽつりと胸の内を話し出した。

……栄養剤を入れるのはしんどい。

……でも入れないと身体が辛い。

そう口にする朔になんて言葉を返してあげるのが正解なんだろうか…。

小腸を全摘出した朔は、幼い頃から高濃度の栄養剤注入が必要不可欠だった。
毎月毎月必ず入院して、肛門から長い管を入れられて、点滴のようにゆっくりとぽたり…ぽたり…と栄養剤が投与されていく。
それは夜通し行われる治療で、寝ていても幾度も襲う排便欲求に起こされて、その不快感から何とか排便しようと、力の入らないお腹にめいいっぱい力を込めて排出しようと力む。
夫婦で交代で泊まり込んで付き添っていた俺らは、そんな朔の気が紛れるように背中をさすって声をかけてあげる事しか出来なくて、もどがしい気持ちになった。
それは朔が成長した今も変わらない気持ちだった。

4年生の時に脳腫瘍が見つかった。
最初の異変は痙攣発作だった。
1回起きた痙攣に腸疾患の難病を患っているのもあり、即病院を受診した。
検査の待ち時間に再び発作を起こし、その後脳腫瘍が見つかった。
4時間の手術で取り除ける腫瘍は、摘出されたが全てではなかった。
脳の奥深くに絡みつくように腫瘍があるためこれ以上は、大切な神経を傷つけると執刀医が判断された。
腫瘍は良性だったものの未だ脳に巣食う腫瘍を小さくする為に放射線治療や抗がん剤が投与された。
辛い闘病生活が始まった。
そんな中でも決まって毎月の栄養剤の注入があって、吐き気止めを使って抗がん剤の副作用による強い吐き気を抑えてまで、注入を受ける朔の姿に薬で全てコントロールされていると、当時はかなりショックを受けた。
今も脳腫瘍が脳を圧迫し続けているため、難治性のてんかんと診断され、麻痺の残る手足も日常動作がスムーズに行えるようにリハビリにも励んでいる。
本当に頑張り屋な息子だ。

着替えてベッドに横になった朔に呼ばれて隣に寝転び背中を撫でていると、山添さんが戻ってきた。

「朔、洗腸するな。病衣捲るよ。」

ガサガサとトイレシートを朔の腰の下に敷き病衣を巻くってお尻を出すと、山添さんはゴム手袋を着けて、濡らした脱脂綿で肛門拭った。

「……いやだ…洗腸…。」

「嫌だよな…。栄養剤入れるためにお腹綺麗にさせてな?…ゆーっくり深呼吸するよ。お尻少し気持ち悪くなるからね。」

山添さんに深呼吸を促されているのに俺の服の胸元を握りしめて、ガチガチに体に力を入れている朔。
肛門に潤滑ジェルを纏ったカテーテルが挿入された瞬間…ぅゔ……と苦痛の声が漏れ、奥へ進んで来る不快感に足をもぞつかせ嫌がるため、抱きしめるように足を抑制した。

「お水流すね。」

「……うぅぅ…いやッ…んん」

「…ぁあ、まだ力まないよ。ふぅって力抜いてて。」

「朔~、お口すぼめてふぅって息吐いて。」

少しでも力を抜けるように一緒に深呼吸をする。

「……ぅぅ…ンん……ふぅ…ぅあ…はァ…」

何度も力みそうになるのを堪えようやく洗腸液が排出できる。
自力で出し切る事ができない朔は、不規則に動く腸に任せてジワジワと洗腸液が自然に漏れ出るのを待つ。
それが終わると再び洗腸液を注入する。

「朔、もう1回お水入るよ。」

「偉いな。お腹綺麗になってるからなぁ。」

「…嫌だ。……もうしたくない。最後にしてよ!」

「ごめんなぁ…。まだ便が出てくるから、またお水入れるよ。」

数回洗腸液を注入して漏れ出てくるのを待ってを繰り返して、肛門に当てているパットに水様便が着かなくなったら洗腸が完了する。

「朔、終わり。お腹綺麗になったよ。後で秦先生と栄養剤持って来るな。少し休んでて。」

    
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