ギャルゲーのヘイトを溜めるクズでゲスな親友役として転生してしまいました。そして主人公が無能すぎて役にたたない……。

桜祭

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第3章 賑やかし要員

17、生きる希望

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ファイナルシーズンのゲームも完結した。
明智秀頼などの嫌われキャラクターは省かれて死んでいたが、大団円という結末を終える。

初代、セカンド、ファイナルとそれはもうとても長いゲームシリーズであったがようやく完走した。

「終わったよ、豊臣君……」

『悲しみの連鎖を断ち切り』シリーズはファイナルで完全完結である。
同じメーカーの違う作品は世界観が一緒だが、全然話も違うためにやる必要はないらしい。

「豊臣君との繋がりが切れちゃったな……」

豊臣君がどんなものをこのゲームで見たのかを知りたくてやり始めた作品。
いざ終わると豊臣君を繋ぐ話題が断たれた気がしな。

「……」

十文字タケルやヒロインらの日常は私の知らないところで続き、新しい出会いや大人になっていく。
でも、私はそんな彼らの未来の姿をもう一生見ることができない。
ゲームを通じてたくさんの友達ができた気がしていたのに、最終的に私だけが取り残された感じ。

豊臣君に置いていかれ。
『悲しみの連鎖を断ち切り』シリーズのキャラクターにも置いていかれ。
私だけが未来に進めずに残されてしまった。

生きる希望がなくなった……。


ーーーーー


「ゲホ……ッ!?」
「由美!?ちょっと、由美っ!?」

それから数日後、私は学校の廊下で口から吐血した。
そのまま意識を失ってしまい、気が付くとベッドの上だった。
たくさんの管が身体に繋がれている。

あぁ、たぶんもう死ぬ。
助からない気がする。
というか別に助からなくて良い。

『ーーーーーーー』

お母さんが何か言っている。
ごめんなさい、もう何も聞こえないの……。

自分が死ぬ感覚だけが身体に駆け巡る。

生きる目標を失って、生きる気力も失って、生き方すらわからない。

豊臣君のところに行くのが早すぎたね……。
早く来すぎって怒るかな?
それとも早い再会だねって喜んでくれる?

どっちの反応をされても、豊臣君に会えるならそれ以上に幸せなことなんかないよね。







そういえば、豊臣君は覚えてるかな……?

『俺の夏休み毎日ラインが1回でも途切れたら罰ゲーム受けるよ』って会話。
私の言うことなんでも聞くって約束。

忘れていたんだけど、今思い出したから言うね。




ーーもし、次に私がまた人間に生まれ変わったら。
ーーその時は豊臣君の側に居させて欲しいな。
ーー彼女になりたいとか贅沢言わないから。
ーー私の近くに居て欲しい。


必ず、私が豊臣君を見つけ出すから。










ーーーーー


「なぁ、秀頼。今日の1時間目の授業なんだっけ?」
「なんだっけな?国語とかじゃねーか?」
「残念、算数でした」
「なぁ、タケル。親友やめようか?」

秀頼?タケル?
なんだっけ、酷く懐かしい名前。
すれ違った2人の会話を聞いて、頭が割れそうなほどに痛い。

凄く身近にあった気がする。
確か『悲しみの連鎖を断ち切り』……、それだっ!

えっ!?ちょっと待って。私の名前って津軽円よね!?
髪が緑色している女子生徒!
緑髪なんて地毛であり得ないでしょ!?

「転生してる……」

ほんのささいな切っ掛け。
十文字タケルと明智秀頼の声と顔でこの世界がゲームの世界だと気付いた。

ただ違うことは、ゲームよりだいぶ幼いこと。

「…………この世界かなりバイオレンスじゃん!」

津軽円は特に事件に巻き込まれもしない、所詮は賑やかし要因キャラクター。
でも……。

明智秀頼はヤバイ!……あの豊臣君の人生を滅茶苦茶にしたあのクズと同じくらいに生きる価値のない奴。

「原作に巻き込まれない程度に生き抜いてみせる!」

こうして、私は来栖由美の人生を捨てて、新しく津軽円の人生がはじまるのである。
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