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第5章 鳥籠の少女
番外編、歪んでいる親友への価値観
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原作の時系列における明智秀頼と十文字タケルのやり取りです。
クズゲス本編には一切関係のない2人の人間関係に焦点の当てた話になります
†
俺が廊下を歩いていると、向こう側から3列になって話しているバカ男集団を見掛ける。
バカ笑いして静かな廊下を歩く生徒からは白い目で見られている。
気持ち悪いな……、とドン引きしながら廊下を歩いていると1番右端にいたロン毛の奴とぶつかる。
「あっ、すんません」
「…………」
狭くておめでたい視野だなと思いつつ通りすぎようとすると「おい」と叫ばれて肩を掴まれる。
「なんだてめえら?」
「こっちは謝ってんだろ!お前も謝れよ!舐めてんのか!?」
「『すんません』とか誠意がゼロの謝罪とかそっちのが舐めてんだろが?てか3列で歩いてんなよ気持ち悪い」
「あぁ!?てめぇはボッチじゃねーか!僻みキモッ」
「触れんなや!きたねえ指紋とか体液が付くとかマジあり得ねぇ」
未だに俺の制服を掴みっぱなしだったロン毛男に徐々に殺意が沸いてくる。
殺してやろうかとギフトでも発動しようかと口を開く。
『申し訳ありませんでしたぁぁぁぁ!』
「あ?」
俺の制服が掴まれてる横にダッシュしながら近付いて来た。
廊下を走るんじゃねぇと、注意しそうになる。
「ちょっとこいつ愛想悪いだけなんです!本当に先輩に迷惑かけてしまい申し訳ありませんでした!」
「おい、タケ……」
「俺から言って聞かせます!本当に二度とこんなことがしない様に親友から注意しておきます!どうか寛容な処置をお願いします!」
俺が何か言いたくても遮る様な大声で謝罪をしている。
こいつなんなんだとタケルを睨み付ける。
「ちっ、わかったよ。うるせーな、お前に免じて許してやるよ」
「ありがとうございました、先輩方!」
「お前の彼女寝取るぞ」
「お前は喋るなっ!」
俺の軽口を書き消すようにタケルは大声を上げる。
バカ3人組は俺とタケルを気持ち悪そうな目で見て早歩きで消えていく。
「お前さ、あの状態ならケンカになるぞ!」
「殴り合いでも、口喧嘩でも負ける気はしねぇ」
「お前が素手でも言葉でも強いのはわかるけど3人じゃ分が悪いだろ」
「けっ、ちょうど良いハンデだ」
「秀頼っ!」
どうせ、ギフトでなんとでもなるのによ、うるさい奴だ。
タケルが俺に向けているのは説教をしてくる顔だ。
こいつにはギフトが効かない。
本当にムカつく、いつか殺す。
「ちっ……、偽善者が。借り作ったとか思うなよバカ野郎がっ!」
「おい、秀頼っ!」
「バイバイ」
説教はごめんとばかりに逃走を図る。
タケルの説教は長いし時間の無駄だ。
こういうのは聞き流して逃げるのが最適解だ。
ーーーーー
数日後。
俺はタケルと一緒に体育の授業が始まるので廊下を歩いていると、こないだの俺みたいに数人から絡まれている男子生徒を見掛ける。
「…………」
「…………」
俺はわざと避けるように歩くと、タケルも俺の後ろを歩く。
絡まれている男子は既に涙目だ。
その男子と、タケルを交互に視線を向けて声をかける。
「助けてやらないのか偽善者?」
「は?なんで俺が助けないといけない」
タケルは『何言ってんだお前?』と俺の言動に顔をしかめる。
「俺は偽善者じゃない。あの時はお前だから助けた。だから俺は偽善者じゃない」
偽善者じゃないアピールを2回連続で強調するようにする。
「なんだよそれ?俺だから助けた?舐めてんじゃねーぞガキが」
「俺は秀頼と理沙以外は見捨てるさ。大事な人だけ守る。それともなんだ?俺にあいつを助けて欲しかったか?それで偽善者と罵るか?」
「ちっ……」
「お前の理想を俺に押し付けんなよ」
スタスタと絡まれた男子生徒から離れながら授業をするグラウンドへ向かって歩みを進める。
「お前の彼女寝取るぞ」
「残念ながら俺に彼女はいませーん!残念でしたぁ!」
「なんだ、お前リアル童て……」
「そういうの弄るのはよくないと思うよ!大体、秀頼お前だって」
「は?」
「え?お前ど、ど、ど……?」
「?」
「負けたぁぁぁぁ」
「アホ」
タケルが顔を隠しながら喚きだす。
マジで経験ないのか……。
「え?いつ?教えろよ!?なんで初体験した時言わねーの!?」
「言うわけねーだろ……」
タケルからすがる様に体操服を引っ張られる。
なんか、申し訳なくなってきた……。
「直近でしたのいつよ!?」
「1週間前」
「…………え?何食わぬ顔して学校来てたの?」
「女と別れて3時間後に何食わぬ顔でお前と絵美と一緒に通学したけど」
「……え?相手は佐々木じゃねーの?」
「そこ突っ込む?」
いつもの『明日の天気なんだ?』くらいのテンションで淡々と答える。
タケルが『うわー』って顔をしながら俺を見ていて、少し居心地が悪い。
「モテる男のアドバイスくれよ、アドバイス」
「終わってすぐ服着るなよ。嫌われるぞ」
「え?どゆこと?」
「…………」
タケルが頭に?を浮かべている。
むしろ大失敗をさせてやる嘘アドバイスでも送るべきだったかと思い直す。
「けっ。お前には必要のない知識だよ」
「でも俺だっていつか彼女作るぞ!」
「いつかっていつだよ?お前の彼女寝取るぞ」
「秀頼に寝取られても、俺の魅力で取り返してみせるさ!ははっ、負けねーぞ」
「死ね」
ポジティブ過ぎてダメだこいつは……。
俺とは一生平行線だ。
わかりあえる時は、残念ながら無さそうだ。
「相変わらず口悪いのなお前……。俺しか友達ができねぇわけだ」
「いらねーよ、人なんて裏切るだけだ。裏切られるくらいなら独りで良い。俺はお前も必要とは感じない」
「臆病になるなよ、秀頼。俺はお前が変な奴に絡まれてたら何回でも助けてやる。お前が必要ないって100回突っぱねても101回助けてやる」
「…………」
なんでこいつは本当に俺をイライラさせるのが上手なんだ?
助けて欲しいって思ってしまうじゃねーかよ……。
表現のできない感情がグルグルと周りはじめる。
「俺は絶対お前なんか助けない。タケルが絡まれているのを見掛けたら鼻で笑ってやる」
「良いよ。でも俺は秀頼に100回見捨てられても100回お前を助けてやるから」
「一方通行だな、誰がお前の手なんか借りるかよ」
俺はタケルが嫌いだ。
毎日毎日、嫌いで遠ざけてるのに気付くと毎日近くに当たり前の顔して俺の領域に陣取っているのがむかつく。
殺してやりたいくらいに嫌いだ。
ーーーーー
「でさー、あいつのガキっぽいところマジムリー。秀頼のが年下なのに大人っぽくて好きぃ」
「はははっ、酷い言い草だなユナは。ま、確かにあのロン毛は小学生みたいな奴だったな」
「きゃははは」
いつかに俺にぶつかってやる気ない謝罪してきたあげく威嚇してきたロン毛先輩の彼女を寝取って、ホテルからの道をブラブラ歩いていた。
香水や、化粧などかなりケバくて、あまり好みじゃない女だったが、胸だけはデカイ女だった。
女が俺の右腕に抱き付いている状態のまま笑っている。
「秀頼のたくましいところ、素敵よ」
「また今日やる?」
「良いの!?」
今日は学校も休みで自堕落な生活をしていた。
学校の宿題とかも全部テキトーにその辺のやつにぶん投げてるし、休み中することがない。
「あ、見てぇ秀頼」
「あん?」
「なんか女守る系の男殴られてる。ダサくねぇ、あれ」
「あー?」
ユナが指を指した方向を見ると確かに殴っている男と殴られている男、そして女が立っている。
彼女がもっと近くで見たいと喚くのでちょっと近付いてみる。
「きゃはは、あっちの男殴られっぱなしじゃん」
「…………タケル……?理沙ちゃん?」
「何、秀頼?あのダサ男と知り合い?」
「は?何言ってんのお前?」
「え……?」
「あいつがダサ男だ?……あいつよりかっけー奴いねーから」
白けた。
超絶に白けた。
休み中に遊ぶ約束をしたわけじゃないのにあのバカ男の姿を視界に入ったのが苛立ちを加速させる。
右腕に抱き付いているユナの手を払い退けて、殴られているタケルの元へ向かっていく。
女がなんか言っていたが耳に入らなかった。
「だから、理沙に謝れって」
「消えろっ!」
タケルと男の元に近付く。
理沙ちゃんから「明智君!?」と声が上がる。
「【消えるのはてめえだタコ】」
「あ?」
「【車に轢かれて死ね】」
タケルを殴っていた坊主男が『命令支配』に従い、俺とタケルの元から走り去って行く。
助けられたタケルと理沙ちゃんは驚きの目で俺を見ている。
「……ひで、……より?」
「ははっ、みっともねぇなお前?理沙ちゃん絡まれてお前キレたみたいなもんか?情けねぇ、そんなんで俺を守れるのかよ」
「……守れるさ」
「けっ」
殴られて、顔に少し泥が付いている。
理沙ちゃんが兄貴に駆け寄って行く。
「明智君、ありがとうございます!兄さんを助けてくれて」
「助けてねぇ、タケルが殴られてるのを目撃したから鼻で笑いにきただけだ。ひでぇ、顔だ。ぶっさいくなお前の顔見れて面白かったから帰るわ」
「秀頼……、ありがとう」
「助けてねぇ」
「ははっ、お前って奴はよ……」
「お前が俺を鼻で笑うんじゃねぇ」
タケルと理沙ちゃんに背を向ける。
見飽きた顔2つを視界なんて今さら入れたくもなかった。
2人をバカにして気が済んだので、ユナの元へ戻る。
「ち、ちょっと秀頼?あの男なんか車ぶつかったみたいなんだけど」
「悪い奴には天罰が下るってもんさ」
死んだ坊主男に言ったのか。
俺自身に言い聞かせたのか。
そんな言葉を柄にもなく呟く。
サイレンが鳴り始めるのを聞きながら俺は空を見て歩く。
俺の最期はどんなものになるだろう?
その時、あいつはどんな顔をする?
ーー悲しむタケルの顔が頭に浮かび、鼻で笑ってその想像を書き消したのであった……。
†
原作における明智秀頼の、十文字タケルに向ける感情は複雑なものでした。
叔父の虐待の影響により、人間不審であり、秀頼は自分のギフトのかかった人間しか信頼していません。
そんな中、自分のギフトの影響を受けないタケルの存在は秀頼の中では恐怖の対象である。
同時に嫉妬、憧れ、畏怖など様々な感情をタケルに持っていました。
そんな状態でありながら、ギフトの影響を受けないながらも自分を親友と呼び仲良くして、辛いことがあったら真っ先に助けに来てくれるタケルを心の底から信頼していました。
タケルを好きになればなるほど嫌いになり、
タケルを嫌いになればなるほど好きになる。
そんな矛盾を抱えています。
この世界においてタケルを1番嫌いなのは秀頼でありながら、
また逆にタケルを1番大好きなのも秀頼である(理沙や他のヒロインよりも与える愛が1番大きくて重いのは秀頼)
原作の明智秀頼は、タケルに面倒なコンプレックスを抱えています。
また、タケルも秀頼のことを1番の親友を自称するし、1番の親友であり続けました。
理沙ルートなどの自分の手で秀頼を殺害するルートにおいても、タケルは秀頼の親友をやめません。
秀頼が世界から居なくなった悲しみの穴は、ヒロインや自分の子供、家族ができても決して埋まることはありませんでした……。
お互いに親友と認めていて、仲も良いのに、絶対に和解しないまま秀頼は『悲しみの連鎖を断ち切り』の原作で必ず死亡します。
もし、タケルに『アンチギフト』さえ宿っていなければこんなに拗れることはありませんでした。
しかし、タケルに『アンチギフト』が宿っていなければ、秀頼は彼に興味すら沸きませんので、親友にはなれませんでした。
ある意味、出会いからバッドエンドが決まっているカップリング。
Q:なんでタケルはそんなに秀頼が好きなの?
A:タケルの一目惚れです。タケルの理想とする男性像がまんま秀頼の顔でした。
アウトローな目付きなどがタケルにドンピシャです。
クズゲス本編などでも、タケルが秀頼にあまり強く出れないのは惚れた弱みから。
原作・クズゲスどっちにもこの設定はあります。
Q:『悲しみの連鎖を断ち切り』のユーザーからなんでそんなに秀頼は嫌われているの?ダークヒーロー的な人気はありましたか?
A:ダークヒーロー的な人気は皆無です。
嫌われている理由は、ほとんど秀頼に対する心理描写がないため。
つまり、秀頼の内面がユーザーに語られないために、
普段はクズゲスなことをしているクセに、調子の良い時だけ主人公の親友を名乗っているからむかつくからという理由。
Q:「お前の彼女寝取るぞ」は原作秀頼の口癖ですか?
A:口癖です。
この書き下ろしの番外編で突然沸いた言葉ですが、原作秀頼のイメージピッタリで驚きました。
こんなパワーワードをサラッと言えるのはこいつくらいです。
本当にやる辺りがやべー奴。
『悲しみの連鎖を断ち切り』ユーザーの秀頼に対するイメージは寝取りの竿役ですから。
ギフト『命令支配』も寝取り役に相応しいものを準備しました。
Q:原作の秀頼とタケルに救いはありませんか?
A:ありません。
強いていうならタケルの手により、秀頼が殺害されることが1番の救いです(ルートによってはタケルが介入しないまま秀頼は殺害されることもあるため)。
たくさん反応をいただきありがとうございます!
感謝を込めて書いたオリジナルシナリオです。
たまにこういった番外編などを書いていく予定です。
質問や、やって欲しいことなどがあればリクエストをくださると応えていきますね。
クズゲス本編には一切関係のない2人の人間関係に焦点の当てた話になります
†
俺が廊下を歩いていると、向こう側から3列になって話しているバカ男集団を見掛ける。
バカ笑いして静かな廊下を歩く生徒からは白い目で見られている。
気持ち悪いな……、とドン引きしながら廊下を歩いていると1番右端にいたロン毛の奴とぶつかる。
「あっ、すんません」
「…………」
狭くておめでたい視野だなと思いつつ通りすぎようとすると「おい」と叫ばれて肩を掴まれる。
「なんだてめえら?」
「こっちは謝ってんだろ!お前も謝れよ!舐めてんのか!?」
「『すんません』とか誠意がゼロの謝罪とかそっちのが舐めてんだろが?てか3列で歩いてんなよ気持ち悪い」
「あぁ!?てめぇはボッチじゃねーか!僻みキモッ」
「触れんなや!きたねえ指紋とか体液が付くとかマジあり得ねぇ」
未だに俺の制服を掴みっぱなしだったロン毛男に徐々に殺意が沸いてくる。
殺してやろうかとギフトでも発動しようかと口を開く。
『申し訳ありませんでしたぁぁぁぁ!』
「あ?」
俺の制服が掴まれてる横にダッシュしながら近付いて来た。
廊下を走るんじゃねぇと、注意しそうになる。
「ちょっとこいつ愛想悪いだけなんです!本当に先輩に迷惑かけてしまい申し訳ありませんでした!」
「おい、タケ……」
「俺から言って聞かせます!本当に二度とこんなことがしない様に親友から注意しておきます!どうか寛容な処置をお願いします!」
俺が何か言いたくても遮る様な大声で謝罪をしている。
こいつなんなんだとタケルを睨み付ける。
「ちっ、わかったよ。うるせーな、お前に免じて許してやるよ」
「ありがとうございました、先輩方!」
「お前の彼女寝取るぞ」
「お前は喋るなっ!」
俺の軽口を書き消すようにタケルは大声を上げる。
バカ3人組は俺とタケルを気持ち悪そうな目で見て早歩きで消えていく。
「お前さ、あの状態ならケンカになるぞ!」
「殴り合いでも、口喧嘩でも負ける気はしねぇ」
「お前が素手でも言葉でも強いのはわかるけど3人じゃ分が悪いだろ」
「けっ、ちょうど良いハンデだ」
「秀頼っ!」
どうせ、ギフトでなんとでもなるのによ、うるさい奴だ。
タケルが俺に向けているのは説教をしてくる顔だ。
こいつにはギフトが効かない。
本当にムカつく、いつか殺す。
「ちっ……、偽善者が。借り作ったとか思うなよバカ野郎がっ!」
「おい、秀頼っ!」
「バイバイ」
説教はごめんとばかりに逃走を図る。
タケルの説教は長いし時間の無駄だ。
こういうのは聞き流して逃げるのが最適解だ。
ーーーーー
数日後。
俺はタケルと一緒に体育の授業が始まるので廊下を歩いていると、こないだの俺みたいに数人から絡まれている男子生徒を見掛ける。
「…………」
「…………」
俺はわざと避けるように歩くと、タケルも俺の後ろを歩く。
絡まれている男子は既に涙目だ。
その男子と、タケルを交互に視線を向けて声をかける。
「助けてやらないのか偽善者?」
「は?なんで俺が助けないといけない」
タケルは『何言ってんだお前?』と俺の言動に顔をしかめる。
「俺は偽善者じゃない。あの時はお前だから助けた。だから俺は偽善者じゃない」
偽善者じゃないアピールを2回連続で強調するようにする。
「なんだよそれ?俺だから助けた?舐めてんじゃねーぞガキが」
「俺は秀頼と理沙以外は見捨てるさ。大事な人だけ守る。それともなんだ?俺にあいつを助けて欲しかったか?それで偽善者と罵るか?」
「ちっ……」
「お前の理想を俺に押し付けんなよ」
スタスタと絡まれた男子生徒から離れながら授業をするグラウンドへ向かって歩みを進める。
「お前の彼女寝取るぞ」
「残念ながら俺に彼女はいませーん!残念でしたぁ!」
「なんだ、お前リアル童て……」
「そういうの弄るのはよくないと思うよ!大体、秀頼お前だって」
「は?」
「え?お前ど、ど、ど……?」
「?」
「負けたぁぁぁぁ」
「アホ」
タケルが顔を隠しながら喚きだす。
マジで経験ないのか……。
「え?いつ?教えろよ!?なんで初体験した時言わねーの!?」
「言うわけねーだろ……」
タケルからすがる様に体操服を引っ張られる。
なんか、申し訳なくなってきた……。
「直近でしたのいつよ!?」
「1週間前」
「…………え?何食わぬ顔して学校来てたの?」
「女と別れて3時間後に何食わぬ顔でお前と絵美と一緒に通学したけど」
「……え?相手は佐々木じゃねーの?」
「そこ突っ込む?」
いつもの『明日の天気なんだ?』くらいのテンションで淡々と答える。
タケルが『うわー』って顔をしながら俺を見ていて、少し居心地が悪い。
「モテる男のアドバイスくれよ、アドバイス」
「終わってすぐ服着るなよ。嫌われるぞ」
「え?どゆこと?」
「…………」
タケルが頭に?を浮かべている。
むしろ大失敗をさせてやる嘘アドバイスでも送るべきだったかと思い直す。
「けっ。お前には必要のない知識だよ」
「でも俺だっていつか彼女作るぞ!」
「いつかっていつだよ?お前の彼女寝取るぞ」
「秀頼に寝取られても、俺の魅力で取り返してみせるさ!ははっ、負けねーぞ」
「死ね」
ポジティブ過ぎてダメだこいつは……。
俺とは一生平行線だ。
わかりあえる時は、残念ながら無さそうだ。
「相変わらず口悪いのなお前……。俺しか友達ができねぇわけだ」
「いらねーよ、人なんて裏切るだけだ。裏切られるくらいなら独りで良い。俺はお前も必要とは感じない」
「臆病になるなよ、秀頼。俺はお前が変な奴に絡まれてたら何回でも助けてやる。お前が必要ないって100回突っぱねても101回助けてやる」
「…………」
なんでこいつは本当に俺をイライラさせるのが上手なんだ?
助けて欲しいって思ってしまうじゃねーかよ……。
表現のできない感情がグルグルと周りはじめる。
「俺は絶対お前なんか助けない。タケルが絡まれているのを見掛けたら鼻で笑ってやる」
「良いよ。でも俺は秀頼に100回見捨てられても100回お前を助けてやるから」
「一方通行だな、誰がお前の手なんか借りるかよ」
俺はタケルが嫌いだ。
毎日毎日、嫌いで遠ざけてるのに気付くと毎日近くに当たり前の顔して俺の領域に陣取っているのがむかつく。
殺してやりたいくらいに嫌いだ。
ーーーーー
「でさー、あいつのガキっぽいところマジムリー。秀頼のが年下なのに大人っぽくて好きぃ」
「はははっ、酷い言い草だなユナは。ま、確かにあのロン毛は小学生みたいな奴だったな」
「きゃははは」
いつかに俺にぶつかってやる気ない謝罪してきたあげく威嚇してきたロン毛先輩の彼女を寝取って、ホテルからの道をブラブラ歩いていた。
香水や、化粧などかなりケバくて、あまり好みじゃない女だったが、胸だけはデカイ女だった。
女が俺の右腕に抱き付いている状態のまま笑っている。
「秀頼のたくましいところ、素敵よ」
「また今日やる?」
「良いの!?」
今日は学校も休みで自堕落な生活をしていた。
学校の宿題とかも全部テキトーにその辺のやつにぶん投げてるし、休み中することがない。
「あ、見てぇ秀頼」
「あん?」
「なんか女守る系の男殴られてる。ダサくねぇ、あれ」
「あー?」
ユナが指を指した方向を見ると確かに殴っている男と殴られている男、そして女が立っている。
彼女がもっと近くで見たいと喚くのでちょっと近付いてみる。
「きゃはは、あっちの男殴られっぱなしじゃん」
「…………タケル……?理沙ちゃん?」
「何、秀頼?あのダサ男と知り合い?」
「は?何言ってんのお前?」
「え……?」
「あいつがダサ男だ?……あいつよりかっけー奴いねーから」
白けた。
超絶に白けた。
休み中に遊ぶ約束をしたわけじゃないのにあのバカ男の姿を視界に入ったのが苛立ちを加速させる。
右腕に抱き付いているユナの手を払い退けて、殴られているタケルの元へ向かっていく。
女がなんか言っていたが耳に入らなかった。
「だから、理沙に謝れって」
「消えろっ!」
タケルと男の元に近付く。
理沙ちゃんから「明智君!?」と声が上がる。
「【消えるのはてめえだタコ】」
「あ?」
「【車に轢かれて死ね】」
タケルを殴っていた坊主男が『命令支配』に従い、俺とタケルの元から走り去って行く。
助けられたタケルと理沙ちゃんは驚きの目で俺を見ている。
「……ひで、……より?」
「ははっ、みっともねぇなお前?理沙ちゃん絡まれてお前キレたみたいなもんか?情けねぇ、そんなんで俺を守れるのかよ」
「……守れるさ」
「けっ」
殴られて、顔に少し泥が付いている。
理沙ちゃんが兄貴に駆け寄って行く。
「明智君、ありがとうございます!兄さんを助けてくれて」
「助けてねぇ、タケルが殴られてるのを目撃したから鼻で笑いにきただけだ。ひでぇ、顔だ。ぶっさいくなお前の顔見れて面白かったから帰るわ」
「秀頼……、ありがとう」
「助けてねぇ」
「ははっ、お前って奴はよ……」
「お前が俺を鼻で笑うんじゃねぇ」
タケルと理沙ちゃんに背を向ける。
見飽きた顔2つを視界なんて今さら入れたくもなかった。
2人をバカにして気が済んだので、ユナの元へ戻る。
「ち、ちょっと秀頼?あの男なんか車ぶつかったみたいなんだけど」
「悪い奴には天罰が下るってもんさ」
死んだ坊主男に言ったのか。
俺自身に言い聞かせたのか。
そんな言葉を柄にもなく呟く。
サイレンが鳴り始めるのを聞きながら俺は空を見て歩く。
俺の最期はどんなものになるだろう?
その時、あいつはどんな顔をする?
ーー悲しむタケルの顔が頭に浮かび、鼻で笑ってその想像を書き消したのであった……。
†
原作における明智秀頼の、十文字タケルに向ける感情は複雑なものでした。
叔父の虐待の影響により、人間不審であり、秀頼は自分のギフトのかかった人間しか信頼していません。
そんな中、自分のギフトの影響を受けないタケルの存在は秀頼の中では恐怖の対象である。
同時に嫉妬、憧れ、畏怖など様々な感情をタケルに持っていました。
そんな状態でありながら、ギフトの影響を受けないながらも自分を親友と呼び仲良くして、辛いことがあったら真っ先に助けに来てくれるタケルを心の底から信頼していました。
タケルを好きになればなるほど嫌いになり、
タケルを嫌いになればなるほど好きになる。
そんな矛盾を抱えています。
この世界においてタケルを1番嫌いなのは秀頼でありながら、
また逆にタケルを1番大好きなのも秀頼である(理沙や他のヒロインよりも与える愛が1番大きくて重いのは秀頼)
原作の明智秀頼は、タケルに面倒なコンプレックスを抱えています。
また、タケルも秀頼のことを1番の親友を自称するし、1番の親友であり続けました。
理沙ルートなどの自分の手で秀頼を殺害するルートにおいても、タケルは秀頼の親友をやめません。
秀頼が世界から居なくなった悲しみの穴は、ヒロインや自分の子供、家族ができても決して埋まることはありませんでした……。
お互いに親友と認めていて、仲も良いのに、絶対に和解しないまま秀頼は『悲しみの連鎖を断ち切り』の原作で必ず死亡します。
もし、タケルに『アンチギフト』さえ宿っていなければこんなに拗れることはありませんでした。
しかし、タケルに『アンチギフト』が宿っていなければ、秀頼は彼に興味すら沸きませんので、親友にはなれませんでした。
ある意味、出会いからバッドエンドが決まっているカップリング。
Q:なんでタケルはそんなに秀頼が好きなの?
A:タケルの一目惚れです。タケルの理想とする男性像がまんま秀頼の顔でした。
アウトローな目付きなどがタケルにドンピシャです。
クズゲス本編などでも、タケルが秀頼にあまり強く出れないのは惚れた弱みから。
原作・クズゲスどっちにもこの設定はあります。
Q:『悲しみの連鎖を断ち切り』のユーザーからなんでそんなに秀頼は嫌われているの?ダークヒーロー的な人気はありましたか?
A:ダークヒーロー的な人気は皆無です。
嫌われている理由は、ほとんど秀頼に対する心理描写がないため。
つまり、秀頼の内面がユーザーに語られないために、
普段はクズゲスなことをしているクセに、調子の良い時だけ主人公の親友を名乗っているからむかつくからという理由。
Q:「お前の彼女寝取るぞ」は原作秀頼の口癖ですか?
A:口癖です。
この書き下ろしの番外編で突然沸いた言葉ですが、原作秀頼のイメージピッタリで驚きました。
こんなパワーワードをサラッと言えるのはこいつくらいです。
本当にやる辺りがやべー奴。
『悲しみの連鎖を断ち切り』ユーザーの秀頼に対するイメージは寝取りの竿役ですから。
ギフト『命令支配』も寝取り役に相応しいものを準備しました。
Q:原作の秀頼とタケルに救いはありませんか?
A:ありません。
強いていうならタケルの手により、秀頼が殺害されることが1番の救いです(ルートによってはタケルが介入しないまま秀頼は殺害されることもあるため)。
たくさん反応をいただきありがとうございます!
感謝を込めて書いたオリジナルシナリオです。
たまにこういった番外編などを書いていく予定です。
質問や、やって欲しいことなどがあればリクエストをくださると応えていきますね。
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・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
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10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
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ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
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エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
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主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
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乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
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