ギャルゲーのヘイトを溜めるクズでゲスな親友役として転生してしまいました。そして主人公が無能すぎて役にたたない……。

桜祭

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第5章 鳥籠の少女

38、宮村永遠は自惚れる

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それからは、真面目な勉強会が始まった。
咲夜がわからない問題が多くて、よく質問をしていた。

「こっちの文章題ってどの公式使えば良いんだっけ?」
「これ、この一文が引っ掛けなんですよ」

絵美も苦手なところの質問を頻度は少ないながらも何回かしてくる。
どうやって説明しようかと頭を働かせる。

「canとはなんだ?車か?」
「急に『can』とかいう単語が出て驚いたわ」
「じゃあ円も英語苦手なんだね」
「そうね、英語は私も苦手ね。おそらくcanとは産まれたばかりの犬の赤ちゃんの鳴き声なんじゃないかしら?『キャンキャン』って鳴くし」
「なるほど、確かに動物の赤ちゃんが産まれる映像ってcan動キャンどうするよな」
「は?」

咲夜と津軽さんの会話が1から10まで全く理解できなくて苦笑する。
突っ込みどころ満載なやり取りがツボに入りそうだった。

「あの2人は気にしないでください」
「はい……」

そういう話に混ざってみたかった下心も少しある。
たまに変なトークも混ざるも、淡々と勉強をしていく。
集中して鉛筆を動かせたので、すぐに宿題も終わった。
そのまま予習へと移行しようとすると、玄関から扉の開く音がする。
お父さんの帰宅するものだとわかる。

そのままお父さんが、私たちが勉強している部屋へきた。

「こんにちは、お邪魔してます。永遠ちゃんとクラスメートの佐々木と言います」
「……どうも、永遠の父です」

父はやや不機嫌だった。
私に友達は不要と考える人なので、仲が良い人とかが出来ると露骨に態度が悪くなる。
咲夜と津軽さんはそれを察してちょっと居心地が悪そうだ。
しかし、怯まないのが隣の少女だった。

「お父様はとても真面目そうな人で、永遠ちゃんに受け継がれているのがわかりますね」
「……はい」
「永遠ちゃんとは勉強面やプライベート含めて切磋琢磨し合えるライバルで友達なんですよ」
「ほう」

お父さんが絵美の話に食い付いている。
普段、私の友達に興味を示さないお父さんの反応にしてはちょっと変だ。
それから、絵美ももっと楽しそうに会話をする。
だんだんと父と絵美の会話が弾んでくる。

「コミュ力凄い……」
「絵美が眩しい……」

2人もそのトーク力に魅入っていた。
あの厳格な父と会話のキャッチボールを3回、4回と繰り返しているのが凄い。

「これからも永遠ちゃんと仲良くさせていただきます!」
「うむ、融通の効かない子だがよろしく頼むよ。ぜひ、色々な経験を積ませてあげて欲しい。よろしくね、佐々木さん」
「はい!今度プールとか一緒に彼女ら全員で行こうと思ってます!」
「ははは、それは楽しそうだね。ぜひ、今後とも長いお付き合いをお願いするよ」

ご機嫌なままお父さんは部屋から去っていく。
常にぶすっとして不機嫌なことが多い人なので、こんなに穏やかな表情は娘の私でも珍しい。
絵美に小声で話しかける。

「な、何今の……?」
「わたしと秀頼君の作戦成功です」

絵美が笑顔でピースサインを私に見せてくる。
どの辺が作戦だったのかを絵美に聞いてみる。

「わたしは家に女子だけで押し掛けて説得する作戦案を秀頼君に投げかけました。そして秀頼君からは『なるほど。しかしただ説得するだけでは人は動かない。絵美には女という武器を使ってもらおう』という最低な一言もあり、『媚びを売って明るく振る舞えば男は誰でも機嫌良くなる』というのを実践しました」
「ドンピシャじゃん……」
「ウチの秀頼は凄い」
「いや、秀頼さんを褒めるべきなの……?」

絵美の説明に、津軽さんが驚愕し、咲夜が感心して、私は突っ込むという流れになる。
私だけだったらプールなんて禁止と言われていた未来が想像に難しくない。

しかし、秀頼さんの知恵と絵美の行動でまさか納得させる方向まで持っていくとは……。

「永遠、また何かあったらわたし達に頼ってね」
「ありがとう、絵美」

私は、この友達を大事にしよう。
心の底から私は彼女らを一生の友人になりたいと願った。

「ウチに頼ってもなにも変わらんけど、頼れよ」
「私に頼ってもなにも変わらないけど頼ってね」
「あぁ、うん…………、この2人必要でした?」
「わたしが会話の主導権を握るための空気を作る必要があったので必要でした」
「ウチらただの人数合わせ!?勉強させられただけじゃん」
「でも宿題終わってラッキーっしょ」

津軽さんが呟きながらそそくさと片付けの準備に取り掛かっていた。
オンオフの切り替えが早すぎるのに驚く。
ただ、津軽さんと咲夜とも少しは仲良くなれたかなと、最後にちょっとだけ自惚れた。
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